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アルホートの兄は不機嫌そうに、口を開いた。
「随分と仲が良くなったんだな?」
「夫婦ですからね、毎晩、楽しんでますよ?」
え?デュークさん、そんな嫌味を言える人だったの?
てか、さ、兄さん、変だよね?
そんなに、デュークさんを睨まないでも、いいでしょ?
その時だ。
いきなり、この兄がグラスを落とした。
ガシャーン!
欠片が飛び、シャンパンが飛ぶ。
慌てて私の腰から、デュークさんの手が離れ、侍従が慌しく動く。
デュークさんは遠くにいる別の侍従に合図を送るために、違う方向を見た。
その瞬間だ。
「来い!」
私は腕を引っ張られ、抱きかかえられて、会場から連れ出されていた。
まったく身動きが取れない。
犯人は…、この兄の配下だ。
なんだ???どうなるんだ?
警備の人間を振り払い、ズンズン進んで行く、けど、…。
「何するの!」
思わず、声を出す。
その声は隣にいた兄に届く。
この兄は走りながら、私に話しかける。
器用だな…。
「いつから、あんなに仲が良くなったんだ?!」
「お、お兄様!」
おい!
思いっきり、睨んだつもり。
だが、きいていない。
当然だ、こっちを見る余裕はないんだ。
「俺の目の前で…!」
「降ろして!!」
「黙れ、大人しくしろ」
こいつらはスイスイと城の中を進んでいく。
けどさ、住んでる人間よりも詳しいって、おまえ達、なんなんだ?
住んではいるが、この宮殿は複雑で分かりにくい。
そうだよ、私は、引きこもってるんだよ。
この城の見取り図なんて、頭の中にはない。
しかし、こいつら、馬鹿だな。
このルミナスの城の中でこんなことしたら、この国にいられなくなるぞ?
こんな跡継ぎで、大丈夫なのか?アルホート?
私も心配になるよ、まぁ、関係ないけど。
降ろせよ!ともがいてみたけど、無駄だった。
結局、攫われたままだ。
「ここだ」
ある部屋に入れられた。
こいつの泊まっている部屋なのか?
ドアが閉まった。
この兄と2人きりになる。
私を連れ出した男は前で見張っている。
奥の部屋に連れ込まれてる。
ベット?
おいおい!
「世話を焼かせるな…」
これから、何が展開されるのか??
いったいどうしたら、リリさんとして、正解なんだ?
頭、パニックです。
そんな私の心の中の葛藤なんて、どうでもいいように、ネチッこい目の男が、上から順番に見る。
「慣れたのか?」
「え?」
「デュークにだよ。あんなに嫌がっていただろ?」
まぁ、これは想定内の言葉か。
リリさん、あんたはデュークさんが嫌いだったの?
じゃ、なんで嫁に来たんだ?
「まぁ、あんな人でも可愛いところはあるのよ?」
「可愛いところか…。リーらしいな」
リー?コイツ、妹のことをリーって呼んだんだ。
「満足してないんだろ?」
え?
意味不明じゃん?
「あいつじゃ満足出来ないんだろ?俺が一番、おまえの体を知ってる」
「はぁ…?」
ヤバ!間抜けた顔になってる?
「うん?どうした?」
「なんでもないの、相変わらず自信家だと思っただけ」
けだるそうに言うんだ、それしかない。
「懐かしいわ…」
「リー?」
なんですか、心臓バクバクですよ!
「あいつに惚れたのか?この俺という恋人がいながら、惚れたのか?」
いやー、この展開、マジで近親相姦?????
はっきり言われても、困ります!
「側にいた人間に頼ってしまうのは、悪いこと?」
「この俺が許すと思うのか?」
「けれども、法律上はデュークの妻よ?」
お兄様はいきなり、私を抱きしめた。
く、苦しいぞ。
キモイんだよ?離せよ!
「あんな男になんか、渡すものか。俺がアルホートの王になったら兄弟間での婚姻を認める法律を作って、お前を奪いに行く。そう約束したよな?」
兄弟間の婚姻、それは、犯罪です。うん、たぶん、犯罪。
「私が、待てなかったら?」
「リー、俺を裏切るのか?お前が愛した男は俺だけだと、誓ったではないか?」
えーと。どうやったら、逃げられるの?
犯罪、反対。
ってか、デュークさんは、何してるの?
助けに来てよ!
「いつだってそうだ、俺達は愛し合っているのに。父上が急に縁談を纏めてお前を遠くにやってしまった」
だろうな。私が親でもそうするよ。
「けど、父上ももう長くない。俺が即位したら、ルミナスを征伐して、お前を奪う」
エジプトじゃないんだから、不毛な戦争は止めよう。
ってか、離れてくれ。離せ!
「だが、今はお前が…、リー、時間がない。俺を愛してくれ」
く、唇が…、いきなりの、キスですか?
思わず、拒む。
いや、体って正直。
「止めて!!!」
怪訝そうな顔した。
拙い、違うとばれるぞ…。
我慢した方がいいのか?けど、我慢すると、えっと…。
「リー?」
「急だもの。準備が…」
怒った。兄が怒ったんだ。
「ふざけるな!」
唇が重なった。
いやだ、気持ち悪い!
この兄は私に口づけをすると、胸を弄る…。
やだ、さわるな!
嫌だ。はっきりと自覚した。
嫌だよ、こんな変態に抱かれたくない。
「やだ!離せ!私に触らないで!」
そんな言葉に驚いた隙に思いっきり離れた。
「リー、どうした?」
どうもしないよ、嫌なんだよ。
「お前らしくない。俺達は、ずっと求め合ってきたじゃないか?あの俺の部屋で、何度も俺を愛してくれただろう?誰も見つからないように、隠れてではあったけど、お前は俺を愛してると言った」
そんな環境、しりませんから。
「父上の正妻には子がなかった。俺達は違う側室に生まれた同士だ。俺達がアルホートを支えるのは必然だ。お前もそう言っではないか?」
うわぁ、きつい生い立ち。
でも、今の私に関係ないし…。
てっか、デュークさん!早く助けて!間に合ってよ!
リリさんの危機なんだぞ!
「俺を受け入れろ、リー」
離れた筈なのに、いつの間にか腕を掴まれている。
もう一つの手が服に掛かる。
服を破るのは止めて下さい。
切れますよ?
だから、破くなって!
「離してって、言ってるでしょ!!」
「リー、何故拒む?お前はリーじゃないのか?そうなのか?」
「やだ!変態!触らないで!」
向こうも焦っている。
私は、ベットに寝かされて、服を破かれた。
胸が、見るな!
「離せよ!」
なんとか、すり抜けて、この兄から離れる。
そして、指が動く。
私は、思わず、やってしまった。
サンダーが、雷が、指から発射されて。
的確に、アルホートの皇太子に向かった。
うわぁ、落とした。
ドーーーーン!
凄い音がした。
あれ?あいつ、気失ってる…。




