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第六十三話

 困惑にも似た、険しいオルナの表情にレフィーユも自然と緊張が走る。


 オルナは自分でも状況を確認するかのように答えた。


 「今回の犯行は、いつものモブと見て間違いない。


 だが、そのモブを先導、指揮しているのが…。


 漆黒の魔導士。


 アイツだ…」


 「何だと…?」


 オルナがオペレーターに『もう一度』と説明を頼む。


 「どうして、アイツが…!?」


 脳裏に今までの事が思い浮かんでいるのだろうか、状況確認するアナウンスの中、オルナは受信される事のない困惑をはっきりと見せるので、レフィーユは落ち着かせるように答えた。


 「落ち着け」


 「落ち着いていられるか…」


 「指揮を執る者は、いかなる時にも冷静でなければならん」


 「くそ、じゃあ、どうしてお前はそこまで冷静なんだ。


 アイツが犯罪に手を染めようとしてるんだぞ?」


 苛立ちをぶつける様に、レフィーユを睨み。


 「それは私が偽者と結託した結果だからだ」


 オルナはずっこけて見せた。


 「ふっ、見事なずっこけぷりを見せてくれるな、お前はどこの新喜劇団だ?」


 今度の睨みは意味合いが違う。


 「詳しい説明をお願いできないか、レフィーユ・アルマフィ?」


 「アラバが捕まった事を覚えているか?


 あの時、捕まったというのにも関わらず、魔法使いが現れた事をお前も覚えがあるだろう?」


 現場に着いたオルナは上着を車の中に放り込み、レフィーユはゆっくりと追いながら話す。


 「ああ、あの時の…。


 じゃあ、何だ…。


 全ての事情を知った上で、その偽者が強盗して、ビルに立て篭もったとでも言うのか?」


 「そうだ、その証拠に立て篭もりに選んだビルは、人質も取れない空きビルだ。


 ムカイも狙って、そうしたのだろう」


 ここでようやくオルナは偽者、つまりムカイの正体に気付いたのか、それはもう目に見えて不機嫌になる。


 「うおおおらぁ!!」


 殴り飛ばされた見張り役に、レフィーユは同情すら思える表情を見せる。


 「どうして、こんな事をするのかと言いたそうだな?」


 「当然だ、これじゃあ、アイツは悪役だ!!」


 レフィーユには、何も作戦も無い突貫でもあるので、肩を竦めて。


 「ふんっ!!」


 モブに向けて思い切りみね打ちを当てた所で答えた。


 「ムカイも戻ってきてほしいと望んでいるからだ」


 レフィーユの答えに、オルナが黙る。


 「かつてあの男も、殺し屋だった。


 それも『無界』という名の付くほどのな。


 そういう人間が、生き方を変えた。


 私はアイツを見ているが、彼を認めている人間は、そういう大物ばかりだ。


 おそらく、この偽物役は事情を話せば、誰もが引き受けるだろうよ」


 レフィーユが決まってアラバを語る時は優しく聞こるので、オルナは一息ため息を付いて答える。


 「じゃあ、私たちはその大物に釣り合うかどうかも試されているのかも知れないな?」


 「そして、オルナ、お前はこれから魔法使いに関わる人間だ。


 おそらく相手も本気で掛かって来る事は間違いないだろう」


 「改めて、聞くとアイツは凄いヤツだな?」


 「その基礎を作ったのは、お前の妹だ。


 私たちは、二人に恥ずかしないようにしなければな」


 体重の差のある、右ストレートで敵を殴り飛したオルナは、力強く頷いた。


 そして、レフィーユは聞く。


 「ところでオルナよ…」


 「どうした?」


 「ビキニである事は、変わり無いのだな?」


 「十数人を叩きのめしておいて、聞いてくる事がそれか?」


 『今さら戦い方を変えるとスタンスも崩れてしまうだろ?』とそんな会話が聞こえたのだろうか、


「お二方、現場だというのを忘れてませんかい?」


黒いコートを羽織ったムカイが歩いてやって来た。


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