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子供の名前は、セーラに決めた。

デュークさんと2人で考えたんだ。


王族の慣習は聞いていた。

だから、禁止されてた仕草で、お願いした。


「私が育てたいの。セーラを私から離さないでね?」

「わかっている。3人で家族なんだからな」

「うん、ありがとう」

「けど、無理はするな?いいか?」

「はい」


だから、セーラと一緒にいられる。

嬉しい。



が、だ。



赤ん坊って、良く泣くね。

頭フラフラだよ。

3時間置きの目覚まし攻撃は、辛い。


かといって、乳母すら置きたくなかったんだ。


日本史の読みすぎかもしれないけど、誰かに任せて、娘を取られたら嫌なんだ。

大体、ジョゼが手伝ってくれるだけでも、普通のお母さん達から見たら贅沢な話だよ。

夜寝ないでオッパイあげるなんて、当たり前だもん。

やれないと、母親失格だよね?


夜、セーラが泣いて、デュークさんを起こしちゃいけないんだけど、3人、同じ部屋にいるんだ。

横にセーラのベットを置いて、泣いたら直ぐに世話をするようにしてる。

デュークさんが眠れてないんじゃないかって、不安になる。

寝不足の王様なんて、聞いたことがないでしょ?

3人で寝てるから、全然気が休まらない。


悪循環なのは、気づいてる。

こんな事、ずっと続けていけば、デュークさんだってバテてしまうよね。


どうしたらいいのか、わからないよ。



私の表情は暗くなっていったらしい。

朝食の時も、目が死んでるかもしれないのは、わかっていたんだ。


「カナコ?」

「うん?」

「寝不足だな?」

「うん…ごめん」


デュークさんは、笑ってる。


「この所、ボーっとしてる」

「ごめんなさい。セーラに掛かりっきりで、デュークさんだけを見てられない…。それに、デュークさんだって、寝不足になるよね?」

「俺は大丈夫だ。夜は音が気にならないようにしてるからな」


魔法か?


「いいの?それで大丈夫なの?」

「ああ、大丈夫だ。完全に消えるわけじゃない」

「なら、安心した」

「いいか、カナコ?時々は、ジョゼに頼むことだ。ジョゼにとっても、身内の子供みたいなもんだ、だろう?」

「わかってるよ」


デュークさんは手を握ってくれた。


「今日は、後で、執務室に顔を出せ?いいな?」

「けど、セーラはまだあんまり外に出せないよ?」

「ハイディは、そろそろ大丈夫だって言ったぞ?」

「あ、うん…」


そうだよ、私はセーラを人に預けるのが怖いんだ。

この未熟な母親振りがバレるのが嫌なんだよ。


軽い口づけの後で、デュークさんは嬉しそうに言うんだ。


「さあ、セーラのご機嫌は如何かな?」


セーラはベビーベットの中で、スヤスヤとお眠り中だ。

このベットは爺が作ってくれた。

ありがたいなぁ。


綺麗な赤ん坊だと言われているセーラは、緑の髪に紫紺の瞳をしている。


「セーラ?父だぞ?」


そう言って、セーラのマシュマロみたいな頬を突く。

もうすでに、メロメロだ。


「いいか、おまえは嫁になど行かなくてもいいからな?」

「…、デュークさん…」


親馬鹿だ。

日々、親馬鹿度が進化していってる。


私は、不安が進んでる。


この世界にもミルクはあるんだ。

母乳じゃなきゃいけないことはない。

だから、時々は、デュークさんと2人の時間が作れる筈なんだ。


けど、やっぱり私はセーラを人に預けられない。

本当は王族なんだから、もっとうまく人を使えればいいんだけど、出来てない。


「カナコ、後でヴィクトリア殿がくる。セーラを預けて執務室に来い。いいな?」

「お母様が来るの?じゃ、いけないよ?」

「いいんだ。来るんだぞ?」

「う、うん…」


私のところまで戻ってきて、キスしてくれた。

ちょっと深いんだ。


そして、またセーラの所に行き、ひとしきり彼女の頬っぺたを堪能したデュークさんは、切ない顔で仕事に向った。

後ろ髪を引かれているんだね、きっと。






セーラにお昼のオッパイを飲ませ終ったころ、お母様が来たんだ。


「フィー?」

「お母様…」


言われていたのに、戸惑っている。

ちゃんと子育て出来てるか、不安になるんだ。


「どうしたの?」

「どうしたの、じゃありません。孫の顔を見に来たいのは、当然でしょ?」

「うん、そうだね…」


そう言って、私の手を取ってくれる。


「さぁ、セーラのことは私に任せて。あなたは、陛下の所に行きなさい」

「けど…」

「母のことも信用できないの?」

「そうじゃないの、違うの」

「じゃ、どうしたの?」

「セーラが泣いたら、迷惑かかるでしょ?五月蝿いでしょ?」

「フィー?」

「だって、泣かせるなんて、母親失格じゃない?」


そうなんだ、そう言われるの怖いんだ。

だって、セーラはルミナスの王女だから、ちゃんと育てないといけない。

私は生まれがややこしくて、デュークさんみたいに王族の躾を受けていないもの。


あ、涙がこぼれた。

そんな私の涙をハンカチで拭って、お母様がそっと抱いてくれた。


「フィー、赤ん坊が泣くのは、それが仕事だからよ。あなただって、一杯泣いてきたわ。当たり前のことよ」

「そうなの?」

「そうよ。さぁ、いいから、私に任せて。陛下に甘えてらっしゃい」


顔が赤くなるじゃん。


「まぁ…」


そんな私に、お母様は優しい。


「フィー、大丈夫。あなたは頑張っているわ。みんな知ってるわよ。だから、ご褒美なの。いい?」

「ほんと?」

「ええ、そうなの」


やっぱり、お母様は凄い。


「ジョゼさん?」

「はい」

「フィーを陛下のところへ」

「畏まりました」


ジョゼがニッコリ微笑んで、私の手を取った。


「さぁ、参りましょう。セーラ様のことはヴィクトリア様と私にお任せくだいね?」

「いいの?」

「いいんですよ」

「わかった。お母様、ジョゼ、セーラのこと、お願いします」


そうやって、私はジョゼに連れられて、デュークさんの執務室に入る。


「陛下、妃殿下をお連れしました」

「ああ、ありがとう」


ここにはアンリ兄様がいた。


「アンリ兄様?」

「フィー、報告は済んだから、陛下はお暇になったぞ」

「けど…」


ニッコリ笑って、アンリ兄様とジョゼが部屋を出た。

2人きりになっちゃった。

久し振りかもしれない。


「カナコ?」

「うん…」


デュークさんが、心配そうに覗き込んだ。


「おいで」


私は側にいった。

デュークさんの大きな手が私の手を包む。


「今から、丘の上に行こう」

「けど、セーラが…」

「大丈夫だ。ヴィクトリア殿が全てやってくれる。俺達は、のんびりした方がいい」

「でも…」

「さぁ、行こう」

「きゃ!」


急にデュークさんに抱きかかえられてしまった。

なんか、これも、久し振りだ。


「デュークさんの匂い、だ」


犬だな、って言われそうだ。


「カナコの香りもするぞ?」

「私の?どんな香りなの?」

「いい香りだ」

「本当?」

「俺が嘘を言ったことがあるか?」

「うーん、ない」


本当は一度ある。

リリさんだった時。まだ、デュークさんに心を開いていなかった時。

私が寝ている時に、襲ったって、嘘ついたんだ。






けど、なかったことにしてあげる。

私って、優しいでしょう?





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