表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
158/192

158

「あのね、お婆様?」

「なあに?」


セーラはお姉様らしくお淑やかにしてる。

珍しい。

どんな魂胆があるんだろうか?

一体、何を暴露しようとしてるのか?


捻くれた母親だな、娘の行動にそこまで警戒するなんてね。


「お母様のおなかの中にね、赤ちゃんがいるの」 

「そうなの?」

「でね、動くのよ?」

「まぁ、凄いわね?」

「うん、でね、お父様はね、毎日、お仕事に行く前にね、おなかの赤ちゃんに向ってね、いい子にするんだぞ、っていうの」


おいおい、そんなに観察してるのか?

デュークさん、娘達の観察眼は鋭いぞ? 


「そうなのね?」

「うん、お父様ね、お母様が大好きだから、赤ちゃんに、いい子にしろっていうのよ?」

「え?」


思わず、声が出たよ…。

私の捻くれた考えがあたったのか?


「どうして、そう思うの?」

「だって、赤ちゃんがあばれたら、お母様、痛いでしょ?」

「そうね」

「だから!そういうの!」 


なんだぁ、一瞬あせったよ。

夜の方のことでも言い出すのかと思ったぜ。

子供は目が離せないなぁ。





セーラがお婆様、いや、お母様と話してるのは、城に来ているからだ。

私の体調の確認と、みんなで集まる日のことを決めるため。


これ以上いたら、こちらの体が持たないわ。


「さぁ、セーラ、アリス。アリエッタと遊んできてね?」

「はーい!」

「アリエッタ、本読んでくれる?」

「はい、姫様。ヴィクトリア様から戴いたご本をお読みしましょう」


娘達が部屋へ行くと、急に音がなくなるように感じる。


「静かになったわ」

「そうね」

「小さかったフィーが、すっかりお母様だわ」

「うん、そう?だけど、お母様にも、だいぶ心配を掛けたわ」

「そうね。けれどもね、フィーのは嬉しい心配だから、いいのよ」


そう言って、ため息をついたんだ。


「何かあったの?」

「いいえ、なんでもないのよ」


なにかあったんだ。


「そう、なら、良いんだけど。あ、そう言えばサー姉様の海の地図、陛下も国で買いたいって仰ってたのよ」

「そうでしょうね、これだけ魔物も落ち着いてくれば、外に目がいくから…」

「本当だよね。サー姉様も、そのパートナーって人も、よく思いついたね?」


また、ため息だ。

私の話なんか聞いてない。


「ねぇ、お母様、言ってよ?何を悩んでるの?」


無言だ。

意外にガードが固い。


「私には言えないの?」


諦めたように、口を動かす。


「ねぇ、食品研究所のマサって方、フィーも陛下も知ってて雇ったの?」

「知ってて?何を?」

「その、なんていうの、男の方しか愛さないって人…」

「ゲイ?」

「そう、そのゲイだって事」

「うん、知ってるよ。だって、ゲイだから陛下がお許しになったんだもの」

「そうなの?」

「私がマサと2人きりになっても、安心できるでしょ?」

「そうね…」


それが、どうかしたのか?

お母様は、はぁ、と、またため息だ。


「どうせ、ジャックが言うんだろうけど…、あのね、マサさんとジャックがね、お付き合いしてるのよ」


目の前が、歪むかと思った。


「な、なんて…?」

「マサさんとジャックよ」

「え?兄ちゃん、ゲイなの?」

「そうなのよ。学院を辞めた理由の一つは、それもあったそうよ。私も最近知らされたの」

「えええええ!」


じゃ、なにか?

妹の私は、兄を、わざわざ、マサに配達したのか?


