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数日後だ。
「おめでとうございます」
ハイディ先生が診察を終えて、そう言った。
「ホント?」
「ええ、今回は間違いありません」
私はアリスを産んでから妊娠しにくくなっていたんだ。
気にしたら負けだと思っていたから、デュークさんにすら言わなかった。
だから、嬉しかった。
「良かった…」
涙が零れた。
「カナコ様?」
「ハイディ先生、ホッとしたの」
「そうですね、皆は勝手になんでも言いますからね」
「…」
真っ先に、言いに行こう。
私は久し振りにデュークさんの執務室に押し掛けた。
「カナコ様?どうされました?」
部屋から出てきた侍従が、驚いている。
「お仕事を邪魔するかしら?」
「大丈夫ですよ、直ぐに取り次ぎます」
「お願い」
私たちは一緒に部屋に入った。
そこにはポポロとアンリ兄様とデュークさんがいた。
「カナコ?どうしたんだ?」
「うん…、ちょっと、お知らせにきたの」
「なんだ?」
えっと、2人きりがいいんだけどなぁ…。
「お邪魔みたいですね?」
「え、いや、」
「フィー?」
まぁ、いいか。
「大丈夫。あのね、実は、子供が、出来ました」
誰も何も言わない。
なんで?
「え?」
なんだ?
急に抱き上げられてしまったぞ!
「カナコ、本当か?」
「うん、ハイディ先生が、間違いないって、言ってくれた」
「そうか、うん」
ポポロが安心した声で言う。
「よろしゅうございました。陛下、おめでとうございます!」
「ああ、ありがとう」
「陛下、おめでとうございます!」
「うん」
私はお姫様抱っこ状態のままだぞ?
「こうしちゃいられないな、直ぐにセーラとアリスにも教えないと」
「そうだけど、夜の食事の時でも大丈夫だよ?ちゃんと仕事、終らせてね?」
「いいえ、もう、終りました」
本当かよ?アンリ兄様?
「大丈夫です。陛下、ご家族でお過ごし下さい」
「わかった。アンリ、ハイヒット殿とスタッカード殿にも連絡をしてくれ」
「畏まりました」
「じゃ、な」
そのまま、私たちの宮殿に戻るんだ。
「カナコ、良かったな?」
「うん、なかなかできなくて、心配してたでしょ?」
「いいや、カナコが気に病んでたことの方が心配だった」
「知ってたの?」
「わかってたよ。けど、言えなかった。見てるしか出来なかった」
「ごめんなさい、そんな心配掛けてたなんて。駄目ね…」
「カナコ、元気な子供なら、それでいい」
「うん」
ばれてた。
皆が世継ぎをって言うから、しんどかったこと。
「やっぱり、デュークさんには叶わないよ」
「カナコ?」
「私の最愛の夫は、素敵過ぎて困っちゃいます」
「ハハハ!」
嬉しそうだ。
なら、いいっか。
子供達も、わかっているのどうなのか、けど、嬉しそうだ。
多分、マリ姉ちゃんの所のケイトを見てるから小さい兄弟が欲しかったんだろう。
「おかあさま、ここに、いるの?」
「そう、アリス。アリスもここにいたのよ?」
「アリスも?」
「セーラもいたのよね?」
「そう、セーラも。だから、お姉様達、産まれてきたら仲良くしてね」
「まかせて!」
「うん!」
その姿を見ているデュークさんはデレデレだ。
「おとうさま!セーラね、いいお姉様になるの」
「そうか?セーラはいいお姉様になるんだな?」
「うん!」
「なれるぞ?セーラは今でもいいお姉様なんからな?」
「ほんとう?」
「もちろんだ。父が言うんだ、間違いないぞ?」
「うん!」
「アリスも!」
「うん、アリスもだ」
「うん!」
もう直ぐ、デュークさんは出張だ。
いないと寂しいけど、仕方ない。
今回付いていけないしね。
デュークさんが出掛ける。
「1週間は戻れないな」
「そう、でもね、我慢して待つからね」
またキスされた。
「娘達のこと、頼んだぞ」
「はい」
そして、ちゃんとお腹の子にも言葉を掛けて行くんだよ。
しゃがんでお腹に向ってね。
「いい子にしてるんだぞ?母に迷惑をかけるな?」
お腹の子はまだまだ動かない。
まだ初期なんだもの、当然だ。
「分かったって言っている」
「ほんと?」
「ああ、俺には聞こえた」
そして、またまた、キスしてくれた。
「おとうさま!」
「おとうちゃま!」
娘達がデュークさんにしがみ付いた。
「いっちゃうの?」
「いないの、やだ!」
子供達は、ちょっと泣いてた。
「セーラ、アリス。お父様はお仕事なのよ。行ってらっしゃい、ってご挨拶しないと、駄目よ?」
「でも、」
「いや!」
それが可愛くて、もう少しで行くのを辞めるって言い出しそうだったけど、我に返って、頑張って出掛けるデュークさんだ。
「お前たちに、お土産を持って来るかな?我慢して父の帰りを待つんだぞ?」
「おみやげ?」
「わかった!」
そのキラキラした小さな瞳に見送られて、王様は出掛けたんだ。
バンビー地方は山深いらしい。
謹慎してる場所なんだから、交通の便は不便になってしまう。
どんな父親でも、やっぱり父だろうね。
私が殺したんだ。
私は行けない。
ジャック兄ちゃんは食品研究所に行きだした。
マサとの相性も良いみたいで、安心だ。
それに、お漬物の臭いが軽減されれば、ピクニックに持っていけるようになる。
本当にルミナスの民は、初めてのモノには警戒心満載だ。
特に臭いには五月蝿い。
そう言われて意識してみると、ルミナスの食べ物でも結構臭いものがあるんだけど、慣れているせいか平気で食べてる。
チーズとか、魚の燻製だとか、あ、あの魚の酢漬けもだ。
あっちの方が臭いよね。
この臭さってのは慣れなんだと思うんだ。
その内に慣らしていこう。
絶対に、慣れてもらおう。




