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事件が終って、数日後の事になる。
子供達がお休みの挨拶に来た。
「お父様、お母様、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「ちちうえ、ははうえ、おやすみなさい」
「おやすみなさい」
「大人しく寝るんだぞ?」
「「「はーい!」」」
可愛いなぁ。
段々手に負えなくなってきてるお姉様達も、ルイも、可愛い。
みんなの頬にキスした。
しばらくして。
デュークさんが遠慮がちに私を呼んだ。
「カナコ?」
「なに?」
「いや…」
あの事件以来、私は拒み続けてる。
いや、その前から、私達は何もしてなかった。
意地悪してるんじゃないんだよ、駄目なんだ。
体が、拒んでしまうんだ。
デュークさんが私に触れそうになると、体が硬くなって、拒んでしまう。
その変化はデュークさんにはわかってしまうみたいだ。
そんな時は、悲しそうに笑って「なんでもない」って言うんだ。
私達、このまま、駄目になってしまうかもしれない。
それも覚悟出来てない。
出来る筈無いもの。
いつまでも一緒って、そう約束したのに…。
「じゃ、お休みなさい」
「ああ」
私が先にベットへ行って、寝付いた頃にデュークさんが隣に来て寝る。
もうずっと続いている。
それが習慣になってしまっていた。
私達はあの事件について語るのを、止めようって互いに決めた。
何を言っても変わらないし、変えられないからだ。
けれども、その事が返って私達の仲をギクシャクさせて行っているみたい。
もうどうしていいのか。
そんな事を考えてしまうんだ。
だから、今日は寝付けなかった。
いや、本当は全然寝れてないんだよ、あれから、毎日。
拙いぞ。
デュークさんが入って来た。
緊張する。
寝てる振りだ…。
私は背を向けて寝ている。
手が髪に触れる。
一瞬、体が強張るんだよ。
デュークさんはベットの上で座ったままみたいだ。
ふーっとため息が聞こえた。
「起きてるんだろう?」
図星だよ。
「カナコ?」
優しい問いかけだ。
「…寝てるもん」
「それを、起きてる、って言うんだ」
「日本じゃ寝てるっていうの」
また、髪に触れた。
今度も、ちょっと引いたんだ。
デュークさんの手が、少し止まってから、離れた。
「じゃ、そのまま寝てろ」
「いやだ」
「いや?」
デュークさんの方を向いた。
「ねぇ、私、意地悪だよね?そうだよね?」
悲しそうだ。
私も泣きたい。
デュークさんは何も言わない。
無言が続く。
どちらからも誘えない。
キスを拒まれた私も、拒絶されるんじゃないかって怖いんだ。
「どうして、私のキスを拒むの?」
「もう拒まない」
「だって、拒んだもの…」
「あの日は、その、あの女が俺にしたから、カナコが触れると汚れが移るって、そう思ったんだよ」
「そんなこと…」
言い訳でしょ、って言葉を飲み込んだ。
だって、デュークさんは言い訳するしかないんだから。
また無言が続いた。
ふっと口から言葉が出てしまった。
「ねえ、今まで寝た女の人の中で、誰が1番良かったの?」
「カナコだ」
「私以外なら?誰?」
「忘れた」
「どうして?」
そっと、デュークさんの指が、私の唇に触れてしまう。
私、拒んでない。
「カナコの全てが俺の体に刻まれているんだぞ?カナコ以外の女では感じないって、俺は言わなかったか?」
その指を掴んだ。
「けど、出来たじゃない?」
「あれは、朝だからだ。気づいたら乗っていた。俺にしてみれば事故なんだよ」
「事故?」
「求めてもいなかったのに、俺の上に居たんだ」
そうだけど、…。
「けど、俺は穢れてしまった。だろ?」
「え?」
「カナコに触れさせてもらえないんだ…、辛いよ」
「デュークさん?」
「俺が触れると、必ず身を引く。そんなにまでも傷つけたんだ。仕方がないって分かっている。けどな、俺はお前には弱いんだ。そうされると、とても辛い。たまらなく寂しい。どうしていいのか、わからないんだよ」
私は起き上がった。
途方にくれている赤紅の瞳がいた。
「なぁ、どうしたら、俺は許されるんだろう?」
膝立ちでデュークさんよりも大きくなった私は、両腕で、デュークさんの頭を抱え込んだ。
私の胸にデュークさんがうずくまる。
「私も、わからないの。どうしていいのか…」
息が胸にかかって、熱い。
何かが溶け出しそうになるよ。
「愛してるの。デュークさんを愛しすぎて、苦しいの」
「なら、このままでいてくれ。カナコの鼓動が聞こえるんだ」
「じゃ、わかる?どれだけ愛してるか、分かってくれる?」
「分かってる、いや、伝わってるよ」
「私にも伝わるよ、デュークさんの熱が…熱いの」
やっぱり、抱き合わないとわからない事が、多すぎる、ね。
私達は馬鹿ップルだから、こんな我慢は似合わない。
そうだよ!もう、こんな事、終らせたいんだよ!
