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数日後だ。

ウトウトしていた。


「お母様?」


アリスがそっと私の手を握った。


「なあに?」

「今日はご加減はいい?」


痛みは徐々に強くなっているんだよ。

けどね、大丈夫。


「ええ、アリスが側にいてくれるもの、凄く良いわ」


私はベットを椅子みたいに動かした。

こうすれば、子供達と目線が合うから。


「さぁ、アリス、おいで」

「うん!」


13歳になったって言ったって、まだ子供なんだ。

思いっきり抱いてあげたい。


「お母様、暖かい」

「アリスもよ」


いきなりセーラの縁談が決まって、毎日の主役の座がセーラに移ってしまった。

アリスは寂しいんだろう。

だから、時々、セーラに可愛い意地悪をする。


「お母様、私にはマリウスさんみたいな人はいないの?」

「いるわよ。必ず現れるわ」

「けど、見当たらないもの」

「アリス?」


私のベットの上に座っているアリスの頬を撫でた。


「アリスは生まれた時から可愛かったわ。覚えてるかしら、お父様が机を買ってくださった時の事?」

「うん、覚えてる。凄く嬉しかったのよ。絵を沢山描けばいいって仰ってくれたから!」

「そうね、アリスは絵が上手だものね」


学院では珍しく、アリスは芸術のコースへ進んでいる。

だから、製図用の机を思い出して、それをボッシュの職人に作ってもらったんだ。


「お母様が考えて下さったんだものね?」

「そうよ、アリスのために考えたのよ?」

「大切に使ってるの」

「良かったわ」

「ねぇ、お母様?」

「なあに?」


アリスの髪も大分伸びた。

今日はツインテールにしてる。

似合ってるな。


「お父様と結婚して、良かった?」

「もちろん、よ」

「お父様がルミナスの王だから結婚したの?」

「違うわ。お父様がお父様だから結婚したの。わかるかしら?」

「うーん、たぶん…」


私はアリスの手を握る。


「アリス。お母様ね、アリスに約束して欲しい事があるの?」

「なあに?」

「アリスは美しい生き方をしてね?分かるかしら?」

「うーん、難しいわ」

「そうね、難しいわよね。じゃ、自分より絵の上手な子がいたとしましょう。アリスはどう思う?」

「えーと、悔しいって思う」

「悔しいって思ったら、アリスはどうする?」

「頑張って一杯絵を描くわ。だって、きっとその子も、たくさん絵を描いたから上手だもの」

「アリス、それは美しい生き方よ。そう思わない?」

「うん!」


嬉しそうに微笑むアリスは可愛い。

本当はアリスの方がモテ度は大きいんだよ。

いろんな話が持ち込まれている。


けど、だ。


アリスに関してはデュークさんが頑なに拒否する。

セーラが決まったばかりで、これ以上は耐えられないんだろうな。


私の事もあるしね。


だからこそ、アリスには恋をして愛を知って欲しいと願う。

大丈夫、私の娘だ。

親よりもラブラブで惚気まくりの馬鹿ップルになること、間違いないもの。


「お母様?」

「なあに?」

「私のお願いも聞いて?」

「なにかしら?」

「これから毎朝、私の髪のリボンを結んで下さらない?」

「リボン?」

「そう、そしたら、その時はお母様を独り占めできるもの」

「まぁ、アリスは可愛いこと言うのね?」

「いいでしょ?」

「いいわよ。アリスだけに結んであげる」

「ホント?」

「約束よ」


ちょっと照れた顔になって、次に嬉しさを爆発させた顔をする。


「うん!」


思わず抱きしめた。

そして思わず言ってしまう。


「アリスは幸せになるわ。お母様は何処にいても祈っているからね」

「お母様?」

「アリス、リボンを結び直しましょうか?」

「うん、結んで!」







そう約束してから2週間後。







アリスは私にこう言った。


「お母様、やっぱり、お姉様のリボンも結んであげて?」

「どうして?」

「お姉様、寂しそうで、可哀想だから…」


なんて良い子なんだ。


「アリス、良く気づいたわね?アリスはお母様の自慢の娘よ?」

「うん!」


それから、毎朝、2人は並んで私がリボンを結ぶのを待っている。

仲良く、お喋りをして。

時々はルイも現れる。

もちろん、デュークさんも。


だから、私のベットは居間に移された。

居間ならば、子供達が帰って来ても寂しくない。

いつでも、声が聞こえる。


少し賑やかな方が、私の体調はいいんだ。


けど、自分で分かる。

もう時間は少ない。




そんなある日のことだ。


私しかいない居間に子供達の声が戻ってくる。


「ははうえ!」


ルイは真っ先に飛び込んでくる。

いつも日の匂いと汗と、時には土の匂いまで運んでくれる。


「おれをサラサラにして!」

「いいわよ」


あんまり魔法は使っちゃ駄目って言われてるけど、デュークさんや子供達のために使う生活魔法は許してもらってる。

そんな事ぐらいしか、してあげられないもの。


「わぁ!スッキリした!」


うん、私の考えたルイの香り付きだ。

いい香りだよ。


「ははうえ!」


ベットの上に上がって、抱きついてくる。

そんなルイを見つけたアリスが文句を言いながら入ってくるんだ。


「ルイ!お母様はお疲れよ?降りなさい?」


って、ね、アリス。

ルイが上ってるから自分が上れなくて嫌なんでしょ?

もう、可愛いたらありゃしない。


「アリス、アリスもおいで」


そうだよ、このベットは広いんだよ。

2人ぐらい大丈夫さ。


「けど…」

「いいのよ、アリスもサラサラになりたい?」

「うん、サラサラにして?」


そう言って、こっそりベットの上に上る。

サラサラにしてあげると、ニッコリと微笑んだ。


「いい匂いがする」

「お母様が考えたアリスの香りよ。気に入った?」

「ええ!」


そう言って隣のルイを押しに除けるように私に抱きつくんだ。


「アリス姉さま!俺がははうえの側にいたのに!」

「ルイ、少しは私に譲りなさいよ!」

「もう、喧嘩はしないのよ?いい?」

「「はーい」」


そして、今日の出来事を聞いたりしてる。

こんな平凡な日々が、終るんだなぁ。


「ねぇ、お母様?」

「なあに、アリス?」

「私、お母様の絵を描きたいの。いい?」

「いいわよ。けど、お母様は寝てばかりになっちゃうわね?」

「それで、いいもん」

「じゃ、俺もかく!」

「いいわよ」

「じゃ、ルイ。2人でお母様を描きましょう?」

「うん!」


早速にアリスがスケッチブックを取り出して、ルイにも渡す。

2人は真剣に描き出した。


あ、ルイ、それは人間なのか?

きっと、人間なんだ…。





絵の才能はアリスにだけ開花したらしいわ。






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