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朝。


朝ですよ、明るいですよ。





当然、眠れてません。



だって目の前に男性がいるんですよ。

人生で初めての体験ですよ。


ようやく目の焦点が合ってきたので、見つめます。

目の前に寝ている男性は、それはそれは美しく、いつもならば遠くから眺めているだけで満足する鑑賞対象の美形です。

閉じている瞼、長い睫毛。

形の良い鼻、品のある唇。

髪は驚くな、深い緑色。私は初めて見ましたよ。

どうやったらこんなに綺麗に染められるのかお聞きしたいくらい。


気持ちよさそうに寝ているなぁ…。

いいなぁ、眠れてさ。

こっちは全然寝れないっていうのに。


なんたって、裸なんですもの。

布団、って布団か?

まぁいいや、その布団から出ている上半身。

肌は白くしまっていて筋肉質のいい体してます。 

触れたら硬いのかなぁ…。

触ってみたいかも。


って、実況している場合じゃない。 


今日は確か月曜日のはず。そうだ仕事!会社だよ。

いけねえ、会社に遅刻だ!てやんでぃ!

なんて江戸っ子みたいな気持ちにならないとやってられない。 


思わず飛び起きて、この部屋の見渡します。




私の部屋じゃない?

なんて豪華なスィートルーム? 



あ…。

私、ここに来た記憶が、ない。




そう、落ちて…、って、どこから落ちたんだ?




ちょっと待て、落ち着こう。

これは夢だ。

間違いない。だって、ほら鏡に映っているのは…。



天使だよ、天使がいた。


裸の天使だ。

金髪の長い髪をした外人さんだ…。

鏡の向こうに別の国があるのか?

私をジッと見ている。

天使に見つめられるなんていいことあるかな…、なんてね。


思わず手を伸ばして…。




あれ?向こうも伸ばしてきたぞ。





え??????これ、私?





「えええええ!」


大声出してすみません。

けど、出ちゃいました。

出ますよ、そりゃ。


「どうした?!」


隣で気持ちよさそうに寝ていた人が、飛び起きました。

すみませんね。

ほんと、すみません。


「え??ええええ???あなた、だれ?」

「リリ?」

「私、え?ここどこ?ねえ、私、会社に行かないと…」


そうは言ったものの、この状況で会社なんて言葉が現実ぽく感じられない。


「かいしゃ?かいしゃ、ってなんだ?」

「え?」


馬鹿か?


いやいや相手は緑の髪をしてるんだ、私の知らない世界にいる方に違いない。

もう一回落ち着こう。



そうだ、深呼吸だ。



大きく息を吸った。ゆっくり吐く。



これよりは最悪な事は起こらない。

そうだソウに違いない、そういう事にしておこう。

慌てちゃいけない、落ち着こう。


「あの、すみません?」

「リリ?どうしたんだ?変だぞ?」


緑の髪をした人の瞳は深い赤だった。

クリスマスみたいだ、と、こんな時に思ってしまってごめんなさい。


「すみません、私、誰なんでしょうか?」

「?」

「あなたはリリと呼びますが、私の記憶はちょっと違っていて…」

「リリ?」

「ですから、私はリリではなく、」


いきなり、肩を掴まれて揺さぶられた。

首がグルングルンするんだよぉぅおうぉう…。


「しっかりしろ?お前がリリじゃないなんて、そんな冗談は許さないぞ」

「えーと…、許さないとは?」

「リリ?お前の瞳…」

「目ですか?」


思わず鏡を見た。

金髪にシルバーの瞳だって誰だよ?

少なくとも外見は天使だよ。


「まだ、赤紅じゃない…なぜだ?もう魔量は足りているだろう?」

「はぁ、そうみたいですね」

「平気なのか?」

「そう、いわれましても、」


ああ、と言って緑の髪をした人が両手で自分の頭をグシャグシャにしてる。

だろうなぁ。

だって、ね。

夜を共にするってことは、彼にとって大切な女性でしょ?リリって人。

そんな人が訳の分からない事を言ったら混乱するよね。


「ごめんなさい…」


思わず謝っちゃった。


「おまえ、誰だ?」


だよね、そうなるよね?

いやいやいや、あなたこそ、誰?


「あの、その前に聞いてもいいですか?」

「なにを?」

「ここって、どこなんでしょうか?なんで私の髪が金髪で目がシルバーなんですか?」

「おまえこそ、誰なんだ?」

「いったってわからないですよ?私はごくごく平凡な日本国民ですから」

「にほんこくみん?何だ、それ?」

「え?」



まさか、か?




最近ようやく手に入れたスマホで、後輩に教わった小説を読み出して面白いなぁと思ってはいたよ?


しかし、転生?嘘でしょう?

じゃ、なに?私、雷に打たれて死んだの?

え、嫌だ…。



私って死んだの?



「あの、ほんとに、ここはどこなんですか?私は誰なんでしょう?このまま、私、どうしたらいいんでしょう?」


言ってるうちに、ドンドン不安になるよ。


「私、どうやって生きていけばいいんだろう?手に職もないし、愛想もあまり良くなくて、人に好かれるタイプでもないし。こんな、知らない世界に来ちゃって、どうするんだろう?あ、私、事務なら少し出来るんですが、どこかに仕事ありませんかね?」


目の前の緑の人は、呆れた顔つきになった。


「おまえ…、リリじゃないな?」


ようやくご理解頂けたようで。


「そこは、すみません。でも私も望んでこうなった訳ではないので、かなり戸惑っているのです。そこんとこ、ご理解いただけますか?」


理解できない様子だ。

そうだろうなぁ。


「着替えろ」

「え?着替えると、いわれても…」


お互い裸じゃん。

何がどこにあるんだっての。それにシャワーも浴びたいよ、切実に。

汗やら何やらで、もう…。


「ふん、」


緑の人は指を軽く振った。

え?まさか、魔法??

ちょっと!汗臭かった髪や体が洗い立てサラサラ状態に…。

イッツ、ミラクル!

アメイジング!


「掛かったみたいだな?おまえは拒まないんだな?」

「え?、あ、これって魔法なんですか…」

「こんなことも知らないのか?」

「だって、魔法ですよ?RPGじゃあるまいし。まさか、魔法だなんて…」

「ふん…」


不愛想な緑の人は次に指を振った。

なんだ?


ヒョン!と何かが飛んできた。


気づけば、目の前に下着から洋服、靴に色々。

これを着れば大丈夫ってことだな。


「すみません…、それでは…」


思わず、それらを持って見えないところへ移動しようとした。

だって知らない男の人が見てるんだもん。

とたんに緑の人が怒った。


「ここで、着ろ!」

「え?」

「いいから、ここで着るんだ!」


怒らなくてもいいじゃん…。


「でも、…」

「なんだ?」

「あなた、見てるし…」

「おまえの体は散々見てきた。恥ずかしいことはない」


あんまりです、私が恥ずかしいんですよ。

私はそんなに慣れてないんです。

しがない事務員で、器量も良くないし。後輩が恋人とデートなんて浮かれてても、自分には何にもありませんでしたよ。

男の人の前で着替えるなど、初めての体験ですから!


「早くしろ!」

「は、はい…」


モゾモゾと服を着た。


なんか魔女っ子みたいだ。

もしかして、私も魔法使えたのかしら?

なんて少し前向きな私、頑張れ!





けど、ここって、どこ?





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