第七話
あと一時間すれば昼時になるであろうかと、フォード学園の部室で私が思った頃、それは起こった。
けたたましいサイレンと共に、
「市街地にて、強奪事件発生しました、治安部員は出動してください。
繰り返します…」
放送部がそう放送を流す。
市内とはいえ、苗木町の管轄内のため出動要請が掛かったのだ。
「みんな、揃ったようだな。
この区域の初任務だ。
今回は地理は無いため、あちらの輸送車で現場に向かう。
では、気負わぬよう、各員、車両に乗りこめ!!」
他の部員が私に頷き、車に駆け込むと、イワトと一緒となり、この男が状況を確認するように私に聞いてきた。
「何でもマーケットにトラックが突っ込んで、金を巻き上げてるそうですのう」
「恐らく、モブと見て間違いない」
「そうは言いますが、普通の強盗という事はないんですかい?」
「いや、逆に考えにくい。
白昼堂々、警備員の通報もあったと言うのに、まだ、暴れまわっているのはおかしい」
すると最初の出動要請だからか、少し出動に手間取った返答がガトウから返って来た。
「急がせろ、足並みを揃える必要は無い」
「じゃあ、先に行って、指揮を取ってくれ」
ガトウの指示にイワトと、前にある車に乗ろうとしたのだが…。
「おわっ!?」
先に扉を開けて中に入ろうとしたイワトが先に驚いて、向かった私も驚いていた。
急がないといけないが気まずい空気が流れ、イワトは私を見て反応を待つのも無理はない。
そこには、オルナがいる。
「凄い格好だな?」
ローライズビキニに、まだ露出の高さが表現できないほどの姿で、だが、構わずオルナは言う。
「恥ずかしい格好だと思うか、私はそんな羞恥はとうの昔に捨てている」
その返答にイワトはさらに気まずくなったのだろう、あえて外を見るほどだった。
そんな中、ゼジから通信が入ったので、さすがに同姓として意見するが。
「そんな事より、敵を倒す事が先決だろう?」
『すみません、レフィーユさん、これも彼女なりに考えた戦い方なんです』
当の本人は構う事無く、ゼジも車両にある映像を通して謝ってしまう始末だった。
ため息をつきながら、こういうしかない。
「…それなら、状況を教えてくれ」
『はい、犯人グループは、今、逃げ出したところです。
心理的に見て、サイレンを聞いてようやく逃げ出したと思って見ても間違いないです』
「だろうな、主犯格はわかるか?」
『わかりません、この犯行ケースは計画性がなく、心理的に見て、これはモブの犯行と見て間違いはないです。
心理的にですが…』
その時、市街地を走っていく数名の人の姿があった。
その集団は意図的に自分達を見たのが感じてとれたのか、人を跳ね除けて逃げる姿に変わって行ったのが見え。
『心理的に圧迫を掛けましょう。
作戦としては、レフィーユさんは現場で指揮を…』
ここに現場を見てない人間の冷静さ、見ている人間の冷静さがあった。
「気に入らんな…」
『えっ』
「今、ここでモブと見られる、何が起きているのか、わかっているのか?」
『で、ですが、私は心理学に基づいて…』
途中で通信を切って、運転している生徒に『止めろ』と指示を出す。
だが、おそらく通信が交差したのか、その生徒は躊躇していた。
オルナが冷静に頷いていた。
「随分と手間取る方法を取るんだな?」
「成果より目の前で、胡散した相手が何を仕出かすかわからん連中に変わりないだろう?」
「ゼジの心理学は的確だ。
ああやって、逃げている連中に下手に刺激を与えてみろ。
それこそ何を仕出かすかわからないぞ?」
私は思わず睨みつけてしまうが、確かに言い分としては最もだったので黙り込んだ。
だが、私の中にあった違和感が膨れ上がる。
それは高い検挙率を誇る治安部として、相応しくない発言だと思ったからだ。
そんな中、車はどうやら、ゼジの判断に従って現場に向かう方を選んだようだ。
そして、オルナは後方の扉を開けて、未だに現場で暴れているモブの一人を見つけ。
「見ていろ…」
体重のコントロールをジャンプする力に変えて、大きく跳び上がった。
「何をする!?」
車体が反動で揺れ、私が前を確認する時には、もう殴り飛ばしたオルナの姿がさらにモブ達の目に付いたのか、そのビキニ姿にニヤつき。
それを致命的にする。
懐に潜り込んで腹部に全力の一撃、もう片方が何が起きたのか、わかった時には惨事が起きていた。
きわどい魅力を余す事無く晒すというのは、敵に防御本能すら働くのを遅らせ、威力をそのままに伝える手段。
まるで車にぶつかった様な飛び方を見せ、犯罪者とはいえ同情してしまうほどだった。
吐いた血が背中を軽く朱に染めた容姿の絶対的な強者が、この現場を支配していく。
「何をやっている、レフィーユ、倒すぞ?」
オルナの一言に不覚にも出遅れた自分がいた。
「すげえ…」
イワトも呟くだけだが、まだ違和感が拭えなかった。




