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フラワー級コルベット艦との再戦

 Uボートに対抗するために作られた駆逐艦が、ハント級護衛駆逐艦だ。

 排水量はおよそ千トン。全長は九十メートル前後。主砲は前甲板と後甲板に二連装のQF4ポンドMk.ⅩⅥ砲。その他、QF2ポンドMk.Ⅷ四連装対空砲が一基。エリコン二十ミリ機関砲が二門。爆雷投射機が二基。艦尾には爆雷投下軌条は一基が装備されている。

 まさにUボートと戦うために作られた艦艇だ。

 発信する電波の位置を測定するHF/DF、浮上しているUボートを発見する短波レーダー、米国から技術供与されたQCアクティブソナー、こうした最新技術で武装された新しい駆逐艦が、我々の相手なのだ。


 不意に、連装二十ミリFlak C/30機関砲の発射音が響いた。

 P-08が攻撃を開始したらしい。

 七十五ミリKwK L/48戦車砲を使わないのは、最大の効果をベストのタイミングで発揮させるため。機関砲は、駆逐艦に対する挑発だ。

 ハント級護衛駆逐艦の最大船速はおよそ二十八ノット。

 P-08は、それに近い速度で千メートルの距離を保ちつつ、のらりくらりと機関砲で嫌がらせをするつもりだ。

 そして、輸送船団から、駆逐艦を引き離す。十分に引き離したところで、砲撃戦に持ち込む算段だろう。

 P-07は息を潜めるようにして、波間に浮かんでいる。短波レーダーにも運よく探知されないままこの場に留まっていて、輸送船団の到着を待ち受けている。

 この海域のどこかにUー122とU-130の二隻のUボートが隠れているはずだが、まだ現れない。我々が護衛艦たちを叩くのを待っているのだ。


 霧の中から、輸送船団のフラッグシップ、武装商船のオンズロー号が現れた。前甲板に五十口径4インチ砲の露天砲台を備え付け、両舷にエリコンSS二十ミリ機関砲を2門づつ置いた千二百トンクラスの船だった。

 並行するようにして航行しているのは、フラワー級コルベット艦ダリア号。三列縦隊で艦隊行動をとる輸送船団の左側にはフラワー級コルベット艦ウィステアリア号。船団の陰に隠れて見えないが、フラワー級コルベット艦の欠点である航行能力の低さと武装の貧弱さを改善させたキャッスル級コルベット艦ダラム号が航行しているはずだ。

 P-07と彼らの距離はおよそ千五百メートル。

 あと五百メートル接近したら、行動を開始するつもりだ。

 遠くで、砲声が聞こえる。耳に慣れた七十五ミリKwK L/48戦車砲の鋭い砲声。P-08が砲撃を開始したのだ。

「エンジン始動。総員戦闘準備」

 私は命令を下した。機銃手のエーミール・バルチュ伍長が、鉄兜を被りながら、操縦手横のハッチから外に出る。

 ダイムラーベンツ二十気筒ディーゼルエンジンMB501が唸りを上げ、ちっぽけなペンギンの煙突から黒煙が上がる。

 砲弾架に砲弾が置かれ、操縦手のコンラート・ベーア曹長が、首を左右に振って肩の力を抜いている。

「目標、ダリア号。砲手、狙いが付き次第撃て」


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