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ジョゼから聞かされるリリさん像は、私の想像を超えていた。




リリさんは基本気だるい。

気だるいって言い方は、かなりの上方修正だそうだ。


要は常にやる気がないんだそうだ。


なんか勿体無いよね?

こんなに綺麗な顔をしていい体をしてやる気がないなんて。

まぁ、むやみやたらに元気でも困るだろうけど。

何が不満なんだ?

行き遅れた30過ぎの女には理解できないよ。


そして侍女にも愛想がないんだとか。 


「しかしながら、それは王族としてはある意味当然の事です」

「当然?」

「ええ、仕える者に対して常に同じ態度で接する事は、基本です。愛想がなくてもそれが日常となれば仕える者達は罰せられません」

「そうっか」

「選択肢があるときでも、ないと思ってくださいね」

「?わからないわ?」 

「美味しくなくても美味しい。熱くても丁度いい。そのくらいの事は言わねばなりません」 

「どうして?」

「対応した者が罰を受けます」

「そうなんだ…」


いろいろと面倒くさい生活だよね。

だから愛想がないのか…。

リリさんも面倒くさがり屋?

ならばやっと、共通点を見つけたよ。


そして、ジョゼはもっと不思議なことを次々にいう。


「けれども、物事を拒むのではなく必ず受け入れる方です」

「もっとわからなくなったわ?」

「誘われればどこへでも行かれる方でした」  

「どこへでも?」

「夜の舞踏会、昼の観劇、などです。賑やかで華やかな場所がお好きだと言うことです」


弱ったぞ。

真逆じゃん?どちらかというと引きこもりなんだよ、私は。

だいたい日本でもそんな場所行ったこともないし興味もない。

大画面のテレビで見ればいいじゃんか?


あ、ルミナスにはテレビが無かったなぁ。


「苦手なんだよね、そういう場所…」


困ってくると地がでるよ。

まだ、2日目だ。許してくれよ。


「カナコ様はそのようですね?」

「行かないと駄目なの?」

「駄目な訳ではありません。体調不良という事で乗り切りましょう」


ジョゼ、素敵よぉ!


「賛成させてください」

「はい、ではそのように」


私達は苦笑い。


「けどさ、奥さんが出歩いてばかりで、デュークさんは不安じゃないんだ?寛大だね?」

「そ、それは…」

「うん?」


ジョゼ、言葉に詰まる。

うん????どうした?


「陛下はリリフィーヌ様のしたい事には反対なさいません」

「え?尻に敷かれてるの?」

「尻に敷かれる、とは?」

「あー」


こんなとき面倒になるよ。本当に。


「そうだね、いうがままされるがまま、決して抵抗しない。相手に支配されている関係かな?」

「なるほど、尻に敷かれる…。そうですね、まさに、尻に敷かれておりました」


断言、キター!


「なんだ、デュークさん、ベタ惚れかぁ」


ジョゼなんか聞きたそうだったけど、私、質問タイム打ち切りますよ?


「まぁ、男が惚れてる方が上手く行くこと多いらしいからね、微笑ましいんじゃない?」


そんな恋愛なんて体験したことも無いくせに、知ったかぶりするんです。

見栄ですよ、どうせ…。


「そうですね、微笑ましいかもしれません。近頃では少しずつ距離を詰めてらっしゃいましたから」

「デュークさん、頑張ったんだ?」

「それはもう、涙ぐましいご努力でしたから」


涙ぐましい努力…。やれば出来るんじゃないか!

なんだ可愛いところもあるんだね。

私、ちょっとだけ、見直したよ。


「じゃリリさんのまとめ。リリさん、16歳はアルホート国の第4子。お兄さんは皇太子と。えっと、デュークさんとはいつ結婚したの?」

「半年前です」

「ふーん、新婚だね。で、常にやる気はないんだけど、遊びに行くのは大好き。これって、チヤホヤされるのが好きってこと?」

「えー、」


ジョゼ、詰まらないで!


「え?私、何か変なこといった?」

「いえ、リリフィーヌ様のお姿と声でそのような言葉を聞くと、いえ、戸惑います」

「そっか、そうだよね?ごめんなさい」


また、ジョゼが固まる。

私、なんか、した?


「謝らないでください!王妃は絶対に非を認めてはいけません」

「そう?」

「王家が間違えたという事になります。それはこの国の根底を否定することにもの繋がるのです」


そんな大事にしないでよ…。


「あ…、ではこのような時、リリさんはどうしてたの?」

「軽く微笑んで、そう、と」

「こう?…、そう?」


ジョゼは安堵してる。

私も安堵だよ。


「宜しゅうございます」

「ありがとう、ジョゼ」


やれば出来る、私は出来る子。

自分に呪文みたいに繰り返して言うんだ。

その内に本当になる、に、違いない。


「とにかく、リリフィーヌ様はお若くてお綺麗な方です。ご身分も申し分ない。チヤホヤされるのが好きと言うよりも、それ以外の人間関係の築き方をご存じないと言った方が正しいかもしれません」

「そう、まだ幼いのね?」

「その通りでございます」


デュークさんの惚れた弱みに付け込んで好き放題してるリリさん。

私の認識は合っているでしょうか?




合ってるよね?




やがて、昼。



昼食は本当に、スープだけしか来なかった。


「このスープをゆっくりと、時間を掛けてお召し上がりになりました」


お皿持って飲み干せば、30秒もかかりません。

しかもヌルい。

熱々で出さないんですかね?その方が美味しいですよ?


「ゆっくりって、どの程度かしら?」

「ゆっくりです」

「はぁ…」


美味しくいないよね、こんな食べ方。

けど頑張ってみた。


「美味しかったわ、下げてくださる?」

「畏まりました」


ジョゼの満足そうな顔が嬉しい。



ご褒美はフランスパン…て言うのかな?、まぁいいや、フランスパンと豆の煮物。

後、甘酸っぱい飲み物。

野菜が足りない気がするが、おいおい出るだろうな。


いつかはやりたい食生活改善。



あれ、調味料って、基本は塩と胡椒、バター、なのか?

コンソメはあるんだろうな。

けど、醤油、味噌、昆布だし、鰹だし…、ないんだな?

覚えてないよ、作り方…。





こんなことなら、サバイバルの基本でも習いに行けばよかったなぁ。

後悔しても、レシピなし…。





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