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デュークさんが、出かけて10日が過ぎた頃だ。
いい天気だったから、子供達と庭へ出た。
この庭は、相変わらず爺が管理している。
って、爺って、幾つなんだろうか?
会った時から爺なんだよ。
もしかして、仙人なんだろうか?
とにかくだ、爺の管理する庭は美しい。
花が咲き誇って、緑が輝いているんだ。
城の奥にある私達の宮殿と城を繋ぐように庭が設計されているんだ。
もちろん侵入者が入り込まない工夫はされている。
庭で遊んでいる娘達は元気だ。
しばらく見守っていたんだけど、妊娠初期のせいかお腹が張る。
なので、部屋に戻ってから休むことにした。
「セーラ、アリス」
「なに?」
「なあに?」
「お母様ね、ちょっとお腹が痛いから、休むね?」
「だいじょうぶ?」
「いたいの?」
「そうなの、遊んであげられなくてごめんなさい」
「いいの、ね、アリス?」
「うん、だいじょうぶ、おねーさまとあそぶ」
いい子達だな、まったく、可愛い。
「アリエッタのいう事を聞くのよ?」
「はーい!」
「はい!」
アリエッタも嬉しそうだ。
「じゃ、アリエッタ、お願いするわ」
「畏まりました」
そう言って、私は部屋に行った。
エイミィが準備をしてくれて、ベットで休んでる。
娘達だけにしても、そこは安心してるよ。
城の中だ。
私にも、娘達にも、護衛が付いている。
それにだ、娘達も魔法が使える。
ただ、加減も判らないし、意味も分かってない。
だから、幕の張り方だけを教え込んだ。
亀さんになれ!
って言ったら、しゃがみ込んで幕を張るって遊びだ。
2人とも上手なんだ。
私とデュークさんだけが入れる幕だ。
かなり、その事がかなり嬉しいデュークさんは事あるごとに亀さんで遊んでいる。
ザックが昔、魔法には癖があるって言ってたけど、何となくわかる。
セーラとアリスの幕は微妙に違っているから。
セーラのは律儀で、アリスのはちょっといい加減だ。
長女と次女の違いかな?
そう言えば、ジョゼ達、元気かな?今頃何処にいるんだろうな。
海が見てみたいって言ってたから、いつでも、あの別荘を使うようにって言ったら、遠慮された。
下町の賑やかな宿が良いんだって。
そうだよね、私もそっちがいいわ。
きっと、料理も素朴でいいんだろうな…。
あ、直ぐに食べ物に気持ちが行ってしまう。
仕方ないか、独りで寝てると考えがとりとめも無く流れていくんだもの。
お腹の子はどっちかなぁ、…。
ねぇ、おまえは、どっち?男の子?女の子?
お母様はね、どっちでもいいんだよ。
けどね、大きいお爺様がね、男の子が良いんだって。
言葉にはしないけど、伝わるんだよね。
けど、どっちでもいいからね?
健康で、元気で、それだけで。
お姉様達が、待っているからね?
お父様も、凄く楽しみにしてるからね?
なんだか、ねむいわ…。
ピーーーーーーーーーィ!
笛が鳴った。
侵入者が?
まさか!
私は飛び起きて、ガウンを羽織った。
「エイミィ!エイミィ!」
「はい!」
「何処から?」
「庭の奥です!」
「直ぐ行くわ」
「しかし、」
「このままでいい、」
久々に浮足を使った。
飛ぶように走るんだ。
娘の元へ!
ピーーーーーィ!
また、鳴る。
笛は侵入者がいるって証。
何も考えないで、私は笛が鳴らされている場所まで浮足で突っ走った。
隊長が見える。
良かった。
娘達は、亀さんのポーズしてる。
えらいぞ!
「カナコ様!」
隊長の声に、娘達が顔を上げた。
「セーラ!アリス!まだ亀さんしてて!」
「…うん」
だって、知らない少女がそこに居るんだもの。
状況はこうだ。
2人の見知らぬ侵入者。
男は、隊長達に取り押さえられている。
「カナコ様、こいつを取り押さえたところ、この少女が現れて…」
「そう…」
少女はナイフを手にしていた。
娘達の幕はナイフなんか通さない。
けれども、まだ幼いから、恐怖で幕を消してしまう可能性が残っている。
私はゆっくりと指を動かそうとした。
「待ってくれ!」
私の動きを勘違いした男が叫ぶ。
「カリーナに危害を加えないでくれ!お願いだ!」
カリーナ?なんか聞いたことがある気がする…。
いや、それどころじゃない。
「私の娘に何かしようとするならば、私は迷うことなく、あの少女を殺すわよ」
「やめろ!!カリーナは何もしないから!できないから!」
その時、少女の目から涙が零れた。
「ケイン、上手くいかないの?」
意味がわかりません。
少女はナイフを離そうとしない。
「カリーナ、もう、いいだろ?」
「いや!だって、本当なら、ここは私の庭だったの!」
どういう意味だ?
「けど、見つかってしまったよ?」
2人が話している間に、私は微かに指を動かして、娘達の幕を強化した。
外の音を遮断するオマケをつけた。
これで、いい。
私は、隊長に命令した。
だって、この2人、大した強さじゃないもの。
「隊長、その男を締め上げて。殴りつけて!」
「はい!」
すぐさま、隊長は男の腹に膝蹴りを入れると、顔をグーパンチで殴った。
血が流れた。
男が何かをうめいている。
「どうして、どうして、ケインを殴るの!」
少女は大声で叫ぶ。
だから、私も大声で叫んだ。
「ナイフを捨てて。膝を突いて両手を頭の上にかざしなさい!」
「ケインを殴らない?」
なんか、変な感じだ。
ここは王宮の奥。警備も厳しい。
なのに、こんな普通の人間が簡単に侵入出来るなんて…。
「早くしなさい!」
「ケインを殴らないって、言ってよ!」
なんだ、この堂々巡りは。
厄介だな。
その時だ。
返答に迷っている私の前から声がした。
「フィー、伏せなさい!」
聞いた事のある声に、私は反射的に伏せる。
「サー姉様!」
「まだよ!動かないで!」
少女が倒れた。
姉様が彼女の側まで駆け寄り押さえ込んだんだ。
さすが、姉様だ。
魔法なんか使わなくても、充分に強い。
これで、安心だよ。
ところがだ、え?
私の頭の上から声がする。
「誰も、動くな!」
後ろから、誰かが、私を、持ち上げて…。
私、後ろから抱え込まれてる?
首にナイフ当たってませんか?
「カナコ様!」
「フィー!」
まだ居たんだ…。
3人目の奴がいたんだ。
私の腕を掴んで、首にナイフを当ててる。
「この2人を帰してもらおう」
「フィーを離しなさい!」
「2人を放せ!」
「フィーを離してからよ!」
サー姉様と男は睨み合う。
こんな時、負けないのがサー姉様だ。
私の知ってる、強くて自慢のサー姉様なんだ。
戻って来てくれたんだ。
私を見ていたサー姉様が、一瞬微笑んだ?
「冗談じゃないわよ!フィー、そいつを、投げ飛ばしなさい!」
あ、はい…。




