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序章

初投稿+見切り発車です。いつ下げるかもしれません。

でも、できるだけ続いたらいいな。程度の気持ちで頑張って書きます。


 その遺跡には、願いを叶える古の秘宝が眠っている。

 その秘宝は、人々が営みを始める以前より存在せし神の遺物。

 神の御技に触れたくば、覚悟を持って挑むがよい。覚悟を持って進むがよい。

 さすれば奇跡も起ころうぞ。さすれば命も蘇ろう。

 しかし奇跡が起きたなら、もしも命を戻したら。

 大事なものが消えるだろう。

 

【序章】


 呼吸音が聞こえる。―吐き出される荒い息づかいは、何かを堪えているかのよう。―

水音が聞こえる。―極々浅い水溜りを踏んでいるのか、その音は止まない。―

何かを引き摺る音が聞こえる。―固くて重たい何か、いっそ不気味ささえ感じられる。―

入口が開く音が聞こえる。―長い事来客がなかったから、悲鳴のような声を上げながらゆっくりと入口は開いていく。―


 男は、遺跡の最深部へと辿り着いた。

 その部屋は、小さな公園ほどの広さがあった。公園ほどと言っても、視界を巡らせれば見渡せる程度のものである。

部屋の形は四角く、四隅に立っている柱には蔓が這い、床は白い煉瓦(れんが)で出来ていた。―もっとも、白い煉瓦とはいっても風化してひび割れ、少なくない苔に覆われたいたが。―また、部屋自体に灯りを灯すような物は無く、中央に(さかずき)のような形をした石造りのオブジェがあった。

オブジェの上には、柔らかそうな丸い球体が浮かび、光を放っていた。それは、その光はとても柔らかな鴇色(ときいろ)をしていた。

美しい、光景であった。


 しかし、男はその美しさなどには目もくれず、オブジェに向かって歩みを進めた。

装備は原形を留めておらず、度重なる戦いのせいで消耗し削れていた。結果、全身傷だらけ、満身創痍の重傷である。

仲間はいない。この遺跡は、彼一人で突破せねばならない理由があった。


「っ…」


 ずるずると、筋の切れた足を引き摺りながら。

ぼたぼたと、引き裂かれた(はらわた)から鮮血を流しながら。

ぜぇぜぇと、壊れかけた肺を震わせながら。

男は部屋の中央へと辿り着いた。


 オブジェの高さは、男の胸より少し低い程度。そこから数十センチ浮いたところに発光する球体がある。

近くで見ると分かるが、球体は薄紅梅色をした液体で、気泡が下から上へと昇っては消えていく。そして、その液体の中には胎児のように身を丸めた女性が収まっていた。

伏せられた目に生える睫毛は長く、量が多い。すっと通った鼻筋に、形の良い唇。声はきっと、小鳥がさえずるよりも可愛らしいもの聞かせてくれるだろう。

今は握りこまれた指も、ほっそりとしていて長く、爪の形まで整っているに違いない。そんな、期待を抱かせる容姿をしていた。

 だが、男はやはりそんな美しさには目もくれず、―もはや、目が見えていないだけかもしれないが―オブジェの前に膝まづき、震える声で言った。


「頼む…どうか、助けてくれっ!!」


心の底から願い、求める男の声が聞こえたのか。

球体の中、長いまどろみに沈んでいた女性の目が、開いた。


誤字・脱字歓迎です。

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