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昼下がりの庭だ。

久々に家族でノンビリしている。




「ちちうえ!えーーい!」


ルイは体の大きさに合わせた剣を持って、デュークさんに稽古をつけてもらっている。


「ルイ、まだだ!」

「えー!」

「えーじゃない!男が弱音を吐くんじゃない!」


意外にデュークさんはルイに厳しい。

デュークさんもそう育ったって言うからね…仕方ないんだろうけど、ね。

まったく、上の娘達とは全然違う。

そこが可愛そうだ。

だって、ルイはまだ4歳なんだよ?


そんな2人をお姉様方は涼しい顔をして見ているんだ。


セーラはもう直ぐ8歳になる7歳、アリスは6歳だ。 

この姉様達は、もうね…。


「お母さま、明日はいっしょに。劇をみにいってくださる約束よ?」

「ちゃんと、おぼえてらっしゃる?」

「もちろんですよ。着ていく服は決めたの?」

「まだよ、ね?」

「だって、アリエッタがダメっていったから、きまらないもの」

「それはそうよ。アリエッタに見せてもらったわ。あんなに丈の短いスカートなんて、駄目よ?」


セーラが頬をプンプンさせる。


「どうして?劇をみにくる子は、みんな、あの丈だもの!」

「今年のはやりなんだから!」


おいおい、アリよ。

なぜ、あんな丈のモノを作った?

いや、なぜ、あのチェニックとスパッツを売ろうなんて考えたんだ?

いまやルミナスの少女の間で、大流行じゃないか!


いや…、私が悪いのか…。


「どうして、みんなは良くて、私たちはダメなの?」

「そうよ、どうして?」


それは姫だからだよ!

