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エイミィに相談したら、この服は拙いからと、急いで町に出て、それなりの服を用意してくれた。

しかも、古着だ。

エイミィのする事も、抜かりが無いな。

さすが、ジョゼが仕込んだだけのことがある。


「どうかしら?」

「お似合いですよ。ただ、」

「なあに?」

「着古しの物でも、オーラは隠せません。長居は無理かもしれません」

「そう…」


デュークさんの苦笑いしてる。


「エイミィ、長居しないようにしよう」

「はい、お願いいたします」


デュークさんにも小言を言えるまでになったんだよ。


あ、ジョゼは準備してたのかな?

私が不自由しないように、って…。

感謝しないと、いけないよね。






私とデュークさんは、町の皆と似たような服装をして、隊長と少しの護衛で町に出た。






この町は、小さな町だ。

ルミナスみたいに貴族が住んでる町とは違うから、ちょっと入り組んでいる。


けれども、みんなが働くから、いろんな店がある。


「あっちに行ってみない?」

「いいぞ」

「うん!」


久々に足が出るスカートをはいた。

もちろん膝下だけど、それでも、デュークさんは、いい顔をしなかった。

けどね、外に出たら、仕方ないって顔になったんだよ。


だって、女子全員が足出してるもん。


私はデュークさんと腕を組んで歩いた。

念願のデートを満喫するんだ!

一緒に歩いてるだけで、嬉しい。


みんなは少し離れた位置で護衛してくれてる。



行き交う人達は10人程度。

今は平日の昼間だから、大体仕事してる時間だものね。


店といっても、城下街のように立派ではない店が多い。

普通の家の軒先で、なんか売ってるって感じ。

まだ、町が出来たばかりだから、仕方ないよね。

それでも、私は充分に楽しいんだ。


「ねぇ、あれ、なんの店かな?」

「うん?そうだな、見てみるか?」

「そうしようよ」


私達は、1件の店というよりも作業場みたいな店に入る。


「いらっしゃい」


お婆さんが店番してる。

優しそうなお婆さんだ。

その前のテーブルには、木で出来た食器類が置いてある。

なんか、可愛い。

スプーンも大中小があるんだよ。


「ねぇ、可愛いね?」

「そうだな、セーラに丁度いい大きさだな?」


デュークさんは小さいスプーンを手にしてる。


「これ、お土産にするか?」

「いいね、きっと喜ぶよ。だって、銀の奴より口当たりが温かいもの」

「なるほど、じゃ、アリスにもだな?」

「そうそう、同じものあげないと、喧嘩になるからね」


お婆ちゃんがニコヤカに話しかけてきた。


「お譲ちゃんへのお土産かい?」

「そうなの。いい子でお留守番してるから、ね?」

「そうかい。きっと喜ぶよ。家の爺さんが作ったスプーンはね、丈夫だからね」

「奥で作っているのか?」

「そうですよ」

「見てもいいか?」


なんだ?

そんなに興味があるのか?


「いいですよ、けど、頑固者の爺さんですから、気を悪くしないで下さいね」


デュークさんは少し奥に入っていく。

私もついて行った。


お爺さんが黙々と木を削っている。


「失礼する」

「…」


ちらっと、目をくれて、後は仕事に戻った。


「すまない、これを売ってくれないか?」


と、デュークさんが指差したのは、小さい机と椅子が2つ。

まるでセーラとアリスのために作ったのかと思うくらいに、サイズが丁度良さそうだった。

その椅子は丸くて背もたれも付いていて、座り心地が良さそうだ。

机も一木から削りだしたみたいで、しっかりとしている。

何よりも、このお爺さんの仕事がしっかりとしていて、心地良いんだ。


お爺さんは、チラっと見て、即答した。


「駄目だ」

「売り物ではないのか?」

「ああ、売らん」

「残念だな」

「…」


頑固者と偏屈者の会話は短いね。


「すみません、それは、孫のために、この爺さんが作ったんですよ。今日、その子達が遊びに来るもんですから…」

「こちらこそ、ごめんなさい。ちょうど娘達に良い大きさだったから、ね、そうでしょ?」

「無理を言った」

「デュークさん、スプーンとフォーク、家族分買って帰ろう?家族でお揃いだよ?」

「俺の分もあるのか?」

「うん、あるよ。だから、そうしようよ?」

「わかった」


満更でもないお顔です。

妻は安心しました。


「なら、その子供のスプーンとフォークをよこせ」


なんと、爺さんが横取りか?


「え?」

「なんて名だ?」

「セーラとアリスだ」

「わかった」


爺さんはあっという間に、子供達の名前を彫ってくれた。

その素朴さが、堪らなく良い!


「すまないな」

「いいんだ、こっちも、悪かったから…」

「いや、孫のための机だ。きっと喜ぶぞ」

「そうだと、いいがな」


お婆さんが紙袋に詰めてくれた。

エミィはちゃんと小銭も用意してくれたから、支払いもスムーズだ。


そこへ。


「ジー様!」

「ばー様!」


丁度セーラと同じ年頃の子供が2人、飛び込んできた。


「まぁ、カイルにカミラ。早かったね?」

「つくえは?」

「つくえ!」

「あそこだよ」


子供ってのはどこでも一緒だ。

もう机と椅子の所にいって座ってる。

本当に、この子達の為に作られたんだな。

だって、ピッタリだもの。


「お義母さん、あ、お客さん?すみません」

「いえ、もう出ますから」

「ありがとうございました」

「良い買い物ができて、嬉しいわ。ありがとう」


と、お嫁さんらしい人が私の顔を見て、不思議そうにした。

えっと、早めに出よう。


「行こう?」

「ああ」


私達は店を後にした。

紙袋はデュークさんが持った。

私はデュークさんの腕に手を掛けてる。


「あの机…」

「うん?気になるの?」

「良い仕事のものは、欲しくなるな。執務室の机を作って貰いたいくらいだ」

「凄く気に入ったんだ?」

「ああ、」

「じゃ、スプーンを使ってみて、使い心地が良ければ、頼んでみたら?」

「スプーンと机だぞ?全然別だ」

「でも、作ってる人は同じだから、大丈夫よ」

「そんなものか?」

「うん、そんなもん」


デュークさんが笑う。

笑うと少し皺が出来るんだ。


「カナコが言うんだ、そうなんだろう」

「なに、それ?」

「気にするな」


それから、ノドが乾いたので、ジュースを買って、歩きながら飲んだ。

お洒落なお店は無かったけれど、どの店も素朴で実用的で、好ましかったんだ。


「陛下…」


隊長が側に来た。


「周りの者達が、気づき始めました。御戻りを」

「そうか、わかった」

「そうね…、けど、楽しかった」

「宜しゅうございました」


馬車が、側に止まった。

私達は乗り込んで、宿泊している屋敷に戻った。





次の日の公務を終えて、私達は城に戻った。





これで、米の生産のめどが立った。

ああ、炊き立ての白いご飯。


梅干と海苔、昆布と海苔。

天むす、も、好きだよ。

卵かけご飯も…。






やっぱり生卵は、厳禁だよね?

ヤバイよね?

いや、誰かに試食を続けてもらい観察するって手もあるな…。




いや、諦めよう…。

娘達が真似したら、さすがに拙いもの。












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