私はデュークさんの顔に両手で触れた。
戸惑っている瞳が私だけを見つめている。
無言だ。
だから、デュークさんの顔を上げさせて、私からキスをした。
最初は軽くゆっくり軽く触れた。
けど、段々に深くなっていく。
何度も何度も、深くゆっくりとキスを交わす。
ふっと私の頬に指が触れる。
唇が離れて、けど、デュークさんの瞳が直ぐ側にある。
「俺を、求めてくれるのか?」
「うん」
赤紅の瞳が潤むんだ。
「求めても、いいのか?」
「いい」
デュークさんの腕が私の腰を抱きしめる。
私達はお互いを感じている。
そして腕が離れると、ゆっくりと、服を脱がされてしまった。
「カナコ、愛してるんだ…」
私の胸がデュークさんの顔の前にあるんだ。
当然のように、舌が触れる。
「あ、…、」
声が出てしまう。
「綺麗だ、俺だけのカナコだ…」
そのまま、肌に舌が触れていく。
デュークさんの熱の中に、放り込まれてしまった。
私はうなされたように、応えてしまうんだよ。
「デューク、さん、あ、」
「声を、俺に、聞かせて、くれないか?」
「あ、あーぁ、…」
私の体を知り尽くしている指が、私を翻弄する。
私を抱き上げると、優しく寝かせた。
「離さないで、っ、」
「離さない…もう二度と離すものか」
そっと私に触れてくれる。
足が開いて、優しいのに刺激的な快感に、私の体が応えてしまう。
「あーーー!」
久し振りの刺激は、素敵過ぎる。
そのまま、デュークさんに身を預けた。
そんな私の腰を持ち上げて、ゆっくりと私の中に入ってくるんだ。
「あ、ああ、カナコ…」
「うん、いい?」
「ああ、もちろん、だ、、あっ、」
息が上がるんだ。
感じない筈がない。
お互いに繋がり合わないと、感じない。
私達でなければ、駄目なんだ。
「カナコ!」
デュークさんが、落ちてくる。
愛おしいよ、とっても…。
「ごめん、愛してる」
「愛してるのに、謝るのか?」
「だって、嫌いになれないんだもの」
「俺もだ」
指が、頬を撫でる。
「綺麗だな、俺のカナコは世界で一番綺麗だ」
「私のデュークさんは、世界で一番素敵だよ?」
「そうか?」
「うん」
キスしてやった。
「このままで、いたい」
「いいよ」
「デュークさんがいれば、それで、いい」
「ああ、眠いのか?」
ずっと眠れてないんだもの。
「うん…」
「俺もだ、お休み」
「…、うん、」
今夜は、お互いにスリープなんて要らない夜だ。
抱き合ったままで、眠ってしまった。
やっぱり、デュークさんがいい。




