オレリアの花輪
オレリアの花輪を編んだなら、乙女に捧げるとよい。
「私と共に来てくれませんか。
暁に染まる海を越えて。
太陽が生まれる場所よりもっと先へ」
若者の囁きは蜜のように甘かった。
娘の心は喜びで満たされた。
しかし、娘は心のままに従うことが出来なかった。
若者の瞳に潮よりも濃い苦みが浮かんだ。
「そう答えると、思っていた」
若者は悲しそうに微笑んだ。
娘のあふれる涙を若者の長い指がぬぐった。
「だからこそ、貴女が愛しい」
銀髪の若者は両手で優しく娘の頬を包むと、そっと娘の額に口付けた。
オレリアの花輪を編んだなら、殿方に捧げるとよい。
処女王の墓から見たことのない花が咲いた。
花は年々増えて丘陵を覆った。
やがてその花は処女王の名で呼ばれるようになった。
オレリア。
人として生きることを選んだ貴女を、恨めしいとは思わない。
オレリア。
愛しい女よ。
神と人が同じ土を踏んでいた時代は去った。
神々は海の彼方、彼等が生まれた場所に帰ったと伝わる。
しかし島の住民は口をそろえて言う。
目に見えなくなっただけ。
いにしえの神々は今もこの島に居る、と。
「一つだけ我が儘を聞いて欲しい。神であるこの躯はここに留まれない。私の魂のかけらをここに置いていこう」
オレリアが咲いたなら、花輪を編むとよい。
さあ、その花輪で恋人のこうべを飾ってごらん。
オレリアは愛の証。
愛し合う二人を守って下さる。
島の者ならみんな知っているさ。
可憐な花。
銀色のオレリア。
オレリアの花輪で結ばれた二人を、神々が守って下さる。
潮風がなつかしい呼び声を運ぶ。
「オレリア」
読んで下さってありがとうございました。
いつかこの題材でもっと長いお話を書いてみたいです。




