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幸運の七番

 火力をとっても機動力の観点からも、フラワー級コルベット艦ではペンギンは止められない。

 まだ、砲の数が多い分、ハント級護衛駆逐艦の方が勝機はあった。

 ダウントン号は、Uボートの攻撃を阻止しようと焦るあまり判断ミスを犯した。ウィステアリア号単独で我々に対抗させようとした事。これが間違いだった。

 Uボートの牽制だけなら、フラワー級コルベット艦でも出来る。Uボートが雷撃戦を挑む場合、浮上するのが定石なのだから。

 Uボートを潜航さえ、爆雷を数発落とすだけ、だいぶ時間は稼げる。

 Uボートの潜航中の速度は五ノットも出ない。輸送船団が距離を稼ぐことは出来る。

 ウィステアリア号は、P-07に周囲をぐるりと回られて、万遍なく砲弾を叩き込まれた。必死に旋回し、主砲の射撃角度に捕えようと操船していたが、十六ノットの鈍足では、五十ノットのペンギンにはかなわない。

 後甲板には機関砲しかペンギンに対抗する武装が無く、榴弾で艦上構造を狙い撃ちされて破壊されると、もうなす術がないのだ。

 ウィステアリア号から黒煙が噴き出し、火災が発生したのがわかった。すでに戦闘継続継続能力はないと、私は判断した。

「駆逐艦を追跡! 背中を蹴りつけろ」

 Uボートに向かって走るダウントン号を追う。喫水線上の穴を応急処置しながらの航行なので、速度はせいぜい二十ノット。あっという間に、交戦規定に定める五百メートルにまで我々は接近した。

 あとは、P-08のように、駆逐艦の鼻面を引き回せばいい。

 丸裸になった輸送船団は、Uボートが片付けてくれるだろう。


 この日、十時四十七分に開始されたP-07と08の戦闘は十二時十五分に終結した。P-08はハント級護衛駆逐艦を引き剥がすことに成功し、喫水線上に五発の直撃弾、榴弾による艦上構造の破壊で爆雷投射機と後甲板のQF4ポンドMk.ⅩⅥ二連装砲を大破させ使用不能に追い込んだ。

 P-07は、フラワー級コルベット艦二隻を中破させ、キャッスル級コルベット艦を大破させた。結局キャッスル級コルベット艦ダラム号は、曳航の途中で浸水が止まらなくなり、自沈する事となった。ハント級護衛駆逐艦ダウントン号は喫水線下に四発の直撃弾と操舵装置に直撃弾を受け、これも修理を余儀なくされた。

 武装商船オンズロー号も、火災と浸水により、曳航途中で自沈することになったらしい。

 Uボート風にスコアをつけるなら、P-07は二千トン分の艦船を仕留めたということになるのだろうか。まぁ、撃沈は我々に任務ではないのだが。

 とにかく、これで最新鋭の護衛駆逐艦二隻が修理と再艤装が余儀なくされ数ヶ月戦線を離れる事になる。

 それだけUボートが生き残る可能性が増えるというわけだ。

 そのUボートだが、今回共同作戦を行った二隻により、輸送船団二十隻のうち十四隻撃沈という近頃では珍しく華々しい成果を上げることが出来、劣勢を強いられていたUボートの大西洋艦隊も溜飲を下げた事だろう。

 輸送船団は露国への輸送を断念し、氷国に引き返した。

 P-07と08の初陣は、信じられないほどの成果を上げた。これには、様々な幸運が重なっていて、カエルを通じて新鮮な情報が入手出来た事、天候が航空機を飛ばすのに向かない天候だったこと、たまたま待機中のUボートと連携がとれたこと、米国の輸送船団だったのでUボート慣れしておらずパニックに陥ったこと、鳴りを潜めたUボートをなめきった船団がフェロー諸島沖を通ったことなどだ。

 このことがあって、P-07には「幸運の七番」という仇名がついたのだった。

 

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