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襲撃地点を選定

 HX-577輸送船団は、一度補給のために氷国に寄港する。そこから、北太平洋と別れを告げ、諾海に入る。

 氷国には英国の航空基地が敷設されており、航続距離ギリギリまで空からエスコートがつく。

 天候が悪ければ航空機の支援はないが、このあたりの海域は悪天候が多いとはいえ、偶然の要因が強く、作戦には組み込むことはできない。

 航空支援ありきで考えなければならないだろう。氷国の航空部隊は、Uボート殺しのフェアリー・ソードフィッシュ哨戒機。その航続距離を超えたあたりが、我々の襲撃ポイントになる。

 船団に随伴する飛行艇が、交代で偵察に出てくるだろう。案外これが厄介で、ペンギンの利点である発見しにくさが潰されてしまう。

 米国の護衛艦隊は、艦艇不足にあえぐ英国と違い、合計十五隻という数で、ハント級駆逐艦以上の火力と、最新鋭の技術がある。

 足りないのは大西洋における実戦での経験だけなのだが、それを十分カバーできる物量と装備なのだ。

 若いP-03、04、09の艇長がここに到着する前に作戦を立てなければならない。バウマンと私は、海図とコンパスをつかって、ソードフィッシュの航続距離、船団の進路予測などを書き込んでゆく。

 敵駆逐艦の性能も、頭に叩き込む。

 ボフォース四十ミリ機関砲がどうにも気に入らない。交戦規定に定める五百メートルという適正攻撃距離は改めなくてはならないかもしれない。

 そのあたりも考慮に入れて作戦を練る。

 我々がどこで襲撃をかけるかによって、Uボートの布陣も決まる。

 カエルの話によると、既に五十隻余りに討ち減らされた貴重なUボートのうち、五隻を派遣するそうだ。Uボート戦術でのし上がったデーニッツ司令官にとって、まだUボートは有意義であるということをアピールするための好機なのだ。戦隊全体の10%の投入は、その期待の大きさの表れだろう。

 我々の予測進路は、氷国を出たら諾海を抜けバレンツ海に入り、コラ半島を回って白海に入るコースだ。

 諾国は連合国寄りの中立国だが、英国が海上封鎖をすると脅した経緯もあり、反発を感じている者も多い。常に露国の侵略の脅威にさらされていたことで、露国と独国が噛みあっているのを歓迎する向きもある。

 つまり、独国のスパイが入り込みやすい環境があるのだ。

 ゆえに諾国から大きく離れたコースを取るだろう。すると、我々が採るべき待ち伏せポイントは、バレンツ海にある無人の孤島ベア島がベストということになる。

 十年前には炭鉱があったが、今は無人島になっている。隠れ潜むにはいいポイントだ。

 ペンギンの快速をもってすれば、輸送船団がバレンツ海のどこを通ろうと、2時間以内に襲撃できる。

 しかも、露国からも遠く、英国からも遠い。ベア島に最も近い芬国も典国も諾国も中立国であり、輸送船団を守ることはない。露国領まで、唯一航空機の支援が届かないポイントが、ここなのだ。

 Uボート部隊との連絡役もつとめるカエルを交えて、作戦の確認をする。

 意外な事に、カエルはこのあたりの海域に詳しく、一般的な航路についての補足も行ってくれた。

 謎多きカエルは、商船乗りか遠洋漁師だったのかもしれない。

 

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