25
ダンス教室から、部屋に戻る。
もう、夜だ。
真っ暗だよ、何時まで頑張ったんだ?
切羽詰ると何でも出来るね。
ところで、最近はデュークさんの帰りが遅いんだ。
「ジョゼ、疲れた!」
「わかりました、ジョゼがスッキリサッパリして差し上げます」
「わーい!」
スッキリ、サッパリ!
不思議なんだ、この魔法は、自分でやるよりジョゼにやってもらう方が気持ちがいい。
「ありがとう!」
「どういたしまして」
「今日は早めに寝ていいでしょ?」
「そうですね、今日は陛下の帰りをお待ち下さい」
えーー。
「ヤダ」
「駄目です」
「なんで?」
「仲直りして下さい。明日は大事な日ですよ?」
「そうだけど…」
あのデュークさんの目、怖かった。
赤紅じゃなかった時は苦しそうで辛そうだったけど、朝、赤紅の時は怖かった。
「ねぇ、ジョゼ?」
「なんでしょう?」
「魔量が切れて瞳が濃銀になると、どうなるの?」
「それは人によって違いますが、魔量が大きい人ほど苦しいですね」
「苦しいんだ…」
「ええ、陛下クラスになると、ご自分での制御は難しいかと」
うん?
「それって、人の肌が恋しくなる的なこと?」
「いろんな性質がありますので、一概には言えませんが、陛下の場合はそうなります」
「けど、前の時のデュークさんは違ったよ?」
「前?」
「魔物征伐に4日ほど行ったとき」
「4日?3日では?、いや、あ、あれは…」
なんだ?
「うん?教えて?」
ジョゼが言葉を濁した。
で、諦めたように話してくれた。
「あの時は、まっずぐに城にお戻りにはなりませんでした」
「へ?」
「征伐自体は3日で終わり、次の日は悦楽の館へ」
なんて名前なんだ。
それだけで全てが分かるじゃないか…。
つまり、そう言う店なんだね?
「凄い名前だ…」
「本当ですね。しかし、それでも陛下はお気が静まらずにお疲れのご様子でした」
「ちなみに、悦楽の館では1日中?」
「その様でしたね」
ふーん、だからあの日、酔いつぶれて何もしないで寝たんだ。
紳士というよりも、疲れて出来なかった、ってことかしら?
「しかし、やはり娼館では、なかなか難しいのでしょう」
「どういう意味?」
「そこは、気持ちが通じ合っている女性との方が、回復の度合いが違いますから」
「そ、そうなの…」
なるほど、愛し合ってる人とする方が、一気に魔量が回復するんだ。
だから、リリさんにこだわる訳か。
「じゃ、この間は、直ぐに帰ってきたの?」
「当然でございましょう?カナコ様に強い魔法を掛けてしまって、動揺なさっていたのですよ?」
「え?」
「一時も早く、カナコ様の元に帰りたかったのですよ、陛下は」
何言ってんだ、この人は。
私の元じゃなく、リリさんの体の元にだろう?
間違うなよ、迷惑だ。
って、ジョゼに言っても仕方がない。
けど、惨めにさせるな。
いや、惨めなんかじゃない!断じて違う…。
…、ふん…。
「…、そうなんだ」
「はい」
そう言って、真剣な目で私を見る。
「なので、今晩は陛下をお待ち下さい」
「けどさ、今日は眠いよ。寝てもいいでしょ?明日、顔見て仲直りするから」
「カナコ様?」
「お願い!」
「仕方ありませんね」
「だから、スリープ掛けて?」
「分かりました。では、お休みなさいませ」
「うん」
ジョゼがスリープを掛けてくれた。
これでステップを忘れずにすむ、なんて思った瞬間、眠ってしまった。
「起きろ」
あ、覚えのある声だ。
「あ、デュークさん、お久しぶりです」
「お久しぶりって…」
「え?」
「いや、いい…」
デュークさんは間抜けた顔をしてる。
え、なに?やっぱり、毎晩隣で寝てたの?
気づかなかった。
だって、朝になるといなかったじゃん。
あ、けど、誰かがいた形跡はあったな…。
疲れてて考えることを放棄してたんだよ。
気づかなかくてゴメン。
って、謝ることもないか…。
「あ、今日はリリさんのお兄さんが来る日ですよね?」
「そうだ」
「私、デュークさんとワルツを踊らなくてはいけないって聞きました」
「その通りだ」
「よろしくお願いします」
「踊れるようになったか?」
「ヨッシー先生は大丈夫だと、いってくれました」
「彼が言うなら大丈夫だろう」
と言ったくせに、さ。
マジマジと私を値踏みするような目線は止めて欲しい。
「立て」
「へ?」
「間抜けな顔はやめろ。どれだけ踊れるかみてやる」
「はい、…」
朝から試験かよ…。
「音楽がありませんが?」
「必要ない」
「そうですか…」
差し出された手を掴み、ステップを踏んだ。
?
踊りやすかった。
デュークさんは常に先を読んで私を導いてくれる。
ヨッシー先生よりも、踊りやすかった。
おそらく、曲が終わるくらいの時間だ。
私達は止まった。
息が上がる。
「頑張ったな」
そう言ったデュークさんは頭を撫でてくれた。
そんなこと、してくれるなんて思わなかった。
だから、チョードキドキしてるんだ。
相変わらず、卑怯だ。
惚れるだろ?
辛くさせるなよ…、お願いだから…。
「今日は俺がサラサラにしてやる」
なんだよ、笑顔だなんて、まったくもって、卑怯だ。
けど、デュークさんに魔法を掛けられるの初めて、じゃないな、2度目だ。
サラン!
気持ちいい。え?ジョゼよりも気持ちいい。
なんでだろう?
「カナコ、」
「はい?」
「俺をサラサラにしてくれ」
「いいですよ?」
してくれた御礼だ。
サラーン!どうだ?
「うん。いい気持ちだ」
「良かった」
「来い」
は?
いきなり腕をつかまれて、顎を取られた。
「なに?」
「黙って受け入れろ」
キスされた。
やだ、体が熱くなった。
腰が…、なんだ、熱いよ…。
「今日は俺の妻だ。いいか、忘れるな?」
どうしよう、惚れてまうやろ…。
「堂々としてろ。外見はリリでも中身はカナコだ。それでいい」
「デュークさん、意味わからないよ?」
「分からなくて、いい」
用意された服に着替えた。
何度でも、言います。
こんな、フリフリは、嫌です。




