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もう既に始まっていた。

それは城下街の幕の外だった。



戦の喧騒が聞こえる。

ルミナスに残っているだけの、全ての部隊が出払って対応している。

大きな声、飛び交う魔法、叫び声。


体勢は五分五分に見えた。

魔法を使える時間は限られている。


時間はかけられない。


私はアンリ兄様の部隊とサー姉様を連れて現場を見渡した。

闇雲に魔法を放ち続けると、皆が持たない。


「兄様、将軍を呼んで。数箇所に分けて集めて欲しいの!」

「わかったよ」


兄様の部下が飛んでいく。


「兄様、魔法は極力最低限に抑えたいわ」

「そうだな、魔物を集めるのは魔法が無くても出来るだろう。その辺のところは、私が将軍と話をしよう」

「お願いね?」 


私はサー姉様を見た。


「姉様、私の側にいて下さる?」

「もちろんよ。安心なさい。私が貴女を守るわ」

「ありがとう」


直ぐにルミナス国将軍ビクラード公爵が来た。

何度か魔物征伐で一緒に戦ってきた仲間だ。

互いの能力は理解している。


「妃殿下!」


彼は私の前に出ると、臣下の礼を取る。


「今は、いいわ。直ぐに動きましょう?」

「は!」

「私、出しゃばるけど、許してね?」

「いいえ、妃殿下の魔量が無ければ難しい局面ですので」

「ありがとう、で、状況は?」

「はい、魔物の数は1500。幸いな事に1方向からのみの襲撃です。こちらは3000。ですが、時間経つと不利になるかと判断しております」


私は兄様を見た。

頷いてくれる。

心強い。

兄様が将軍に伝える。


「ビクラード将軍、すぐに魔物を10箇所に分けて追い込んで欲しい。追い込んだら、すぐに我々が始末する」

「は、」

「いいな、追い込んだら、逃げるんだぞ?」

「はい!では」


始まった。


今まではバラバラに戦っていたものが、段々と固まりになっていく。

魔物が分かれていくんだ。

武器で追い込んだり、魔法で動きを止めたり、少しずつ固まりになってきた。


「分かれてきたわ」

「けど、まだよ?」

「分かってる」


諦めた兄様から声が掛かった。


「フィー、絶対に無理はするな?いいな?」

「分かってるわ、きっと、この子もね」

「陛下がバンビーからこちらに向っている。無理しなくとも、いずれは全て征伐されるんだからな?」

「ええ」


わかるよ。

兄様が私を無理させないように気遣ってくれてるのは。


けどね、いくらデュークさんでも、バンビーからは1日では来れないよ。

それまでになんとかしないと、幕が破られて、城に魔物のが到着してしまう。

娘達を危険に晒すことは、絶対に出来ない。


「兄様、大丈夫よ。私の魔量を信じて?」

「信じてる。けど、心配なんだ」

「ありがとう」


その時、使者が走ってきた。


「伝令!南南東に魔物を纏めました!」


南南東を見た。

いい具合に分かれている。

これなら、落とすだけで大丈夫だ。


「行くわ!」

「は!」


これをキッカケに、私達は魔物を征伐して行った。

私は浮足を使い、飛ぶように走った。

最初の塊に魔法が届く距離まで、いけた。


「いくよ!」

「フィー、魔力は余分に使わないのよ!」

「うん!」


姉様の助言が無ければ、調子に乗った私は全力で使ってしまうところだ。


「えい!」




ddっどおおおおおおーーーーーん!





「次!」





dっドお大ddっどおおおおーーーんんん!





1つ2つと黒こげの山が出来ていく。

何とかルミナスの手前で食い止められそうだ。


「後、2つ!」


姉様の声が聞こえる。


「わかった!」


私の浮足についてこられるのは、姉様だけだった。


「もう少しだからね!」

「わかったよ、後は、あそこだ」

「そうね」


もう少しで射程距離内…。





その時だ。


大きい奴が、急に、集団から離れたんだ。

たった、1匹だけだ!

それだけなんだけど、奴はでか過ぎる。

離れたまま何かを探している。

何を探してるんだ?


あ!


「ああ!」

「飛んだ!」


奴は、イキナリ飛んだ。

物凄い勢いで、飛んだんだ。

しかも、だ。


「まさか、城?」


城に向ってやがる!

ふざけんな!


幕に向って突進してやがる!



させるか!!



「待てーーー!」


私は浮き上がって、そいつに向けて魔法を放った!


「ギャーーー!」


除けやがった。

くそ、頭良いんだ…。


「フィー、痺れよ!痺れにしなさい!」

「あ!」


そっか、痺れなら範囲を広くして打てる。

除けてもどっかに引っかかるぞ!


急いで追いかける。

子供の頃の練習が役に立ってるわ。

空中で浮いたまま追いかける、要は飛んでるんですよ。


追いついた。


「まてぇ!」


痺れが届いた。

間に合った!


「ギャーーー!」


なんだ、なんだ!こっちに向ってきたぞ?

痺れてないのか?

私の魔法に当たっておきながら、飛べるなんて?

化け物だよ、こいつ!


いや、今がチャンスだ!

向こうから勝手に近づいてくれてる。

城が安全になった。


こうなったら、遠慮はしないぞ!



「覚悟しなさい!」




ドオオオオーーーン!



当たったよ。

雷が魔物の上から、ドーンとね。


黒こげだよ。

焦げた塊がルミナスの大地に落ちた。



私はそれを見届けた。

サー姉様の声がする。


「フィー、あっち、残ってるわよ!」

「あ!」





慌てて戻って、最後の塊に雷を飛ばす。







dっド大オオ大おおどおおおどおおおおーーーーーん!






なんとか、終了した。


黒こげの山が、10数個。

緑の大地の上に出来上がったんだ。





無事に終った。





良かった。





が、。

痛い、ぞ…。




私はゆっくりを降りると、思わずお腹を抱えてしまう。


ごめんね、無茶したね?

けど、もうちょっと、頑張って?





「フィー!」


サー姉様が飛んできた。

姉様も飛べたんだ。


「ほら、」


あ、楽になる。

さすが、サー姉様の魔法は気持ちがいい。


「いいから、もう、大丈夫よ?」

「そうだね…」

「さすがのフィーでも、今回は魔量が尽きたでしょう?」

「うん、たぶん、ね」

「私が貴女を守るから、眠りなさい」

「うん、サー姉様?」

「なに?」

「ありがとう、守ってくれて」

「いいのよ、私は貴女の姉よ?妹を守るのは当然だもの」


ああ、昔のままのサー姉様だ。




そのままサー姉様にもたれかかる様にして、私は眠ってしまったんだ。

そして、急いで城に連れて行かれて、治療を受たらしい。

夢も見ないで眠り込んだよ。






ごめんね、お転婆なお母様で…、ホントに、ごめん。





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