まだ、真っ白だった
…え?
あたり一面なにもない。
上も下も横も真っ白な世界。
俺だけが取り残された世界。
そう、思うとゾッとした。
《ねぇ、きみはだぁれ?》
突然響いたその声。
舌足らずな口調に幼き声。
でも、姿はない。
《ねぇ、きみはだぁれ?》
「あ、あ…っ」
混乱と不安といっぱいで口がうまく回らない。喚くことも悲鳴を上げることも身体を動かすこともなにも出来ない。
なのに、頭は妙に冷静になってく。
《ねぇ、きみはだぁれ?》
「あ、ありさか…、れ…い」
ここはどこだ。
そして、この声は誰だ…?
それに答えるようにまた響く。
《ぼくはね、……だよ。》
──────────────────
「……ぃ、れい!」
急に現実に戻った気がした。
夢でも見てたのか、寝てたのか、なんて思うより引き戻されたって表現が正しいような気がした。
目の前には幼なじみが怒ったような心配したような…それをみて、あぁ、戻れたのかと心の底から安堵した。
「れい?」
さっきより心配そうにみてくる。
「なにもないよ、それより寝てたか?」
幼なじみは安心してそれから?を頭に乗せた。
質問の意図がわからなかったのだろう。
「俺は寝ていたのか?」
と、再度問えば
「寝ては、いなかったと思う。でも…どこが遠いところで意識が飛んでいった感じがした。」
「そ、か」
あれを夢だとすると最後の言葉は何だったのか。名前だけよく聞き取れなかった、まるで隠そうとするように。
「ねぇ、れい。」
「ん?なんだ?」
幼なじみは俺をみて、
「─急にいなくならないで」
そう言った。
俺は笑いながら
「いなくならないさ。……。」
何も知らずに。
裏切った。
有坂レイ
主人公 男 高校生2年
幼なじみ
? 女 高校生2年