15
ザックはそれだけ言うと部屋から出て行った。
私はジョゼといつものスケジュールをこなす。
昼食、ダンス、ぐったり、寝る。
クタクタな私は夜先に寝てしまうからデュークさんとの会話がない。
顔も見れてない。
だったら、いっそのこと別の部屋で寝たいんだけど言い出せない。
リリさんラブの分からず屋が承知するとも思えないからね。
そして、その次も朝から同じ日程が繰り返される。
「起きろ」
トマト、目玉焼きの黄身を割って小さく切ったパンにつけて、ソーセージ、ビーンズ、ベーコン、マシュルーム。
「リリフィーヌ様は…」
「ルミナスのマナーとしては、…」
ぬるいスープ。
「美味しかったわ、下げてくださる?」
「カナァコ!」
なんか毎日違う独りで食べる晩御飯。
けど、疲れてるから完食は無理だったりしてる。
疲れ果てて眠る。
「お休みなさい」
その繰り返しが続いた。
それでも少しづつ進歩はしてる。
やればできるんだ。
できなきゃ馬鹿だ。
こんなにも最高の環境で過ごしているんだ。
けど、打たれ弱い私。
時々はへこたれる。
ところが、だ。
私は褒められてると伸びるよ?とのアピールが聞いたのか、ジョゼは褒め殺しに近いくらいに褒めてくれる。
ありがたや、ありがたや。
いろんなことがあり過ぎて、毎日が忙しい。
お陰で前よりも帰りたいとは思わなくなった。
リリさん、あなたはどうですか?
って、リリさんは私の体の中にいるのかな?
ちなみに、デュークさんはあれ以来リリさんの体に触れてはおりません。
意外に紳士なのか??
ルミナスに来てから2週間とちょっとが過ぎた。
「今日から、3日程ここを開ける」
朝からデュークさんがそう言う。
「お出かけですか?」
「魔物征伐だ」
え?魔物征伐って言いました?
「魔物征伐?」
「ああ、今回は規模がデカイ」
ドラクエかよ?FFかよ?
魔物ってあんまり意識してなかったけど、いるんだ。
「わぁー、本当にゲームだよ…」
安定のデュークさんの苦笑いだ。
「ゲームとはなんだ?」
「説明が難しいです」
「帰るまでに考えておけ」
「はぁ…」
「その間抜けな返事は直らないな?」
「まぁ、そうですね」
「俺は戦いに行くんだぞ?おまえの間抜けな顔で見送られたくない」
ちょっと怒ってる。
しゃーないな。
「お望みは?」
ちょっとリリさんぽく言っただけで、いきなり腰を掴まれた。
なんだい、そんなにリリさんがいいのか?
…、なんだよ。
「え?」
「黙って、受け入れろ」
そう言って私の顎を掴んでキスした。
おおお、これは噂のフレンチキス????
止めようよ…。
…、やだ、気持ちいい。
長かったキスが終る。
立てないんだよ?
呆けた私は、思わずデュークさんに掴まった。
「感じたか?」
いかん、こいつは意地悪な男だった。
「ド素人相手に、卑怯です」
「どしろうと?なんだ、それ?」
「もういいです、行ってらっしゃいませ」
「まだだな」
「え?」
「リリになるんだろ?リリみたいに俺を呼んでくれ」
なんでだ?
「時間がない、早く言え」
言えって、そんな急に何を言えと?
2人きりでさ、しかも距離近くない?
心の準備ができてませーん!
「え、っと、デューク、」
「ああ」
あ、気だるそうに…、だめだ、気が動転してるわ。
せめて、ジッと見つめるからご勘弁を。
リリさんの顔で最高の笑顔をするから頼むよ。
けど怪我なんかしないでね。
「無事のお戻りを」
デュークさんは驚いた様子だった。
なんでだ?似てるか?
当たり前だぞ、体はリリさんなんだからな。
「い、行ってくる」
急いだ様子で出て行った。
なんだ?あんだけ威張っていたくせに、さ。
なんか拍子抜けです。
デュークさんがいない間。
もちろんデュークさんがいなくても時間は過ぎる。
ジョゼは褒めてくれる。
「かなり上達いたしました。カナコ様は感の良い方です」
「そうかしら?ジョゼの指導が上手なのですよ、きっと」
「いいえ、カナコ様が覚えようとして下さるからです」
「ありがとう、ジョゼ」
こんな時、リリさんは首を少し右に傾けて微笑む。
出来てる?私?
「カナコ様、完璧です」
嬉しいなぁ。
あ、時間だ。
「では、」
ジョゼが部屋を去った。
用事があるんだって、仕方がない。
1人になる。
最近は本を読んだりしてる。
ルミナスにも小説はあった。
どこの世界にも恋愛小説ってあるんだね。
いろんなジャンルの本があるけど、やっぱりツンデレですか?
最近、お気に入りの本を読む。
ジョゼが入れてくれた紅茶と一緒に。
そこへ、久々にリックが現れる。
「カナコ様?宜しいですか?」
「リック?久しぶりね?」
「そうですね」
物腰が柔らかい、笑顔が優しい。
相変わらず、ホッとするな。
デュークさんの俺様振りとは違って、紳士だからね。
「随分と、リリフィーヌ様らしくなられましたね?」
「そう?頑張ってみました。ジョゼが教え上手だらからね」
そして、リックは奇妙なことを言うんだ。
「けれども、カナコ様としてお話になっている時の方が生き生きしてます」
それは、そうだよ。
「まぁね。けど、アルホートのお兄様が来るんでしょ?」
「そうですね」
「頑張らないと?」
「その通りです」
不思議な目をする。
なにが、そんなに寂しんだろう?
「けれども、私といる時は、カナコ様でもいいですよ?」
「うーん、いいの?」
「ええ、いいですよ」
そんなに自信持って答えないでよね。
頑張っている意味ないじゃん。けど…。
でも、そうだね、息抜きも必要かな?
「ありがとう。やっぱり、リックは優しいね」
「どういたしまして」
「リックの前では、カナコでいるよ」
「そうして下さい。私もカナコ様といると楽しいんですよ」
「ホント?」
「ええ、ですから、時々こうして話しませんか?」
「うん!」
そうして、しばらく日本のことなんかを話した。
愉快そうに聞いてくれるリックは、最高の聞き上手。
楽しかった。
「また、伺います」
「そうしてね。今日は楽しかったから」
「ええ、それでは」
と、リックが去ったのは入れ替わりにジョゼが入ってくるタイミングだった。
退屈しないで、いい。
ところで、デュークさん、怪我してないよね?




