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それからしばらくした、天気の良い日のこと。




新婚のマリ姉ちゃんが来た。

当然、カルロスさんと一緒だ。

今回はアンリ兄様とお父様も一緒さ。

すっかり、次期スタッカード公爵としての振る舞いが板についてきた兄様だ。


「陛下、ご無沙汰しております」

「ハイヒット殿。元気そうだな?」

「ええ、婿殿がしっかりしてくれてますので、安心です」

「そうか」


カルロス義兄様は、穏やかな人だ。

昔、アンリ兄様を助けたことがあるそうで、それ以来2人の間には絆があるらしい。


さてさて、肝心の話は、これからですよ。


「では、皆様。お食事の時間です」

「フィーが張り切ってるな?」

「ええ、アンリ兄様。私の夢ですからね」

「わかったよ」


皆で食堂に向った。


 

豆腐だよ、豆腐。



マサは家庭用のミキサーを、あっという間に完成させた。

昔設計をやっていたら、作れるってレベルじゃないだろうけど、マサは完成させたんだ。

なんでも、昔にルミナスで作ったことがあって、今回はその改良で済ませたらしい。


さあ、ジョゼが運んでくれる。

マリ姉ちゃんが皿の中を見ていう。


「綺麗ね?」

「でしょう?」


白いトーフはお洒落な感じに盛り付けられている。

そこに黄緑色のオリーブオイルと荒塩。


「トーフ自体には味がないの。けど、素材の甘みは出てると思うんだけどね」

「俺も初めて見るぞ?」


なんでか、不満げに言うデュークさんだ。


「陛下には、ちゃんとしたものを出さないといけなかったからよ。その為に、ずっと準備してきたんだから」


だって、デュークさん、初めてのモノには慎重でしょ?

王様だからしかたないけど。


だから、私はテッドと2人で色々と試作を行ってきた。

あ、試食係りのジョゼもいたよ。


今では柔らかい豆腐は2種類、固い豆腐は焼き豆腐を入れて3種類作れるようになった。


今日は、固めの豆腐にオリーブオイルと塩をかけたものと、柔らかい豆腐に黒蜜ソースでデザートに仕立てたものを出す。

お揚げはまだ試作も出来てない。無念だ。


「けど、大豆だろ?」


アンリ兄様、そんなに嫌そうな顔しないで。


「私のいた日本では大豆は好まれて食されてたのよ?安心して」

「じゃ、頂いてみるか」


お父様、恐る恐るなのは何故?

大胆なのはマリ姉ちゃん。


「本当に肌にいいんでしょうね?」

「うん」


多分…。

凄い、ためらうことなく、口に入れた。


「うん!美味しい!もうちょっと塩が強くてもいいかも」

「滑らかだな?」

「少しチーズの食感に似ているような?」

「そうなの、塩で漬ければ味も似てくるかもしれないよ」


麹って、どうやったら手に入るんだろう?マサに聞こう。

次に、デザートだ。


「ソースに合ってるわ」

「うん、これはさっきと違って柔らかいな?」

「これは女性には受けるわよ」

「でしょ?」


良かった。

テッドも喜ぶに違いない。

毎日、温度やら、固める時間やらを研究してくれたのは、テッドだもの。


で、その試作をジョゼは嬉しそうに食べていた。

そういえば、ジョゼの肌が綺麗になった気がする…。

口から出まかせでもなかったな。


「で、フィー様、」


カルロス兄様は、私のことをそう呼ぶようにしたみたいだ。


「これを生産したい、と?」

「そうなの。このトーフを切って油で揚げたものを油揚げっていってね、野菜と煮たり、焼いたりすると美味しいの。そういったものも作って欲しくって」

「フィーがやればいいのに?」

「マリ姉ちゃん、それじゃ時間がないもの。私、もっと色々と食べたい物があるから、試作だけで、時間が一杯よ?」

「フィーは本当に食いしん坊だな…」


そんなお父様の言葉に反応するのは、…、デュークさん。


「そうなんだ。初めて会った時も、腹の音をさせてお腹が減ったと怒ってた」


おいおい、何年前のことだ?生まれ変わる前の事じゃないか…。


「ちょっと!」

「いいじゃないか、本当のことだ」

「そんな昔のこと、今言わなくてもいいじゃない?」


マリ姉ちゃん、そのキラキラした瞳はなんでしょう?


「それって?リリフィーヌ様のときですか?」

「そうだ。リリと同じ顔の筈なのに、カナコはカナコだったんだ」


なんだよ、それ?

言っただろう、そんな禅問答みたいなこと言うなって…。


「わかります」


え?アンリ兄様???


「そうだろう?」

「ええ、フィーはカナコ様なんだなぁ、と、思います」

「分かってくれて、嬉しい。大体、カナコが分かってないんだからな」

「陛下、カナコ様ですよ?」

「そうだな、そこが、カナコなんだよな…」

「まったく…」


そこの2人、誰もついてってませんよ?


「もう、それよりも、豆腐の話です!」

「そうでした」

「量産するにあたっての不安があるの」

「なんでしょうか?」

「豆腐はね、もの凄く水を使うの。作るときも、保存するときも。水の確保ってどうなんだろうって、」

「どの程度の水が、要りますか?」

「綺麗で美味しければ美味しいほど、豆腐も美味しくなる」

「そうですか…」

「カルロス義兄様、なんとかなりそう?」


考え込んでいる。

そうだよね、これだけに時間を割けないよね。


「ねぇ、私にやらせて?」

「マリー?」

「だって、カルロスは覚えなきゃいけないことだらけでしょ?それに肌にいいんだったら、女性がやった方がいいじゃない?」

「けれどね…」


マリ姉ちゃん、女性実業家目指しますか?


「お父様、いいでしょう?」

「そうだな、フィーもマリーの方が話し易いだろ」


やったね!

お父様も大胆だ。


「では、マリーの下にも何人かつけることにしよう」


楽しみだ。


「じゃ、時々、打ち合わせに丘の上に行くことにするわね」

「うん!」


という感じで、試食会は無事に終了です。






って、姉ちゃん…。







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