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第六十四話

 ムカイは倒された犯罪者たちを眺め、半ば呆れていた。


 「週一で、何のトレーニングも積まないで、ここまでの連携を見せるとは、普通出来ませんぜ?」


 「ふっ、多少の違いはあるが、オルナの戦いの方はアラバと似ているので、そこまでの時間は掛かりはしないさ。


 オルナから戦い方を学んだというのは、伊達ではないという事だ」


 ムカイが頷くと、すでにオルナが飛び掛っていた。


 「お、おわっ!!


 何をするんでっ!?」


 連撃にムカイは慌てて避けるのを、オルナは睨みながら言う。


 「何でこんな事をする!!


 お前もアイツの事を知っているんなら!!


 どうして評判が悪くなるような真似をする!!」


 『ビュン、ビュン』とおおよそ、一般人では放てない風をオルナは拳で放つ。


 「ち、ちょと、落ち着いてくださいせぃ!!」


 「これじゃ、いつまでたってもアイツは!!」


 オルナが踏み込む。


 「落ち着きなせえって…」


 だが、先にオルナの喉にムカイの日本刀が『トンッ』と当たった。


 「……」


 前にレフィーユに見せた居合い抜きを、オルナにも見せたのだ。


 「動く相手に刃物を押し当てるとはな」


 完全にタイミングが合っていた。


 ムカイ付加能力は『省略』。


 一つの動作を、文字通り省略させる。


 ムカイは居合い抜く構えから、抜き切る動作に省略(それ)を利用する。


 こ時間の概念はなく、その次の動作に自分自身の力を用いなければ、攻撃としては成り立たないが、


 それは虚と実。


 自身の攻撃も速く。


 本当に強い者は戦法がわかっていても、対処が出来ない。


 その事を地で行くので、おかげでオルナが黙って見せた。


 「確かにあっしのやっている事は、許されないですぜ。


 ですが、あっしの役目はあくまで偽者をやるですからね」


 「なるほど、あくまで偽者を演じる事で、ムカイ、お前は魔法使いの健在を図ったという事だな?」


 「じゃあ、お前は裁かれるのを承知で、こんな真似をしたって言うのか?」


 相変わらずオルナは感情が昂ぶったままで聞いてきたが、


 「あっしは、いつかは裁かれる人間でさ。


 アラバの兄さんが、その偽者を退治に現れるというのなら、好都合でございやしょう?


 …あっしだって、やめてほしくないですからね」


 そう言って、ムカイは日本刀を鞘にしまう様は明らかにアラバへの気遣いだったので、オルナはしぶしぶ感情を抑えるのに努める事にしていた。


 そうして場所を変える中、ムカイは聞いてきた。


 「…それで、ゼジさんは、どうしてるんで?」


 ムカイだけが、情報が入って来なかったのもあり、当然の質問をしてきた。


 「依然、否認している。


 というより、自分のエゴを貫き通している」


 「エゴ、自分の事しか考えてないという事ですかい。


 ですが、しでかしたヤツってのは、大概、そんなモンでしょう?」


 「だが、事の重要さを単純に収めてはならん。


 巻き込んだ規模で考えてほしい。


 この地域だけでない、世間だって巻き込んだ。


 自分を守るために、オルナを洗脳した。


 自分を正しく見せる為に、関与した者を操って自分の手駒にもした。


 今、世間ではこの事件を『いじめ』という形で扱われているが…。


 そのエゴ、自分自身を守る為に、ゼジが地域全体を巻き込んだというのなら…。


 単純に『いじめ』という問題で、済ませてはならん」


 するとレフィーユの指摘はオルナを表情を引き締まらせたが、ムカイが静かに言う。


 「アラバさん、戻って来るんですかね?」


 先ほどのオルナの問いが自然と三人を黙らせた。


 「思い出す度に思うんだけどさ。


私は覚えてなくて、アイツは二年間、覚えて生きて来たんだよな。


そう考えると一番の被害者は、アイツなのかも知れないな」


 オルナがそう答えていたのが、妙に聞き取れた。


レフィーユもオルナも答えは同じだった。


ムカイにしても、同じだったのだろうか、黙ったが、不思議と三人の足が止まった。


 「……」


 最初はドアの開く音に反応して動きが止まった事もあるが、


 「……」


 実際、完全の止まったのは、本人がそこにいたからだった。


 「……」


 そして、視線が合い。


しばらくして、


「......」


ドアを閉めて帰ろうとする本人。


 「いやいやいや」


 みんなが止めようとした。

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