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朝だ。
夕べは、なんか、面白い夜だった。
不思議な時間だった。
隣から声がした。
「起きろ?」
あれ?トーンが柔らかいぞ?
「おはようごさいます」
「うん…」
「夕べのこと、覚えてます?」
「あ、まぁ」
照れやがって、仕方ないなぁ。
「忘れましょう。酒の席のことは忘れるのが日本のルールです」
「ニホンではそうなのか?」
「はい、憂さを晴らして元気に仕事。勤勉な民族なんですよ?」
「そうか…」
オマケだ、サラサッラにしてやろう。
「じゃ、大サービスです。私がデュークさんをサラサラにしましょう」
ヒョイ!
「あ…」
なんだ、その驚いた顔?
どうした?
「あれ?失敗しました?」
「いや、スッキリした…」
「良かったです」
良い事したら気分がいいなぁ。
私もサラサラになれ、っと。
「さぁ、お互い、頑張りましょう!」
「そ、そうだな」
そうそう、美味しい朝食からですよ?
早く連絡して下さい???
「カナコ?」
「なんでしょう?」
「外に出たくないか?」
「出たいですよ?」
「出るか?」
え???
「いいんですか?」
「ああ、今日は報告を聞いたら暇になる。外で昼を食べよう」
「やったぁ!どこですか?どこに連れって行ってくれます?」
デュークさん、ねねね!
どこへですか?
私は、ルミナスの観光地は知らないんですよ、だから、素敵な所へ連れてって!
「いや、なんだ…」
「え?」
「カナコ、お前、犬だな?」
「はい?」
「今、尻尾が見えた気がした」
失礼な奴だ。
犬だと?
「猫にいわれたくないですね!」
「お前、夕べのことは忘れると、言っただろう?!」
「え?そんなこといいましたか?」
シラ、切ります。
「おまえなぁ!」
「猫、猫、猫!」
「いい大人が、猫猫いうな!」
「じゃ、犬って、いわないで下さい」
「…、わかった」
けど、デュークさん、怒ってない。
そんでもって、なんだか、…。
「バカバカしいな?」
「そうですよね?」
「おまえといると飽きないな?」
「まぁ、褒め言葉と、受け取っておきましょう」
「そうしろ」
笑ってる、私達。
楽しい?
うん、楽しいな。
ジョゼが来た。
毎度のこと、手際がいい。
トマト、目玉焼きの黄身を割って小さく切ったパンにつけて、ソーセージ、ビーンズ、ベーコン、マシュルーム。
今日はデュークさんが一緒だ。
やっぱり、誰かと一緒に食べる食事は美味しい。
「美味しかったわ、下げてくださる?」
「畏まりました」
「あ、いい。食べろ」
「いいの?」
「ああ、いい」
やったね!
美味いぜ!
「おまえ、太ったか?」
「気のせいよ?」
「いや、太った」
「猫のくせに…」
ジョゼがキョトンとした。
「猫…ですか?」
「なんでもない、気にするな!」
おっと。怒らせちまった。
リリさんモードを強化しよっと。
「ジョゼ、気にしないで?」
「はい」
「デューク、気遣ってくれてありがとう。でも、美味しいからいただくわ」
「…、ああ」
ゲンキンな奴だ。
赤いぞ、顔が。
「あ、ジョゼ」
「なんでしょうか、陛下?」
「今日はこいつと出かける」
「カナコ様と?」
「ああ、昼を外で取るから用意してくれ」
驚くでしょ?ね、ジョゼ?
私もビックリだよ。
「畏まりました。ではカナコ様をどちらまでお連れすれば宜しいでしょうか?」
「ここでいい」
「はい」
待ってろってことだな?いいぞ、待つぞ。
外か、楽しみだな。
どんな景色なんだろうなぁ。
食事が終った。
「じゃ、後で迎えに来る」
「はい、行ってらっしゃいませ」
デュークさんが行ってしまった。
ジョゼが、戻ってきた。
なんか慌ててる。
「本日は予定を全てキャンセルして参りました」
「え?いいの?」
「はい、陛下とお出かけするのですから」
「そうなんだ?けど、ただの散歩だよ?」
ジョゼ、あいつ、猫なんですよ?
猫連れての散歩ですよ?
「カナコ様、陛下との外出です。それ相応のご準備を」
「え?」
「お着替え下さい」
「何に?」
けど、けど、でもさ。
この服も、かなり上等な服ですよ?シルク100%でしょ?
「こちらに」
「へ?」
「どうぞ、あちらで」
無理やりに連れてかれて、着替えさせられた。
なんだ、このフリフリのフリルのピンクのキラキラは?
恥ずかしいぞ、恥ずかしい!
「ジョゼ、勘弁してくださいよぉ…」
「お似合いです」
「そりゃリリさんなら似合うでしょうが、私はこんな派手なのは、嫌だぁ…」
「諦めて下さい、リリフィーヌ様が好まれた服です」
ふぅーーーー。
いやだ。
しかし、着せられました。
なんだよ、この着られた感。
なんだかな、です。
それでもピクニックみたいにお弁当とワインが来たので、ニコニコになってますよ。
外で食べるご飯は美味しいものね。
「待たせた」
と、デュークさんはピンクな私を見つめて、顔を赤らめた。
これって、お前の趣味か?そうなのか?
お前、メス猫なのか?
「似合ってる」
「そうですか…」
テンション下がる。
「どうした?」
「いや、こんなピンクなんで子供の頃以来ですよ」
「気にするな、どうせお前は何を着てもカナコだ」
は?意味わかりません。
どうせ、リリさんじゃないですから。
「そうですか…」
「カナコ様?」
あ、そうでした。
「デューク、褒めてくれて嬉しいわ」
「うん、似合う」
「…」
「行くぞ?」
「はい!」
そりゃ、外は楽しみさ。
行った事なんだよ?
ルミナスの景色、楽しみです。




