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ファンタジー(9)
恵怜奈の大事な本が散乱している。
お気に入りのぬいぐるみの首が足元に転がっている。
涙が頬を伝って行く。
侵入者。
誰かが恵怜奈の寝ている間に侵入してきて
部屋を荒らしたのは間違いないようだった。
「どうしたの?」
母親が異変に気が付いて部屋に入ってきたが
部屋の惨状を見て絶句している。
「魔物が…魔物が…」
うわごとのようにつぶやく恵怜奈。
恐怖に取りつかれた表情。
身体の震えが止められない。
「魔物に狙われている…」
動揺しながらも娘を落ち着かせようとしている
母親の言葉も耳に入らず
恵怜奈は恐怖のどん底にいた。
「私は魔物に狙われている…」
魔物に襲われた首筋がまた焼けるように熱い。
戻りたい。
元の生活に戻りたいと切実に願う恵怜奈。
でももう戻れない。
もう絶対に平穏無事な普通の生活には戻れない。
「魔物がこの街に集結しつつあります」
ジネディーヌの言葉が頭によみがえってくる。




