表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/192

107

魔法が飛び交っている。





五月蝿いほどの爆音。

叫び声、罵声、断末魔の絶叫。


血なまぐさい臭い。

訳の判らない異臭。

慣れていないと、吐き気がする。






急な話だが、私は今、デュークさんと一緒に魔物征伐に来ている。

場所はルミナスの南東。


私の魔物征伐も20回を越えた。

慣れたもんだ。

征伐用に、アリに頼んで服も作ってもらった。

皮で出来てるジャケットにズボンとブーツだ。

厚めの皮だから、怪我しにくいんだ。  






それに、今回の討伐は計画されて行われている。

ジャック兄ちゃんの説が正しいかの証明なんだ。


「討伐が盛んに行われている地域では、強い魔物は出難い」


仮に魔物が出たとしても、魔量の少ない人間でも簡単に倒せる程度の魔物しかでなくなる、って説。


私達の丘の家の辺りがそうなる。

あの辺は本当に魔物が出にくかった。


ただ、目的はそれ以外にもあったんだ。


私的にも、この地域が魔物が出にくくなることを望んでいる。

このルミナスでも温かい地域。

1年を通じて、温かい。

川が3本も流れていて、水が豊富だ。

雨も程よく降る。




この征伐は、ご飯のため。

そう、米だ。

私は、米の為に、田んぼの為に、頑張る。






「カナコ、今だ!」

「わかった!」


皆が魔物を1ヵ所に纏めてくれる。

デュークさんの掛け声に、反応して、そこに私が特大の炎を落とす。




ボボボボーーーーーーン!





辺り一面、焼けた。


「相変わらずだな」

「終った?」

「終った」


一緒に来ている人達が声を掛けてくれるよ。


「さすが、カナコ様です」

「安心して、お任せできますよ」


計画的な魔物征伐の時は大体10人程度のグループで行う。

私も慣れてきたのか、前みたいに眠たくなることも少なくなった。

私と協力して魔法を出すデュークさんも、前みたいに苦しそうなことが少なくなったんだ。


「ありがとう。まだいけそうだよ?」

「凄い…」


デュークさんは苦笑い。


「無理はしない約束だ」

「そうだった」


地上からでは全貌が見えない。

状況を把握したい。


「見に行く?」

「そうだな」


デュークさんが私を抱き上げる。

いつもの光景になりつつあるので、皆平然としてくれる。


私達の体が浮き上がって、高さ10メートル程で止まる。


まるでデュークさんの魔法の様に見えるが、私の魔法だ。

本当は1人でもいいんだけど、何かあったらどうするって、怒るんだ。


「見事に、全滅したな」

「そうだね、今日は早く終った」


300メートル四方に渡る焦げ跡。

魔物は一匹もいない。


「これって、肥料になるかな?」

「どうだろうな、けど、なるんじゃないか?」


こんな状況でも、やはりルミナスの景色は綺麗だ。

今日は一段と緑が美しい。


「ここに作るのか?」

「そうしたい」




田んぼだよ。

米だよ。




見つけてきたのは、ガナッシュのハイヒット商会だった。


そこも温かい気候の場所で、田んぼって概念よりは原始的な感じで米が作られていたらしい。

前々から、私がお願いして珍しいものがあったら取りあえず送ってもらっていたんだけど、まさかね。


精製前の玄米を見たときは、感動のあまり、そのまま食べそうになった。


実はちょっと齧ってみた。

不味かったから、やめた。


やっぱり精米して、ご飯にしないと、と思った。

なんかのドラマで見たように、瓶に入れて、棒で突いて、白米にして、テッドに鍋で炊いてもらった。


「初めチョロチョロ、中パッパ、赤子泣いてもフタ取るな」

「なんですか?」

「あのね、言い伝え。米で大切なのは火加減と、吹き零れてもフタを取っちゃ駄目ってこと」


テッドは不思議そうに笑う。


「カナコ様のいた国は、不思議な国ですな?」

「そう?」


そう言ってるうちに、蒸らしも完了して、出来上がる。

テッドがよそってくれた。

一口、食べる。


ご飯だ、白いご飯だ。

どこか、糠臭いけど、間違いなく、ご飯なんだ。


「美味しい…」


涙が出た。

懐かしさが込み上げてきた。

日本人なんだんだよな…。


「そんなに、懐かしいですか?」

「うん、毎日、これを食べて、おかずを食べていたの。もうルミナスで生まれて15年も経ったのに、ご飯が、忘れられなかったんだ」

「それは、良かったですな」


テッドも食べたけど、何も味が付いていないご飯は美味しくないみたいだった。

残りは、当然、塩結びにして、食べた。

ああ、最高。

これは、テッドにも好評だった。


しかし、海苔がないとは…。

海苔の養殖には海がいるな?

デュークさん曰く、ルミナスの土地は王家の所有が50%を越えるから好きなところで何でもできるとのこと。

海はどうなんだろうか?

いや、それよりも、海苔は受け入れるのか?




話を米に戻そうっと。


デュークさんには米を理解してもらえなかった。

白米をみせても、怪訝そうな顔をるすしね。

最後には食べればわかるから、と押し切った。

テッド力作の、塩結びと枝豆ご飯のお結びを出した。


直ぐに、米作りは王様の許可がでました。

シンプルなものは割と受け入れられるんだ。



そうやって私は、米を定期的に輸入し、ガナッシュから栽培方法を指導してくれる人材を確保するところまでこぎつけた。

まぁ、実際に動いたのは、ハイヒット商会なんだけどね。


次は、田んぼの場所の確保だ。


そこで、魔物征伐になったんだ。

何度も繰り返して征伐を行うことで、魔物が小物になっていく説の証明を兼ねての征伐なので、データを取る学院の人間がいつもいる。

その説が正しいと証明されれば、ここで働く人も募集しやすくなるからね。

頑張って、魔物征伐、しますよ。



人は、地下の人達が移住するのを募る予定だ。

上手くいくか不安だけど、アンリ兄様のところが協力してくれるから大丈夫だろ。

地下の人でも、穏健派はいるからさ。






けど、生産には、5年はくらいは掛かるよね。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