言いかけた言葉を飲み込む。


「お母様が駄目だからです。ちゃんとした服にして欲しいの。駄目かしら?」

「だって!」

「みんなと一緒がいい!」


あああ、頭が痛い。

少し声のトーンを落としてみる。


「セーラ、アリス?いいかしら?」


これは私が怒った時の喋り方だと知ってる娘達は、小さく頷く。


「あの服は、この宮殿の、それも、家族のエリアだけで着るって約束だったわよね?違うかしら?」

「そ、そうです」

「はい、そう」

「それが、どうして観劇の時に着て行っていい事になったの?」

「だって…」

「きたいもん…」


私は手を緩めない。

ここで緩めたら付け上がる…。


「貴女達は、誰だったかしら?」

「ルミナスの姫、」

「うん」

「ルミナスの姫は、誰のお陰で美味しいご飯が食べられるの?」

「みんなの、おかげ」

「そうよ、だから、責任があるのよね?覚えているいかしら?」

「うん、みんなのお手本になるような、ゆうがな姫になること」

「はい」


娘相手にえげつないかもしれないけど、ちゃんと言っとかないと。


「じゃ、みんなのお手本になるような、優雅なルミナスの姫が、みんなの目の前で着るべき服は、どんな服かしら?」


娘達は互いの顔を見合わせて、同時に言った。


「「お母さまとアリエッタがえらんだ服…」」

「よろしい。じゃ、明日着ていく服をアリエッタに選んでもらいなさい。いいわね?」

「はい、」

「うん…」


いつの間にか、練習を終えたデュークさんとルイが、このやり取りを見ていた。

そんな苦笑いの顔したって、状況は変わらないからね。


「あら、ルイ。冷たいジュースがあるわよ?」

「うん!」


ルイは私の横に座って、エイミィが注いだ林檎のジュースを飲み干した。

欲しそうにしてるから、デュークさんにもあげるね。

私の手から受け取ったデュークさんは子供達に聞こえないように耳元で囁く。


「相変わらず、娘達に厳しいな?」

「もう!ここで、その話はしない約束よ?」

「ああ、そうだった、すまない」


デュークさんは42歳。私は24歳になったんだ。

相も変わらず、ラブラブですからね。


「お母様はルイに甘い…」

「そうよ…」


娘達が、ブツブツ言ってる。

あ、そう言えば、私もマリ姉ちゃんと、こうやってブツブツ言ってたなぁ。


無視しようっと。


「ルイ、美味しいかった?」

「うん!」

「お代わりしましょうか?」

「うん!」


可愛いなぁ。

ルイは緑の髪に赤紅の瞳。

顔立ちは私に似ているんだけど、雰囲気がね、ちっちゃいデュークさんなんだ。


デュークさんラブの私としては、もうね、堪らないのよ。

娘達には見透かされてけど。


デュークさんは苦笑い。


そんなお父様の両サイドを固めている娘達。

告げ口する気満々。


「ねぇ、お父様?」

「どうした?」

「だって、お母様ったら、ルイを甘やかしすぎだわ」

「そうよ、私達には厳しいのに、よ?」

「お父様、お母様を叱って?」


デュークさん苦笑いだ。

私は助け舟なんか出さないぞ。


「セーラ、アリス。それは出来ないな」

「「どうして?」」

「父は母を愛しているからだ」

「「もう!」」


なんか、変な言い訳。

けど、娘達も笑っている。

みんなで笑う。



なんだか、幸せ。










その日の夜は、特別に月が大きかった。




デュークさんがベットから出て、用意された水を飲んでいる。

今夜は蒸し暑い夜だ。

魔法で涼しくはしてるけど、やっぱり自然の力は偉大なんだ。


デュークさんはガウンを羽織っただけで、立ったまま月を見ている。


「綺麗…」


思わず、声が出た。

彫刻のようだ、って思った。


「ああ、月が大きくて綺麗だ」

「違う、」

「うん?」

「デュークさんが綺麗なの」

「俺がか?」


こちらを向いた。

裸が見たい。


「ねぇ、私のお願い聞いてくれる?」

「いいよ」

「脱いで?」

「か、カナコ?」

「デュークさん、彫刻みたいだもの。見たい」

「それは、男が女に言う台詞だろう?」

「いいじゃない、見たいもの。お願い?」

「俺がお前に弱い事を知ってて、言うんだな?」


諦めた最愛の夫はガウンを脱いだ。


「やっぱり、綺麗」


うっとりと私は裸になった夫を眺める。


「ルミナスの王を裸にした責任は、取ってもらうぞ?」

「え?」


裸の王様は、いつの間にかベットに戻っていた。

まさか、こんな短い距離で浮足を使うなんて、ありえない。

顎をつかまれて、深い口づけを受ける。


息が、出来ない、。


「く、くる、しい、…」


急にやめられてしまう。


「はぁ!は、は…」

「カナコ、」

「息が、出来なかったよ!」

「この程度では、終らせない」

「デュークさん?」

「お前が、俺に火をつけたんだ。覚悟しろよ?」


今夜はどうなるんだ?


「許しを請うても、やめないからな?」

「デュークさん?何をするの?」


それには答えないで、いきなり私に触れるんだ。


「あ、」


それは激しい刺激だった。

こんな刺激は初めてで、いつもよりも声がでてしまうんだ。


「あーーん!あっ!」

「カナコ、まだだ、こんな程度じゃ俺は満足しないぞ?」

「デュークさん、あ、はぁ、いじ、わるよ、あ!」


言葉には出来ない、状態だ。

まだ、こんな愛され方があったんだ、凄すぎる。


「お前は、俺の女だろ?」

「うん、そ、う、あっ!」

「感じるか?」

「すご、く」

「いいか?」

「い、い、…」


もう、全てをデュークさんに委ねた。


「デュークさん!!ああーーー!」


あまりのことに、放心状態に陥ってる。

ぐったりとデュークさんに身を預けたままだ。

そんな私を抱き起こして、持ち上げる。


私の中にデュークさんが入ってくる。


「カナコ、さあ、覚悟しろ?」


その刺激は私の脳まで届くんだ。


「!」


激しすぎた。

私達は互いの名を呼び、感じたままに声を上げる。

いつもより激しくて、いつもより長いのは、月の魔力のせいだ。


そうだよ、きっと。


気づいたら、私達は抱き合っていた。

いつ果てたのかも覚えていない。


「カナコ?」


優しく私の名を呼ぶ。


「なあに?」

「お前は素敵だ」

「うん、愛してる」

「ああ、愛してる」



月夜には魔物がすんでいる。

私達を唆す魔物がだ。






スリープもいらない。

デュークさんの匂いに包まれて、私は、熟睡したんだよ。






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