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式典、それなんですか?
パーティー?逃げていいですか?
何?この人の数??
ここへ来てから初めて見たよ。こんなに沢山な人を。
どこに隠れていたんだ?
あ、地下か…。
立ち止まってしまう。
昔から、人混みは苦手だ。
「どうした?」
「人が多いから…動けない…」
「リリが大好きな場所だ。嬉しそうな顔をしろ」
「…わかったわ」
デュークさん、お願いだから、後生だから、離れないで下さい。
なんてしおらしい事、考えてます。
だって、知らない人が次々に話しかけて来るんだもん。
どうするよ?
皆さん、根性入れて着飾っています。
煌びやかで、目の保養です。
「リリフィーヌ様、長い間お姿を拝見できずに、残念でしたわ」
「そうですの、貴女様がいない舞踏会は光を失ったようでしたわ」
「また、お出ましになりますでしょ?」
「そうですわ、ぜひ、私の屋敷での会にもお出ましくださいね?」
やだよ。
思いっきり、気だるく、言った。
「デューク?」
「どうかしたか?」
「この方たちに、申し訳なくて…。デュークから話してくださる?」
何をって顔してる。
だよね、何をだよね。
私も知らないよ、けど、舞踏会なんて、行きたくないんだよ、理由をでっち上げろよ?
いいな?
「リリ…」
さずが、役者だよ。
平然と私の腰に手を回した。
「皆、すまないな。これが、子を欲しがっているんだ。外出は控えさせた」
はぁ?嘘つき…。
「まぁ、陛下!」
「そ、そうですわね?舞踏会よりも世継ぎですわ」
「そうです、私達はご遠慮しないとね?」
「けれども、陛下?本当に仲睦まじいですわ、羨ましい」
満足げなデュークさん。
お疲れ様です。
合格点を差し上げましょう。
おまけだ。
私は伏し目がちに挨拶をして、デュークさんに身を委ねる。
「デューク、疲れたわ」
「リリ、もうしばらく我慢しろ」
私を、弾きやがった。鬼…。
「意地悪…」
しかも、聞こえない振りしたな?
皆さん!こいつ、猫なんですよ!聞いてますか~?
あああ、大声で言ってやりたい!
その時、ざわめきが静まった。
音楽が変わる。
これは、合図の曲だ。
デュークさんと私が踊るための合図の曲が流れる。
会場の真ん中には誰もいなくなる。
デュークさんが私の右手を取った。
優しい顔で笑いかけてくれる。
そんな顔、しちゃ、駄目だよ…。
「いくぞ?」
「はい」
もう、覚悟を決めた。
胸を張れ!堂々としろ!
デュークさんのリードは素晴らしく素敵だった。
いつでも、デュークさんの顔を見て踊れた。
曲に乗って、踊った。
もの凄く、気持ちよかった。
曲が終る。
息が上がっている。
その時、拍手がなった。
人の話し声が聞こえた。
「やはり陛下とリリフィーヌ様のダンスは素晴らしいですな?」
「見ごたえがありましたわ」
良かった、なんとかバレずに済んだよ!
ありがとう!ありがとう!
頑張ったんだよ?本当に、頑張ったんだ!
あ、会場に隅にヨッシー先生を発見!
頑張ったよ!
先生、泣いてる?
デュークさんが耳元で呟いた。
「頑張ったな、良かったぞ」
「うん!」
嬉しいな。カナコを褒めてくれた。
ちょっと仲直りできた??
なんだか、嬉しいな。
そこへ。
「デューク殿?」
「あ、義兄上。今宵は楽しまれておりますか?」
兄?誰ですか?
あ、リリさんのお兄さんでしたね。
そう言えば、いたんだ。
「いや、妹と全く話せないからな」
「義兄上、申し訳ありません」
「いいのだ、リリフィーヌ?」
そうなのだ、来た。
兄と呼ばれる人が来た。
式典の時は並びに座っていたから、気にもならなかったけど、さ。
やっぱり、どこか、リリさんに似てる。
けど、コイツ、何かがおかしい。
視線が粘っこい。
「リリフィーヌ」と名前を呼びながらネチッこく手を握るのはやめてくれ。
くっ付いてくるのも止めてくれ。
ってか、タイプじゃないんだ。おまえは。
「すまないが、デューク殿。兄弟で話がしたい。いいかな?」
「義兄上、リリは病み上がりで、離れるのが心配です」
いいぞ!デューク、頑張れ!
おまえの大切なリリさんの危機だと思って、乗り切るんだ!
「なに?病み上がり?」
「お兄様、デュークはね、心配性なの。可愛いでしょ?」
「リリ、俺から離れるな?いいな?」
離れませんよ、今日は特に離れません。いいですね?
兄さん、睨むな。
「仲が良いんだな?」
「ええ、リリが良くしてくれるので」
「そ、それは良かった」
おまえ、そう思ってないな?そうに違いない。
「ノドが乾いたな、デューク殿、すまないが、なにか飲み物を」
「それは、すみませんでした。持ってこさせましょう」
「いや、そこは王自ら持ってきていただけると嬉しいぞ、兄として」
「いえ、ルミナスでは王に不自由などさせないのですよ?」
デュークさんが手を上げただけで、侍従が飛んでくる。
「陛下?」
「セルオス殿にシャンパンを」
「は、」
さすがだ、侍従が何かサインのようなものを送っただけで、シャンパンが来る。
早い。
「どうぞ」
「あ、すまない」
私達も一緒にシャンパンを飲む。
美味しいね、とデュークさんを見たら、そうだな、って顔してる。
あれ、私達、テレパシーで通じてるの?
なんか可笑しくって、微笑み合った。
喧嘩してたんじゃなかったか?
まぁ、いいか。
いつの間にかデュークさんの腕が私の腰に回された。
照れる。
お、兄よ、なんだ?その顔は?
睨んでないか?
私の頭の上では、火花が散っているのか???




