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犠牲者(19)
深々とお辞儀をした天馬署長がネディの横を通り過ぎる。
一瞬厳しい表情をした天馬署長は
恵怜奈に聞こえないようにネディに耳うちをした。
「一人占めはさせませんよ…ふふふ」
そう言い残し天馬署長は去っていった。
後味の悪い感覚がまだ恵怜奈の心に残っている。
ネディは恵怜奈の右手を引っ張った。
「遅刻するよ。行こう」
ネディに促され恵怜奈は歩き出す。
しかし天馬署長との出会いは恵怜奈の心に一点の影を残していた。
謎めいた言動と立ち振る舞いの天馬署長に少し恐怖を感じながら
恵怜奈はネディに手を引っ張られて歩いて行った。
穏やかな朝の通学路。
これから起こる大事件の前触れは何も感じさせず
今日も街は平和だった。




