168 あなざーさいど31-2
トリミダでは、初日は何事もなく進んだのです。
しかしながら翌朝のことです。
「ポポロ、」
「なんでしょうか?」
陛下の部屋に呼ばれた私は、陛下の側に参りました。
「ここの奴等、俺を罠に嵌める気かもしれん」
「罠?」
まさか?
以前にもありました、あれですか?
「女ですか?」
「ああ、嫌な予感がする」
「何かありましたか?」
「夕べ、女が俺の部屋に入ろうとした」
なんと…。
「まぁ、幕があるから入ることなど出来なかったがな…」
「陛下が起きている内でようございました。眠っていらっしゃる時ならば…」
「そうなんだ。ここ最近は、そんなことを考える愚かな部族はいなかったんだが…。甘かったな。とにかく誰かに幕を張らせるにしても、専任のものを同行しなかった」
「拙いですね?」
「この時期に俺を嵌めるとしたら?」
「ここの長ですね。免税どころか補助金まで分捕る気でしょう」
「馬鹿な奴等だ。側室など持つつもりなどないのに」
「しかし、側室が唆すのが1番だと信じて疑わない奴等は多いですから」
陛下がため息をつかれます。
「いっその事、今から帰るか?」
「しかし、確かな証拠は?」
「ないな」
「ならば、一応は交渉を続けないとなりません」
「不誠実な態度は拙いか?」
「ええ、地下出身の者達は口が過ぎる傾向にありますから」
「そうだな」
本当ならば後2泊はする予定でした。
それを変えるしかありません。
「本日中に取り纏めて、明日早くに出立しましょう」
「それしかない、か」
「はい」
しかし、です。
その判断が間違いでした。
特に、帰宮を1日早めるとトリミダの者に告げたのが良くありませんでした。
夕食の際に、眠り薬を盛られてしまったのですから…。
「ああああ!」
気づいたのは夜中、いや、明け方近くでした。
私は真っ裸にされて、眼鏡も外されて、見ず知らずの女性と、あの、その、致しておりました。
男なんて悲しいものです。
途中で止めるなんて事が、難しいのですよ。
性です。
また、運の悪いことに、私は奥手で妻以外の女性なんか知りませんでしたから、あ、あんな…、テクニックを持った女性に掛かれば、簡単に、あ、です…。
「左大臣?まだですわ…」
「や、やめて、ください」
「そんな、無粋な…」
私なんて、ヒョロヒョロで眼鏡掛けてる全然冴えてない男です。
妻に告白した時だって、振られるつもりで、告白したほどです。
こんな、プロの女性なんて、慣れてないんですよ…。
結局、抗えずに、何度か致してしまいました。
不覚です。
事が済んで、正気に戻り慌てて魔法で身支度をして、女性を追い返そうとしました。
ところが、です。
「そんな、左大臣の方から、ルミナスの城下街に部屋を借りてくれると、一夜限りにしないからって、仰ったから、だから!この身を預けたのに!酷い!私を弄んだのね?あんまりだわ!」
と泣き叫ぶ女性。
泣きたいのはこっちです。
頭を回します。
「わかった。私は今日帰るが数日の内に連絡する。それで、今日は大人しくしてくれないか?」
女がニヤっと笑った気が、いや、気のせいではないでしょう、笑ったんです。
「畏まりました。けどね、左大臣?」
「なんでしょうか?」
「ちゃんと約束は守って下さいね?私は何時だって奥様のところに行けるんですから」
「わ、分かってるよ」
「よろしくお願い致します」
女が帰った後、力が抜けて床の上で座り込んだんです。
もう、クタクタでした。
しばらくした後、気づいたのです。
もしかして、陛下も?
慌てて、部屋を飛び出して、陛下のお部屋をノックしました。
「陛下?陛下?」
しばらくして、ドアが開きました。
女の手によって…。
「あら、左大臣。ごきげんよう?」
「どなたでしょうか?」
「レジーナ・ヴォバットですわ。お見知りおきを。これからは長い付き合いになるんですもの」
ああああ、やられた。
「では、陛下。また、後日に」
その女は部屋を出て行った。
私は力の抜けた声で、陛下の名を呼んだんだ。
「…、陛下?大丈夫でしょうか?」
陛下はベットの上で、うな垂れておい出た。
「ポポロ、やられた」
「はぁ…」
私の口から出るのは長いため息だけでした。
「陛下、私も、なのです」
「はぁ?!おまえも、なのか?」
「はい、弄ばれました…」
私達は互いを見て、苦笑いをしてしまいました。
不謹慎なのはわかっています。
けど、笑わずにいられなかったのです。
「なんて言われたんだ?」
「なんでも、一夜だけじゃない証拠に、私がルミナスの城下街に部屋を借りるから、と言われたので身を預けたのに、と言われましたよ。妻にも会いに行こうと思えば会いにいけると…」
「酷いな…」
「陛下は?」
「側室になれと夕べ力ずくで、女にされたとな…。あれが初めてな訳がない。悦楽の館並みのテクニックだった」
「それも、酷い…」
「しかもだ、近日中に、あいつはカナコの侍女に上がるらしい」
「わぁ、最悪だ、…、あ、すみません」
「いや、いい。その通りだ。俺はカナコになんて言い訳をしたらいいんだ?思いつかないんだよ、ポポロ…」
「私もです。妻になんと言えば…」
無言でした。
怒りって、後から沸いてくるんですね。
陛下がご自分の魔法で身支度をなさった後、こう仰りました。
「ポポロ、あいつ等の処分には時間を掛けるしかない。一旦城に戻り、じっくり考慮しよう。いいな?」
「は、お任せ下さい。あいつ等に関係しているもの全員に、平等に処罰が行き渡るようにいたします」
「任せた。それとだ、」
「はい」
「あの女が身ごもったなどと抜かした際には、おろさせろ。手段は問わない。そこだけは譲れない。いいな?」
「当然です。陛下のお子はカナコ様のお子様のみ。当たり前の事です」
「この俺を嵌めた報いだ。存分に味わってもらう」
「お任せ下さい」
陛下の怒りが溢れ出た。
「昨日の内容は書類の不備があったとでも言って、一旦保留した後に破棄だ」
「当然です。私がやっておきます。陛下の手を煩わすこともありませんので」
「よし、ポポロ。帰るぞ」
「はい!」
私達は、トリミダの追っ手、主に女だったが、振り切って城に戻りました。
とにかく、信じられません!




