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マリ姉ちゃんは、次の日に来た。
そりゃ、いつでも良いって言ったけど、そんなに直ぐにこなくてもいいんじゃんか?
そうだろう、姉ちゃん?
けど、涼しい顔で新婚さんは言う。
「あら、毎日でもいいって言ったのは、陛下よ?」
「そうだけど…」
「フィーはいやなの?」
「ううん!嬉しいよ?」
嬉しいに決まってるよ。
知ってるだろう、私にはそんなに友達がいないことをさ。
しかし、マリ姉ちゃんと2人きりって久しぶりだ。
仕事の話なんかしない。
恋バナだよ、恋バナ。
「でで??マリ姉ちゃん??」
「何よ?」
「カルロスさん、優しい?」
顔、赤くなったよ。
ようよう…。
「もちろん、よ」
「キスなんか、したの?それ以上も、ね?」
「言わない!」
したな、してるな…。
てか、当たり前だな、新婚だもの。
「した、したって顔してる」
「フィー…、意地悪ね?」
あ、怒った。
早々に謝っておこう。
「ごめんなさい、けど、」
「いいわよ、結婚したんだもの、当たり前じゃない」
あ、開き直った。
「ねえ?」
「なに?」
「キスって素敵ね…」
そうです、その通りですよ。
恋する乙女同盟にようこそ!
「うん、素敵…だよ?」
目がハートですよ。
いいじゃないですか、恋する乙女は最強ですから。
「マリ姉ちゃん、カルロスさんって、どんな人?」
「そうね、優しくて、スマートで、誠実な人」
「そっか…、マリ姉ちゃん、運命の人が現れてよかったね?」
「運命?そう、カルロスは私の運命の人だわ」
「うん」
よかったね、待っていた運命の人が現れて。
あ、私達、学園は中退です。
私達には学歴なんて必要ないから。
実践で腕磨いて参ります。
私達は喋り続けた。
「けどね、カルロスも大変だったのよ。お父様に試験みたいに試されていたんだから」
「え?試験?」
「言葉は悪いけど、そういう事になるわ」
カルロス義兄様はお父様の出した試験を受けたんだって。
「それで、ガナッシュに店を出したの?」
「そう」
「で、カルロスさんは合格したんだ?」
「満点らしいわよ、アンリ兄様の話によるとね」
「凄いね?」
「だって、カルロスですもの。当然よ」
惚気をありがとう。
けど、ガナッシュって、いうと、え?
「じゃ、ガナッシュが彼女を引き取ったのは…」
「アンリ兄様とカルロスがガナッシュを説得したから、よ」
「凄いね…、ってか、私のため?」
え?やっぱり、私のために動いてくれたの?
「そうよ、フィーが陛下と結婚するためよ」
デュークさんと結婚するって、そういうことか…。
ポポロのあの安堵した顔が浮かんでくる。
私達のために、だよね。
申し訳ない。
「そうなんだ、私、幸せだね」
「そうね、フィーは王妃になるんだからね」
王妃って、そんな柄じゃないけど。
「やっぱり、へんな気分…」
「変?」
「だって、王妃になったらこんな感じで喋っちゃだめでしょ?」
「そりゃ、そうよ。相応しい話し方があるわよ」
「できるかな…」
「大丈夫よ」
「そう?」
「陛下が隣にいるじゃない、大丈夫よ」
「そうだね、きっと、大丈夫だよね」
こんな風に会う事も減るのかなぁ?
いや、仕事があるよ、会えるよ。
そうだった、今日は仕事の話で会ってるんだった。
「豆腐、どうしようっか?」
「そうそう、トーフなんだけど、いきなり販売って訳にはいかないと思うのよ?」
「そうだね、やっぱり、大豆だもんね」
家畜の餌ってのが、プライドの高いルミナスの人間には合わない。
私もそう思う。
「お父様に相談したら、ね。それじゃレストランを作ればいいんじゃないかって仰るの」
なるほど、慣れてもらって、そこから販売か。
いいな。
「あ、それ、いい。マリ姉ちゃん、レストランじゃなくて、カフェがいいよ!」
「カフェ?」
あ、ここには、無かったか?
「えーと、軽食を出すところ。だって、単価が安いほうが、豆腐にチャレンジしやすいじゃない?」
「そうよね…。ねぇ、カフェってニホンの言葉?」
「そう、若い女の子はカフェでお茶したりランチ食べたりするんだ」
「ねぇ、その文化、ルミナスでも流行らせない?」
「じゃさ、お店の内装は女の子が好きなもので埋め尽くそうよ?」
「フィー、いいじゃない?可愛いもので一杯の店、素敵だわ」
「マリ姉ちゃんの得意分野だよ、マリ姉ちゃんのセンスは最高だもの」
「そう?」
「もちろん!」
乙女の会話はどんどん続く。
「テーブルと椅子は最高級のものを使いたいわね?」
「座り心地のいいものが、いい」
「そうね、イメージはどうする?」
「春の花祭りって感じかな?」
「最初はそれが、いいかもね」
お姉ちゃん、2号店も視野にいれましたか?
「料理なんだけど、豆腐を使っていろんな事出来るんだ。ヘルシーで美容にいいを前面に押し出すのは、どう?」
「ヘルシー?」
「健康的ってこと。沢山食べても、あまり太らないってイメージがある言葉」
「いいわね、それって、心をくすぐるわ」
「なんか、楽しいね?」
「本当ね」
それから、私達は喋り続けた。
途中から、ジョゼも参加して、お店のコンセプトを考えたんだ。
「それじゃ、今週中に企画書を作ってくるわ。フィー、あなたも見てね?」
「わかった」
ジョゼの紅茶で、ノドを潤す。
「マリーさん、楽しみです。お店が出来たら、私、ザックと伺いますわ」
「まぁ、素敵。ジョゼさん、仲が良いんですね?」
「そうですか?まぁ、子供がいないせいでしょうか。良く一緒に行きますよ」
「いいなぁ、」
「あら、フィーはいつも一緒じゃない?」
「一緒だけど、お出かけはないから」
「そうね、」
「まぁ、陛下とカナコ様が出かけるとなると、警備が大変ですからね」
「大変な立場ね?」
「仕方ないよ。それでも側にいたいんだから…」
マリ姉ちゃん、なに、その、顔?
「さらっと、惚気たわ、ジョゼさん?」
「いつもの事です。慣れますよ?」
「まぁ、ご馳走様」
あら、ごめんなさい。
これで、打ち合わせという名のお喋り会は終了した。




