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後期型ペンギン 受領

 第二作戦群用に、Ⅳ号戦車が十二台到着した。四個小隊分の戦車だ。常に物資が欠乏している国防軍にしては、大奮発の分野に入るだろう。

 これらは、履帯が外され、転輪も外され、水密処理されて、エンジンを船舶用のエンジンに換装される。

 外された履帯や転輪は上面装甲に溶接されて、追加装甲になる。エンジンやリーフスプリングは兵站部に返却される。苦戦を続ける東部戦線では、部品は常に欠乏しているのだ。


 機体がペンギンに仕上がるまでは一週間程度と、整備士長のブルーノ・アウフシュナイター曹長が言っていた。

 貴重な実戦経験を積んだペンギン乗りとして、報告書を入院中のバウマン大尉との連署で提出したのだが、そのミーティングの席でペンギンの整備の責任者と話すことが出来たのだった。

「正直に言わせてもらいますと、ペンギンがここまでやるとは思いませんでした」

 メモや資料をかき集めながら、ブルーノ・アウフシュナイター曹長が言う。整備士らしく、彼からはグリースの匂いがした。

「私たちも、そう思っていたよ」

 運が良かったというのもあるが、代用兵器のわりにはペンギンは良く戦った。効果も上げた。だが、抜本的な解決にはならないような気がしないでもない。

 制空権を奪い返し、制海権を取り戻す。制空権さえ確保できれば、優秀な大型艦艇やポケット戦艦はあるのだ。ただ、今の状況では生かす場面がないだけなのだ。

 口には出さないが「無理だろうな」という思いはある。

 東部戦線の兵士の防寒着すらまともに遅れないのが独国だ。兵士が、ばたばたと凍死しているのに……だ。

 この時期に、五十隻もの物資満載の輸送船を十五隻の護衛艦隊にエスコートさせる余裕があるのが米国だ。英国も、我々との殴り合いで疲れ切っているが、その背後には有り余る物資を持つ米国がいる。

 ペンギンを何機投入しようと、Uボートが何隻海底に潜もうと、Sボートが勇敢にもウナギ(魚雷の事)を抱えて突撃しようと、結果は見えている。

 ブルーノ・アウフシュナイター曹長と目が合った。彼もまた、私と同じことを考えているのがわかった。

「やれることを、やるしかない。そうだろ? うん?」

 私が言った。整備士長は、「そうですね」とつぶやいて、ミーティングルームから出て行ったのだった。 

 P作戦第二群が座学でペンギンの戦術を学んでいる間、先行して仕上げられた四台は、P-07、P-08、P-03、P-04の番号を割り当てられ、我々の機体となった。

 新しい『幸運の七番』。見慣れた七十五ミリ砲ではなく、ずんぐりとした百五ミリ砲が何だか違和感がある。

 この機体で訓練を始める。我々に続く者が一人でも多く生き残れるよう、何度でも納得のいくまでテストを繰り返してやるつもりだった。 


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