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ロストックへの帰還

 最後にランデブー地点に到着したのは、私のP-07だった。

 どのペンギンも傷だらけの凹みだらけで、一機としてまともな外見を保っている機体はない。

 フレッチャー級駆逐艦ジャスティス号、グリーブス級駆逐艦ブラック号とリヴァー号、それにカタリナ一機を向こうに回して奮闘したP-08の損傷は大きく、砲身が裂けて砲撃不能の状態だった。

 艇長のバウマン大尉は飛んできた破片で左目の眼尻からこめかみにかけて裂傷を負い、ひょっとしたら視力に影響がでるかもしれないらしい。

 P-08の機銃手ギュンター・ブッシュバウム一等兵も破片の直撃を受け、右腕を骨折していた。

 シュルツェンの在り方は考え直さなければならないかもしれない。

 私も、バルチュ伍長も、一歩間違えたら破片で大怪我をしていたところだった。

 

 『乳牛』から燃料を補給する。

 砲弾の補給は受けなかった。砲手のクラッセン軍曹が、砲のスリーブに亀裂を発見したのだった。

 このまま砲撃を続ければ、砲撃のショックを受け止める役目をするスリーブが破損し、砲身が破裂してしまうらしい。

 キューポラもなくなってしまい、寒気がそのままペンギン内に流れ込む状態になっているし、我々には修理が必要だった。

 重大な損傷を受けた場合、ロストックの基地に帰投することが許可されているので、『トロールの投石』作戦に参加したペンギンは帰投することになった。

 P-09を除いて。


 ラジオを使った暗号文では、修理が終わったP-10が諾海周辺の哨戒任務に復帰するらしいので、それと入れ替わりになるようだ。

 フィヨルドを出て、フェロー諸島に向かう『乳牛』に、カエル宛のメモを託す。

 重大な損傷を受けたので、ロストックに帰投すること。

 修復不可能な損傷を受け、乗員が全員死亡したP-09は、交戦規定に従い自沈したこと。

 この二点を伝えてもらうためだ。

 カエルは、この情報を海軍情報部に送るだろう。その後の事は、上の連中が考えればいい。

 エンジンに損傷を受けたP-03に速度を合わせて、諾海をゆく。P-07も、逆流防止弁ごと煙突吹っ飛ばされたので、波をかぶりたくないので、速度は出せない。

 応急処置で、排気口の周囲を板で囲い、隙間にボロ布を詰めて臨時の煙突にしたが、心もとない感じだ。

 

 靄と闇が我々を隠してくれる。今が極夜の季節なのがありがたい。スパイの目に注意して、フィヨルドから距離をとりつつ、ロストックに向かう。

 諾国、丁国、典国の三つの国に囲まれたスカゲラク海峡に差し掛かったら、どこかの入江に隠れ、また夜中にヨーロッパ北端スケーエン岬を回り、丁国側の海岸線を辿りながら、ロストックに帰投することにしよう。

 『幸運亭』で、久しぶりに風呂に入ることが出来る。

 女将の作る素朴な家庭料理が懐かしい。

 我々は、ペンギンという劣悪な居住環境に耐え、緊張を強いられる任務につき、不可能に近い戦力差の敵と戦った。

 我々は傷つき、疲れ果てている。

 休息が必要だった。

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