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魔物(8)
はっきりと意識を取り戻す恵怜奈。
まだ死んでいない。
そう安心した瞬間、傷つけられた肩が猛烈に痛みだす。
痛みに耐えながら周りを見渡すとまだ化け物はいた。
唸り声で威嚇しながら
また一歩一歩恵怜奈の方に近づいていく。
まだ危険は去っていない。
必死で逃げようとするが
腰が抜けて思うように動けない恵怜奈。
「もう駄目…」
そう恵怜奈が覆った瞬間
闇を切り裂く閃光が化け物を打ち倒した。
「キミ名前は?」
何が起こったか良く分からない恵怜奈は
頭を抱えながら声のする方を恐る恐る見上げる。
第一印象は
夜風にたなびく金髪。
漆黒の闇の中でも力強く光り輝く金色の髪だった。
2発目の闇を切り裂く閃光が恵怜奈の頭の上を通過する。
恐ろしい唸り声をあげて倒れる化け物。
「Par ici, je vous prie, Mademoiselle」
金髪の持ち主は呪文の様な言葉を
恵怜奈に投げかける。
流れるような美しい言葉。
「お嬢様こちらへどうぞ」
金髪の持ち主は男の様だ。
しかもまだ若く恵怜奈と年もそう変わらない様子。