「ちょっと…、え???」


心の整理が出来ていない。

周りの人間がそういう人間でも構わないけど、身内がそうとなると、話は別になってしまう。

弱い人間だよ。


「そのね、ジャックが、その、ゲイなんじゃないかってね、マリーが言い出したのよ」

「そ、そうなんだ」

「一度、街で2人を見かけたんですって。やっぱり、男2人が買物をするなんて、ね…。変よね?」

「まぁね、そうだよね…」

「で、ね、マリーがね、皆がいる時に、いえ、大人だけよ、いる時に聞いたのよ」

「マリ姉ちゃん、ジャック兄ちゃんに聞いたんだ…」

「そうよ、聞いたのよ。そしたら、ジャックったら、『そうだけど、』って平然としてて…」


おいおいおい!

そんなカミングアウトの仕方は、どうなんだよ?


「こっちの方が、アタフタして、もう、馬鹿みたいだったの…」


お母様のため息が深い訳だ。

ジャック兄ちゃん、あんたは、もう…。


「けど、先日、研究所に行った時は、普通に同僚だったわよ?」

「それは、仕事を失いたくないからよ。貴女に知れたら仕事辞めさせられるかなって、ジャックが心配してるの」


無職が怖いのか?

まぁ、そうだろうなぁ。


「え?あ…、そうね、陛下にお聞きしてから判断するわね、きっと」

「お給料、良いんだって?」

「もちろんよ。ジャック兄ちゃんのセンスを買ってるんだから。当然よ」

「そう、なのね」


お母様、子育てで苦労してるなぁ。

私もきっとそうなるんだろうね…、って、私はあと10年程しか生きられないんだ。

その後、一体、どうなるのかな…。

いやいや、それよりも、私もこんな苦労をするんだろうか?


「フィー?」

「え?」

「どうしたの?顔が暗いわよ?」

「ううん、なんでもないよ」


そうそう、目先の問題はジャック兄ちゃんだよ。


「陛下には言うわよね?」

「うん、言わないといけないと思うよ」

「そうよね…」

「ねぇ、まさかサー姉様のパートナーの方って女性ってこと無いわよね?」

「もちろん、男性よ。だけどね、大陸の方なの…」

「あ、そう…」


そっちも問題かもね。

この間の事件もあったばかりだしね。


「この事も、陛下には言うわね?」

「仕方ないわよね…」


そう言ってため息をつくお母様。

でも、頑張って育ててくれたよ?

5人もいるんだ。

変なの、いや、変わったのも出てくるって。


「ねぇ、お母様?」

「なに?」

「お父様とお母様は、立派に子供を育てたわよ?けれど、人数が多いから、いろんな子供がいるだけ。そうでしょ?」

「フィー…」

「それに、みんな独立したんだもの。思った方向じゃなくても、それぞれに生活してるわ」

「そうね」

「それで、充分じゃない?これからはお父様と2人で旅行でもして、笑って過ごして?」


お母様の目には涙が浮かんだんだ。

苦労しっぱなしだなぁ。

それに、多分、私が先に死ぬんだろうから、親不孝するよね…。


「嫌なことがあったら、城に来て泊まればいいわ。セーラもアリスも楽しみにしてるから。それに、生まれてくる子もよ?」

「ありがとう、フィー」

「起こった事は変わらない。だったら、楽しんで許してあげて?きっと、サー姉様もジャック兄様も、自分の力で生きていくから」

「ええ、そうするわ」

「うん」


私はお母様の肩に手をかけた。

あれ、どうしてだろう?

少し小さく感じたんだ。


記憶の中にあった、そう、この手が覚えている、お母様なのに。







私は早速、デュークさんに報告した。


「まぁ、そうだな…」


と言葉を濁してしまったけれど、ジャック兄ちゃんは研究所にいて良い事になった。

サー姉様のパートナーの件は、知らなかった事にするそうだ。


「どうして?」

「海の地図は国としても欲しいからな。その為には多少の事は見なかったことにする」

「そう、けど、ありがとう」

「気にするな」


気になるよ。

気にするよ。






けどね、…、そうか、親孝行、しないといけないなぁ。






脱字発見。訂正しました…、なんか、反省です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