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その数日後。

ルミナスの王宮で、2ヶ月に一度開かれている舞踏会の夜。







これは、華やかな事が大好きな招かれる人達が、喜ぶから開催してる。

もちろん、デュークさんと私も正装して出席する。


いろんな人達と話す。

豆腐の話や、味噌の話。

あ、食べ物以外の話もする。


最近では、殆ど宮殿に戻らないデュークさん。

今日の支度だって城でしたみたいだ。

正装になったデュークさんとは、この会場の控え室であったんだもの。


「行こう」


それだけだ。

会話はそれだけになった。


けれども人前では、頑張った。 


私はデュークさんは一緒に、訪れた人々と談笑していた。

だって、これは、お仕事なんだ。

だから一緒にいて、喧嘩してない振りをしてる。

デュークさんの手は私の腰を抱いてくれてる。

そうしていると、元に戻ったみたいなのに、違うんだ。


「陛下、こちらでしたか?」


そして、レジーナの父だと名乗った男が私とデュークさんの前に現れた。


男は私をチラリと見ると、なんとも言えない顔で笑うんだ。

体中に毛虫が這うような感触を感じる。


この男は嫌いだ。


「本日は、お招きありがとうございます」

「ゆっくり滞在するが良い」

「はい、娘にも会えるのが待ち通しいですよ」


なんだよ、この強調は…。

けど、動揺を見せたら負けだぞ!


「ところで、陛下」


そう言って、この男は、私の顔を見てから、デュークさんにこう言った。


「いつも同じ菓子ばかりで飽きたと伺いましたが、違う菓子の味は、如何でしたかな?」


その卑猥な物言いに、血の気が引いた。

いろんなことが、飛んで行った。


気が付けば、私はその男の頬を張り倒していた。

手が痛い。

デュークさんが、私の手首を掴んだ。


けど、私はその手を振り払う。

そして、自分でも信じられないくらいに、低い声が出たんだ。


「気分が悪いの、下がります」

「待て、カナコ」

「離して下さい」

「大丈夫か?」

「失礼します」

「待つんだ!」


私はデュークさんを見ることなく、会場を出て行った。

なんか、ざわめきが起こっていた。

そんなこと、知らない…よ、どうでもいい。



私は部屋に篭城した。

かなりの時間が過ぎた。

どうせ、デュークさんは来ない。


私はエイミィすら近づけないで、ドレスのままで、不貞寝してた。





けど、無駄なんだ。


「いいか、カナコ?」


しばらくして、デュークさんが来た。

来ないと思ってたのに…。

あぁあ、私がどんなに頑丈な幕を張ったって無駄なんだ。

デュークさんだけは、中に入ってこられるんだもの。

ベットで不貞寝してる私の側にまで来るんだもの。


「…」

「大丈夫か?」

「…」

「カナコ?」


デュークさんは手を伸ばして私の頬に触れようとしたのに、私は払いのけてしまった。


「触らないで!」

「もう、終ったんだ」

「終った?何が終ったの!」


睨みつける私の側に腰掛けるデュークさん。


「何が、か…」


そのまま、黙り込むんだ。


「言えないのね?」

「いや、どう言ったらいいのか、言葉を探してるんだ」

「そんな着飾った言葉でしか言えないんなら、言わないで」

「カナコ、嫌わないでくれ」

「嫌う?」

「俺は嫌われるようなことをしてしまったんだ」


私はそこから先を聞きたくなかった。

涙が零れる。


「言わなくていい。聞きたくない。もう、宮殿に集まる人達は、みんな意地悪だわ。みんな、私が嫌いなのよ。私なんかいなくなればいいって、思ってるんだから!」

「違う、違うんだ」

「独りにさせてよ!お願いだから、出て行って!」

「嫌だ」

「デュークさんといると、何を言うか分からないの。だから、嫌なの!」

「駄目だ!」


急に起こされると、抱きしめられてしまう。


「離してよ!なによ!ずっと放っておいたくせに!私の髪にすら触れなかったくせに!私、怖くて、何も聞けなかったんだから…。けど、信じようって、そう思ったから、我慢してたのよ?それが!」

「頼む、落ち着いてくれ」


少し力が緩んだ。


「落ち着く?馬鹿にしないでよ!もう、やだ!」


だから、私はデュークさんの胸を叩く。

私の力なんて、たかが知れてるけど、叩き続けた。


「なんで、あんな男に、言われなきゃいけないの?お菓子?新しいお菓子のお味は、どうだった?私より美味しかったんでしょ?きっとそうよね。私の侍女につけるくらいだもの。美味しいから、もっと食べたいから、側に置いたんじゃないの!」

「…そうじゃないんだ」

「知ってるわよ!なんで、私の侍女につけたのよ?!毎日顔合わせるのよ?どんな気持ちだったか、わかる?」

「カナコ、」


デュークさんは、もう一度、私を抱きしめた。


「全部、嘘なんだ。俺を信じてくれ」


信じる?

意味が分からない。


「もう、嫌だ」


人前であんな風に侮辱されたことが、私をおかしくさせている。

それはデュークさんに抱きしめられていても、納まらない。


「出てって!出て行って!」

「嫌だ。俺がカナコから離れるときは、死ぬときだけだ。そうだろう?」

「今日まで見向きもしないで、あの女の所にいってたんでしょ?急に、来ないで!」


苦しいくらいに、強く抱きしめられている。


「おかしくなりそうなのよ。デュークさんがあの女と寝たなんて、それだけで、おかしくなるの!」

「カナコ、俺といるのが嫌なのか?それほどまでに、俺が嫌いか?」

「嫌よ!私に、触れないで!私、言ったよね?側にいて欲しいって、言ったよね?なのに出て行ったじゃない!それだけじゃないわ。私のキスも拒んだじゃない。よっぽど、あの女のキスの方が良かったのね?上手なんでしょ?デュークさんは王だもの。私なんかよりキスの上手な女を望めばいいわ!デュークさんが女を望むなら、私は家族を連れて出て行くから!」

「やめてくれ!お願いだから、やめて、くれないか…」


デュークさんの言葉が止まった。

急に体が離れた。


けど、私の腕を掴むデュークさんの腕が、震えていた。

恐る恐る、デュークさんを見上げた。


あ、れ…?涙?








そうなんだ、デュークさんが泣いていた。









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