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私の考え

 戦車乗りたちが海軍に向けてくる敵意は、実は私はそれほど気にならない。操縦手のコンラート・ベーア曹長は、いきり立っていたが、私には『海軍への愛』みたいなものが欠けているのかも知れなかった。

 海は好きだ。船も好きだ。祖国が好きだ。だから、海軍に志願した。志願した当初は、その熱意というか忠誠心みたいなものはあった気がする。

 では、いつ欠如してしまったのかと考えると、やはり、アネモネ号との交戦が転機みたいだ。

 夢の中に、何度も何度も米軍機による救命ボートへの卑劣な機銃射撃や、無力な輸送船に白旗を上げることすら許さなかったアネモネ号の執拗な砲撃が再現されて、酸のように私の精神を蝕んでいるかの様だった。

「報いを受けさせたい」

「償いたい」

それだけが私の原動力のようなもので、早く海に出て索敵し、発見し、襲撃し、痛めつけたいだけなのだ。

 だから、ペンギン内部での対立は煩わしいだけだった。敵を殺すのに必要ではないものは、全て煩わしい。


 私は、私の部下4人が何をやっても、最低限の干渉しかしなかった。

 砲手のディーター・クラッセン軍曹は生意気な口をきくが、別にいいと思っていた。

 装填手のクルト・バウムガルテン一等兵はペンギン部隊での最年少の兵士で、歴戦の勇者であるディーター・クラッセン軍曹に脅されてすっかり萎縮してしまっているが、砲弾を装填する手を休めなければどうでもいいと思っていた。

 操縦手のコンラート・ベーア曹長は、無謀な戦闘で部下を死なせた馬鹿な士官だと、私の陰口を叩いているようだが、私の指示通りペンギンを操作してくれればそれでいいと思っていた。

 機銃手のエーミール・バルチュ伍長は、機銃手が危険な役目だと理解して以来、すっかり気落ちしているが、指示に従い撃ってくれればそれでいいと思っていた。

 そんな私の放任とも無関心ともとれる部下への態度が、事件を引き起こしてしまったのだった。

 

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