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167 あなざーさいど31-1

あなざーさいど




ポポロの愚痴。






毎回毎回、なんで、こんな事になるんでしょうか、と思ってきましたが、です。

今回程、我が身の不運を呪ったことはありません。


今回の陛下の視察に同行するのは私でしたが、これはアンリ殿だったかもしれません。


事件を知った時のアンリ殿の顔…。


あの行かなくて良かった、って顔が…。

いや、別にアンリ殿をとやかく言う訳ではありませんよ。

私とアンリ殿の立場が逆であれば、私もそのような顔をしてしまうでしょう。





そろそろ、視察のあり方についての議論を議会に提案する時期が来たようです。 

絶対に提案して、制度を変えますよ。

私の身が持たない…。




陛下にはカナコ様という王妃がいらっしゃいます。

セーラ様、アリス様、ルイ様という3人のお子もいらっしゃいます。

それに、なんと言っても本人達が認める馬鹿ップル振りなんですよ。




それをなんでだろうなぁ!もう!




あ、すみません。



イラついておりました。

今回は陛下のみならず、私や残りの人間まで餌食になってしまったのですからね。





あの、トリミダ。

もう二度と足を踏み入れませんよ。

行くもんですか。


妻の顔が、まともに見れない…。







トリミダへの視察は最近新しい妻を迎えたスムージィ伯爵からの依頼でした。


今のルミナスは魔物の減少に伴って、地下の人間が地上に移り住むことが多くなって来ています。

それに伴って、征伐税は減っており、新たな財源の確保が今のルミナスの最重要な課題です。

それについては、各種税金をいかに不公平感なく徴収するか、が重要です。


カナコ様のルミナス食品研究所が開発する製品の製造過程を使用料という形で国に収めると言う新しい収入が少しづつですが増えてきてます。

これは他国からでも徴収が可能なので、画期的な方法ですね。


後は地上に移り住んだ途端に発生する徴兵義務を利用した方法です。

これを延期するのに延期料、免除するのに免除料を徴収してます。

かなりの金額なんで、金持ちしか払えませんがね。


この様に、色々な税について、今ルミナスでは検討が行われています。



で、です。


新しい産業を興すための免税、減税の措置という事も行われようとしています。

長いヴィジョンで国を栄えさせるために行うのです。


このトリミダって地域もこのような新しい地域です。

ここは米の産地ボッシュの近くにあり、これからは米の生産に力を入れて行きたいとの陳情でしたので、その為の各種税金の免税措置が妥当かどうかを判断する為の視察でした。


別に、陛下が行くほどの事もなかったんです。


ところが、ボッシュには陛下が懇意にしている木工職人がおりまして、そろそろルイ様の机を作られたいと考えていらっしゃった陛下が行くとおしゃったのです。

お子様の、ルミナスのお世継ぎのために、自分が直に職人と打ち合わせがしたかったのでしょう。

その職人が作った陛下の机は、素晴らしい出来で、今でも執務室に重厚な重みを与えてくれています。


実は私も自分用に作ってもらったのですが、1年待たされました。

けれども、待ったかいのある机です。



とにかく、陛下の用事はボッシュにあったのですよ。

なのに、トリミダの奴等!




落ち着きましょう…。





では順にその事件を説明します。






一行は5名。

訪れるのはボッシュ、トリミダの順でした。


ボッシュでは米の生育状態について確認して欲しいとの、カナコ様からの依頼もありましたので、1日をとりました。

陛下とお付の侍従は木工職人のところへ。

私と2名は米の生育状況を確認したのです。


今年の米も豊作になりそうです。


米はパンよりも腹の持ちが良いみたいで、軍隊に評判がいいのです。

パンは焼く場所を選びますが、米は何処でも炊けるので重宝がられています。


カナコ様の喜ぶ顔が見えるようで、私も安堵したものです。



翌日、私達はトリミダへ移動しました。



陛下はルイ様に送られる机のことを上機嫌でお話になっておりました。


「ルイには内緒なんだよ。カナコとな、あいつの驚く顔をが見たいから内緒にしようと決めたんだ」

「さようでございますか、きっとお喜びになられますよ?」

「ああ、次の王に相応しい机になるからな」

「宜しゅうございました」


馬上の陛下は、こうも仰ってました。


「これからは魔法も変わって行くかもしれん。俺が知らないルミナスをルイが納めることになるかもな。あいつは苦労するだろうから、俺が生きてる内は、あいつの代わりに、いや、あいつの為に道をつけてやりたいんだ」

「道ですか?」

「そうだ。今までは魔物を征伐すれば民が付いてきてくれた。だが、これからは違うかもしれない。そしてだ、その新しい方向がまだ分からない。新しいルミナスの向う方向を、俺が示してやれればいいと思うんだ」

「なるほど」

「ルイは、あれでいい王になると思う」

「私も思います。私共にも誠実でいようとする姿勢が感じられますから」

「そうか?」

「はい、ルミナスも安泰ですよ」

「それは嬉しいな」


そう言って、笑う陛下です。

つくづく、ルミナスは良い王に恵まれたと思いました。




そうそう、あのスタッカードの先代もきっとあの世で喜んでおいでると思います。

散々こき使われましたが、あれがあったからこそ、私の今があると思っています。

あの方がルミナスに居てくださって本当に良かったです。

あのように王にも辛辣な苦言を言えるのはあの方しかおりませんでしたから。

3代の王に使えるよな方ですからね。





そして、私達はトリミダに到着しました。





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