過去 -はじまり-
「......で、ここは?」
「はい、ここは『試練の間』です」
「なんか在り来たりな名前だな...」
と、僕と劣等生こと『有』は、『ワン』と名乗る人物と、とある世界『次元軸』と名乗る世界の近隣にいるらしいが......
「...でも、こんな何もない世界にしか見えないんだけど…てか、本当に移動したの?」
「はい、移動はしました、よ?」
「その『よ?』は信用できないな」
「ああ...」
「ちょ、ちょっと、お二人とも責める時は息が合いますね。もしかして、そういう趣味がー」
「「バカか!!」」
「...そうですよね、すいません......では、話を戻しますね。ここ『次元軸』は実際」
「「実際...」」
「実際、分からないこと続きです♡」
ここでアニメとかだと、ズコー!となるだろう。
「はあ?『分からない』だと?」
「はい、だって、ここの『管理者』、私どもは『管理員』、ですら把握出来てないので」
「あれ?その『管理者』が制作したんじゃ」
「ないんですよ、それが」
と、いきなり手を三回叩いた。すると、ホワイトボードらしきものが出てきた。これには目をむいてしまい、質問せずにはいられない。
「あの〜、この原理は?」
「へ?この原理...この原理っと......ああ、『ジェネレート・システム』の事ですね」
「「ジェネレート・システム?」」
「手を三回叩くこと、ですよね?」
と、不思議がる。
「そう、それ」
「それは俺らにもできるのか?」
すると、少し険しくなった。
「はい、多少の制限はありますが...」
「制限?その範囲は?」
すると、『通じるかな?』という表情で話した。
「範囲は、だいたいその人が出来るかもしれない寿命の範囲です。つまり、その人の一生で完成できるものしか出来ません。まあ、私どもは例外にいますが...」
「じゃあ、三回手を叩くのは?」
「あれは、一回目で制作完成図をインストール、二回目で作成・完成させ、三回目で転送するものです。なので、その間の間隔は、一秒でも一年でも、三回叩かないとリセットされません。それが、『ジェネレート・システム』です。ちなみに、『人を作る』やそれに類するものは制作出来ませんので悪しからず」
「長い説明どうも」
と、有は一秒間隔で三回叩いた。すると、拳銃が出てきた。
「あのさ、素材とかは?」
「大丈夫です。何処かしこの世界から拝借しているので」
「酷いな、ここは」
と、試しに僕に向かって、
タン!
「おお!いいね、この拳銃!」
「僕に当たったらどうするんだ!」
と、『ジェネレート・システム』で瞬時に出したデカい盾を持ちながら言った。実際頑丈そうな盾が少し窪んでいる
「まあ、当たっててもよかったんだけどな」
「なんだって!」
と、こちらも拳銃を出した。
「あ?やるのか?」
「ああ、ここで格の違いを教えとこうとね!」
「上等だ、ボケェ!」
「あっ、あの〜、だから喧嘩はー」
「「黙れ!システムの奴隷!!」」
......ピキッ!
「この馬鹿者がァァァ!」
あれ?これってデジャヴ?
ガシャン
......起きなさい
ふと、声がした。それは少女の清んだ声のように聞こ––––
「それはもういい!!」
バコッ!
「...で、本題に戻して、そのホワイトボードを何に使うの?」
と、コブのできた頭を摩りながら、質問した。
「はい、これから『管理員』や『管理者』、『制作者』について説明、したかったのにあなた達は」
「「...すんません」」
と、詫びた。
「では、まず『制作者』についてですが...」
と、ボードに【制作者】と書き、そこにまるまると囲った。
「…『制作者』は、事実誰一人として知らないのです。ただ、二人を除いては…」
と、ボードにその二人、【管理者】と【ワン】と書いた。そして、二人をまるまると囲い、矢印を引いた。
「…この『製作者』は、『剣城 策士』と言い、彼は物作りが得意で、作るものに関しては、右に出るものがいませんでした。ちなみに、『管理者』は、『次元 杜氏』といい、色々な不思議を探究する人でした」
と、【管理者】と【制作者】の文字を消し、【次元】と【剣城】と書き直した。
「そんな彼らが出会ったのは、大学の頃と聞いています。彼らは、よく放課後はイタズラをしては怒られ続きで、数えたらきりがないようです」
「…よく、退学にならなかったな」
「はい、イタズラの数よりも点数が上でしたから」
「…世界って」
「理不尽だ…」
この世界を見て、テンションが下がる一面を知ってしまった。
「まあまあ……でも、剣城さんは卒業後、行方不明になりました」
「「行方不明!?」」
在り来たりな平凡がいきなり消える一言だった。
「はい、彼は卒業式後、自宅に戻ることなく失踪しました。剣城さんと最後にあってた次元様はー」
「ちょ、ちょ待て!?今、次元『様』!?」
「はい、剣城様とのことはおいおい説明いたします……ポッ♡」
「おい、イラつくんだけど!」
と、恋する少女的な顔をするワンにイライラする俺と赤坂であった。
「オホン…で、次元様は、ただ他愛のない話をしたと答えたそうです」
そして、いきなり真剣な顔になって、
「そんな彼らが再会したのは、偶然ではありませんでした。いえ、偶然であるべきでした……」