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超短編エッセイシリーズ【切り札】

作者: 西田大志

何故か分からないが昨夜は異常なほどに目が冴えていて、なかなか眠りにつけなかったのである。

その所為か、今朝は起きなければならない時間をとうに越して遅刻寸前に陥り、焦りまくった挙げ句に携帯電話を家に置いたまま出勤してしまった。

出勤途中、会社に連絡しなければならない用事を思い出し、衣服のポケットを叩いたのだが、それらしき触感を感じず、不思議に思った時が携帯電話を忘れたと自覚した時だった。

これでは会社に連絡できないと焦り、どうにかならんかと考えていたら目先に公衆電話ボックスがあった。

安堵に浸り、公衆電話に硬貨を投入しようと再びポケットを叩いたのだが、またそれらしき触感を感じなかった。財布も忘れたのだった。


今日の朝に電話をよこす約束だったろと、会社の上司から己が蒸し暑い説教を浴びている光景が容易に想像できた。


とりあえず公衆電話ボックスから脱出しようとした時、俺は不意に着ているジャケットのポケットに手を突っ込んだ訳だが、その際にカードらしきものの触感を感じたのである。

それがなんのカードなのかは実物を見るまでは想像もつかなかったが、遊戯王カードだった。


なんでこんなものがと、それをまたポケットに入れようとした時、俺はその手を止めた。

その理由は、会社に連絡する方法を思いついたからである。

俺は、その遊戯王カードを公衆電話のテレホンカード挿入口に差し込んだ。

それを公衆電話はペロッと飲み込み、一旦沈黙する。

きっと、『これってあれじゃん、遊戯王カードじゃん』って公衆電話も思った筈だ。


しかし、公衆電話は、俺が会社に連絡しなければ痛い目に遭う事を感じ取ってくれたのか、飲みこんだ遊戯王カードを吐き出そうとしない。

きっと考えているのだ。

やった試しはないが、もしかしたら遊戯王カードがテレホンカードの代わりになって電話できるんじゃないのかと。

俺も、宝くじの当選を祈るかのように公衆電話を応援した。

その後、10秒以上の沈黙を異音が破った。


ピピー、ピピー、ピピーと公衆電話は、遊戯王カードを吐き出してきた。

その姿は、まるで舌を出して罵倒するかのようだった。



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