違和感
降りてみると、スバル を含めての三人がリビングに座っていた。
「ほら、ホシ。早く座りなさい」
と、急かす、多分母。
「せっかくの休暇に親不孝なことをするな」
と、笑ながら言う、多分父。そして、
「どうした、やっぱ具合悪いか?」
と、スバル。
「いや、なんでもありませんよ」
「昔から変わらないはね、全く」
「あははは…」
と、笑って誤魔化す。
「なんかおかしいぞ、ホシ ?具合でも悪いのか?」
「そうなんだよ、朝からおかしいんだよ、ホシ が」
と、スバルと父が話す。
「い…いや〜、今、目〜覚めましたー!」
と、わざとらしく言う。
「そうか…あ、そうそう、こないださ〜、二等兵になったんだよね〜」
「…それ、昨日も聞いたわよ」
「そ、そうだっけ」
「もう、戦争の話は家でしないってー」
ストンッ!
「ー言ったわよね?」
と、スバルの座る位置に、先ほどから使ってるフォークが手前で刺さる。
「…すいません」
と、土下座。怖いことがわかる一面だった。逆らいたくない。
「で、『マーちゃん』は元気?」
「ま、マーちゃん!?」
と、不意の質問に言葉を失う。
(あいつ、そんなの書いてなかったぞ!)
と、有 を恨む。幸い、
「ああ、まだ ホシ にライバル視してるぞ」
と、助け舟が来たので助かった。
「もう、幼馴染だからってダメよ、いじめちゃ!彼女も立派な女の子なんだから」
と、特徴がわかった。
「わ、分かってるって!」
「や〜ね、何オロオロしてるのよ」
そりゃ、知らない、しかも女の子だからだよ!とは、口が裂けても言えない。
「…でね〜、お隣さんにまた家族が増えるそうよ」
「そーか、あちらも賑やかになりそうだね」
「……実はね、隠してたんだけど」
「ま、まさか、家族が」
「増えませ〜ん」
ズコーッ!!
と、僕とスバルは漫画のようにこける。まあ、座っているけども…
「本当、昔と変わらずジョークは上手いな〜、トモエは」
と、父は言う。
皆は笑う。
僕も笑う。
そう、こんな生活を待っていたのだ。
(……また来たわ、まだ一日も立っていないのに…)
(…仕方ない、なんとか倒してくぞ……これ以上死人を出すなよ!)
(…………)
(…大丈夫…ホシ?)
ふと、記憶が蘇る。この家族には見られないようにしてはいたが、何故か涙を流した。楽しい今があるのに、悲しくて、悲しくて…
(…大丈夫…ホシ?)
ああ、大丈夫なはずだ。だって、僕が願ったんだから…
…大丈夫?
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おかしい…
「ねえ、クロ は?」
「え、誰のこと?」
やはりおかしい。
「じゃあ、今日休暇取ってる10代のリスト、貸して」
「別にいいけど、どうしたの?そんな険しい顔するマナミ、初めて見るよ」
そうかな、と思いつつペラペラめくり…
「この子、誰?」
と、一人の名前を出す。
「え?いつも一緒にいてライバル視してる子じゃない。何、喧嘩したの?」
やはり、おかしい。この隊にいないはず。それに、この位置は…
「いいから、教えて」
と、問いただす。
「えっと、『赤坂 星輝』さんですが…」
不審に思う後輩を無視しつつ、何度も『赤坂 星輝』をリフレインする。そして、友であり、幼馴染であり、ライバルであった者の名を思い出す。この二つの名をリフレインして、絡み合う。
(黒江 有!貴様はどこにいる!!)
そして、
(赤坂、貴様は何者だ!)
もちろんライバルでも、まして幼馴染でもない、何者かの名を確認せねば…
「で、どこにいる?」
「え、これは個人情報なのでー」
「どこだ?」
「ですからー」
「どこだ?」
と、効果は等しい目力で圧倒する。
「じ、実家だと」
「じゃあ、その情報をを教えてくれ」
情報なしに突入するのは危険だ。
「さ、流石の マナミ さんでも、こればっかりはー」
「教えて」
「…はい」
情報はバッチリだ。あとは…
「貴様の正体を突き止めてやる!!」
「あの〜、仕事の方は?」
「大丈夫!有給とったから!」
と、張り切って行くことにした。期間は、クロ、改めて 赤坂 と同じ1ヶ月だ。それまでに確認しないと…
クロ、貴様はどこにいる?
その時の僕は、まさかこんなにも早くバレているとは、思っていなかった。