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146 あなざーさいど27

事件が起きる。

ポポロは多忙。





その知らせは、突然やってきました。


「本当ですか!」


駆け込んできた軍の兵士の言葉に、陛下の前ではあったのですが、そう大声で尋ねてしまいました。

急いで掛けたのでしょう。

彼の身なりは砂埃にまみれ、顔も汚れたままでした。

それでも、あの地方とは電話が繋がっていないので、仕方がありません。

バンビーの人達も繋げて欲しいでしょうけれども、繋ぐための資金がないのでしょうね。

電話を置きたい者が工事費を負担する。

そう決まっていますので。 


あ、話が逸れてます。


「もう一度、繰り返して下さい」

「はい、バンビー地方で蟄居しておられました亡きリチャードの息子、カツジー様が、何者かに殺害されました!」


陛下の声は落ち着いた声でした。


「確かなんだな?」

「はい」

「何時頃のことだ?」

「2日前の事です」


陛下は思わず、顔を曇らせます。

カツジー様は、陛下の叔父のリチャードの長男。

王位継承権はありますが、現実的には継ぐ事は無かったでしょう。

この段階では、殺される理由がわかりません。


「アンリ、調べろ」

「はい、至急、調べさせます」

「頼んだ」


この手の調査はアンリ殿の得意分野だ。

スタッカード家が独自に持っている組織の優秀さは、私も何度も感じている。

正確な調べが行われるだろう。


しかし…。

私には、嫌な感じがしてならないんですよ。

何故、今になってなのだろうか?


「うーん」

「どうした、ポポロ?」

「陛下、拙いことになるかもしれません」

「おまえも、そう思うか?」


同じことを考えていたようだ。


「はい、残された子供の内、一番王座に近かったのがカツジー様。まぁ、王になる事は難しかったでしょうが、それでも王位継承者には間違いありませんからね」


おそらく本人もなる気など無かっただろう。

そんな気持ちがあるならば、とっくに動き出している筈だ。

陛下が、苦々しく言われた。


「民はどう見るだろうか?」

「おそらくは、内輪の揉め事と見るのではないかと思います。が、今回の件に陛下が関わっているという噂が流れると、面倒なことになりかねません」

「まったくだな。今頃になって…。まぁいい」

「は、」

「ポポロ、この件、できる限り穏便にすませろ」

「はい」


まったくだ。

このタイミングを狙ったものの仕業だろか。

やっと国が落ち着きかけてきたのに、一体誰が?

誰が特をすると言うのか?


私の考えでも、答えは出てこなかった。

犯人もわからないままで、時間だけが過ぎていった。




ところが、だ。

その半月後のことだ。



またもや、バンビー地方からの使者が、火急の用で城を訪れたのだ。

そして、その内容は、だ。


「なんだって?」


陛下が聞き直す程の内容だった。


「はい、繰り返します。リチャードの次男、デイファ様が蟄居先で亡くなりました」

「バンビーだったな?」

「はい、」

「カツジに続いてか…」


まったく、どうなっているんでしょうか?

王位継承権はありますが、ディファ様が王になることないのに、です。

そして、どうして、今になって、殺されたのでしょうか?


使者が去った後の会見の間に、重い空気が流れます。


これで、リチャードの遺児は1人だけとなりました。

この事に、なにか意味があるのでしょうか?

私達は何かを見落としているのでしょうか?

色々な可能性を考えている内に、陛下も私も、そしてアンリ殿も、無言のままで、そこにおりました。


「ポポロ、カツジの事件も結局解決してなかったな?」

「はい、その通りです」

「理由がわからないな…」


陛下の顔が、苦々しくなります。


「アンリ、おまえの調べは、何処まで進んだ?」

「先日もご報告した通り、カツジ様、ディファ様のお2人は蟄居先の生活にも馴染まれて、もはや城に戻ることなど望んでないようでした。地元の者とも交流を持ち、デイファ様にいたっては、あの地方の特産物であった絹の量産に尽力を尽くしていたようです」

「そうか…、やはり理由がない、か…」

「ただ、珍しい人物がバンビーを訪れております」

「誰だ?」

「ドリエール殿の娘です」

「…」

「ドリエール殿が亡くなり、血の繋がった兄弟に会ってみたいと思ったらしく、僅かな供を連れて滞在中です」

「あの娘がな…」


そして、陛下は決断なさいました。


「一度、訪れる必要があるな?」

「そうなりますね」


そうなると、議会にも通さなくてはいけません。

ルミナスの王が動くのです。

少し時間が掛かります。


「手配いたしますか?」

「そうしてくれ」

「畏まりました」


急がねばならない、そう思えて仕方がありません。

早足で出て行こうとする私を、陛下が止めました。


「ポポロ」

「はい?」

「すまないが、バンビーとの電話を繋いでおいてくれ」

「急ぎですか?」

「ああ、滞在がどれだけ掛かるかわからないからな。俺が行くまでに間に合うか?」

「間に合わせましょう」


私は急いで部屋に戻しました。


する事は山済みで、そして、全てが緊急を要しているのです。



しかし、電話を繋ぐって…。

費用はどれだけ掛かるのでしょうか…。

これも、王の命です。

やらなくてはいけません。


ああ、この間陳情に来ていた地下のケーブル網を利用した電話回線の普及の話です。

あれを直ぐに検討させましょう。

これで、なんとかなるでしょう、きっと。





とにかく、これ以上、リチャードの影を残しておくわけにはいきません。

あの影に振り回される事は終わりにしなくては。


セーラ様もアリス様もおいでるのです。

デューク様のお血筋が、このルミナスを継ぐのは当たり前の事ですから。

このまま、穏便になるように、動かないと。

そうしないと、陛下が手を下したかのような噂が流れ可能性が出て来ます。


それはなんとしても、防ぎたいところからね。






しかし、問題は次々にやってくるんですね。





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