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情報将校と武装親衛隊

 機関砲の銃座、機体の前後左右のシュルツェン兼アウトリガー、水密処置、Uボートでノウハウがある逆流防止弁のついた吸排気筒、これら、ペンギンが海に出るために必要な艤装は全て終わったようだった。

 そのうえで、機体のシルエットを隠す覆いがかけられ、特にペンギンのキモとなる『七十五ミリKwK L/48戦車砲』には、念入りな隠蔽の擬装が施されていた。

 駆逐艦や巡洋艦を叩けるだけの砲撃能力がある機体が、海上に出るかもしれないことを実戦に投入されるまで知られたくないからだ。

 モーリッツ・アーベライン大尉が、艤装と擬装の最終チェックに来ていた。彼は、この『ロストックP作戦基地』の警備と防諜を担当する将校で、対空陣地も彼の管轄になっている。

 もともとは情報将校だったらしく、諜報戦を得意とする英国とは何度も水面下で刃を交わしているという噂だ。いつも胃痛持ちのような難しい顔をしていて、背中は曲がり、黒髪にだいぶ白髪が混じっているので、年齢よりだいぶ老けて見える。

 これで、私より若いというのだから、驚きだ。我々のような普通の将兵には理解できない苦労が情報将校にはあるのだろう。

「ほら、『アドルフ殿』が参られましたぞ」

私の隣で、艤装と擬装の作業を見ていた『P-08』の艇長、バウマン大尉がおどけた口調で私に耳打ちする。

 見れば、P作戦を督戦に来ている、ちょび髭伍長総統閣下ご自慢の武装親衛隊のアルブレヒト・ホフマン中佐が、従卒のウド・ブフナー軍曹を従えてドックに入ってくるところだった。

 武装親衛隊所属の将校はたいてい鼻持ちならない輩が多くのだけれど、この中佐殿も例外ではない。二言目には「総統閣下が――」と、鼻を膨らませて言うので、彼の名前をもじって『アドルフ殿』という仇名が早速つけられたのだった。

 作業の邪魔と思ったのか、モーリッツ・アーベライン大尉が密かに舌打ちをした。『アドルフ殿』は、彼の頭痛の種の一つらしい。

 それでも、直立して敬礼をする。我々もそれに倣った。総統閣下を讃える言葉も口にした。それをしないと、アルブレヒト・ホフマン中佐の「忠誠心について」の訓話が始まってしまうので、実に面倒くさいのだ。

 染めているという噂の、プラチナブロンドの髪はきちっと整髪料で固められ、武装親衛隊の徽章と武勲を示す鉄十字勲章が皺ひとつない制服の胸にきらりと光っていた。

 毎日クリーニングをしているという噂だが、本当だろうか?

 

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