表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/65

第五十七話

 レフィーユが横切る彼の消毒液の匂いに気付いていると、ゼジはため息混じりに聞いて来た。


 「レフィーユさん、良いのです?」


 「どういう意味だ?」


 「彼は治安部じゃありません。


 そんな人が、取調べを引き継ぐとは、前代未聞の事です」


 「だから、どうした?」


 アラバに資料を渡し、毅然として答えるのが、ゼジには気に入らない様子で答えた。


 「こんな事をして、許される事だと思っているのですか?


 治安部ではないという事は、彼は一般市民とは変わりありません。


 規則では、それは禁止されているのはご存知でしょう。


 さらに彼は、事件に関わった人間です。


 そんな人が冷静な判断が、出来るとは思えません。


 これは貴女の進退にも関わる重大な問題に発展するほどの、大問題なんですよ?」


 ゼジの指摘に、レフィーユは怯む事無く答える。


 「だが、そんな事を怖がって、真相を明らかにされない事は、私の進退問題より重要な事だと思わんか?」


 「それは恵まれた環境で育った、意見ですね。


 …ですが、アラバさんはそういうわけにはいかないでしょう?」


 この指摘には、彼女は黙る。


 それが『どういう事だ』と周囲は思いもした頃を見計らっていたのか、ゼジは笑っていた。


 「良いですか、レフィーユさんの主張通り。


 『私が全てを操っていた』となると、


 彼はジーナさんが死んでしまう理由を作った張本人は彼だと、主張するようなモノでもあるのですよ?」


 イワト、サイトは『はったり』と思ったのだろう。


 だが、レフィーユは、視線を鋭くして。


 「『記憶の封印』とは、他からの干渉によって、封印が解かれる事がある」


 ゼジの笑みを誘う。


 「そうです。


 記憶というのは、どこぞかで繋がっているものです」


 資料を見ていたアラバも、息を潜めるのが伺えた。


 「完全に封じきる事は、不可能という事か?」


 「はい、それが私の付加能力の弱点と言っても良いです。


 ですが、私がジーナさんに『何かした』という記憶を封印した。


 そうなると…。


 誰が、封印を解く、きっかけを作ったのかが、重要になって来ます」


 ゼジは、アラバを見て。


 「彼という事になるのですよ」


 笑っていた。


 「そうですね、今にして思えば、彼女のきっかけを作ったのは私でしょう」


 アラバの脳裏に自然と浮かぶ映像を、口にする。


 「『なんでもないから』


 『オルナには、言わないで』


 当時のジーナさんの顔は今でも思い出します。


 もし、私に罪があるというのなら、そこで追求できなかった事でしょう」


 「ですが、それは貴方には出来なかった。


 人間は他人の物事に深入りする事に、遠慮を覚えるように出来てます」


 「それ以前に、あの時の私には、あの環境が自分の居場所でした」


 「それを壊れるのを恐れるのは、


 貴方は心配しました、ですがその人が『いいから、心配しないで』と言ってしまった。


 誰も責めれない事です」


 重い指摘に、アラバは静かに言った。


 「もっと意思が強ければとね。


 私は言い訳をする気はありませんよ」


 「ですが、まあ、これはあくまでの想像です。


 もし、レフィーユさんの推理が正しければの話です」


 ゼジの笑みは、脅迫だった


 『屈するだろう』


 そう思ったのは、ゼジだけじゃなく、周囲もだった。


 アラバは自然と俯き。


 「随分な、小悪党ですね」


 アラバは一瞬にして、ゼジの表情は変えた。


 「そんな言い方をして、オルナさんの味方のふりをずっとしてきたのかと思えば…」


 「私には、証拠もないのですよ?」


 侮辱だと言い返したかったが、アラバにはそれだけの迫力があった。


 「確かに二年前の事など、調べようはないでしょう。


 ですが、貴方の態度でわかった事があります」


 「私が犯人だという事です?


 どうしてですか?


 私は二年前には、アリバイもあったのですよ?」 


 もう一度、ゼジは冷静さを取り戻しつつあったが、アラバは言った。


 「やはり貴方は、二年前の事を思い出させようとさせましたね?」


 それに思わずゼジは黙る。


 「私は言ったですよ、二年前の事は、調べようがないと…」 


 「ですが、重要なのは二年前の事であって…」 


 「勝手に話を進めないでください」


 ゼジの台詞を途中で挟む、アラバには、普段の雰囲気は無かった。


 「今は、どうなのですか?」


 この言葉に、


 「な、何を言っているのです」 


 ゼジの表情が、凍りついた。


 「もう一人、いるでしょう。


 貴方が記憶を封印した人が…」


 レフィーユは、感づいたように言う。


 「オルナの事か?」


 「私も、当時、オルナさんを疑ってました。


 その際に、ワザと監視カメラに映るように、ジーナさんの事件を調べたりと、私なりにオルナさんを追い詰めるために色々と予備工作をしていました」


 レフィーユは驚くように聞いて来た。


 「アレは仕組まれていたというのか?」


 「……」


 実にワザとらしいが、そんな事は本人にしかわからない。


 「ですが、彼女は私の事すら、何も覚えてなかった。


 私がどう揺さぶろうが、


 最後の最後まで、彼女がやった事は、私に協力を求めて来ました。


 私はここで異変に気付いたのですよ。


 本当はオルナさんが犯人ではない事。


 そして、貴方の付加能力を…」


 ゼジは馬鹿馬鹿しいと首を振る。


 「レフィーユさん、ゼジさんの能力は記憶の封印ですね。


 欠点もさっき言った通り。


 では、ゼジさんはどんな役に徹さないと、いけませんか?」


 ただ、ゼジはアラバから視線を外す事は無かった。


 「オルナを監視する事」


 「二年間、彼が重要視しなければならないのは?」


 「封印が解ける事だな」


 「ゼジさん、この二年前というのは、貴方の盾でしょう。


 ですが、この二年間というのは、貴方にとって何なのでしょうね?」


 まだ、ゼジは首を振っていた。


 アラバは資料のあるページを指差して聞くと。


 「これ、貴方の携帯じゃないですよね?」


 ゼジの顔が真っ青になっていた。


 「今度は何を馬鹿な…」


 さすがにそれにはレフィーユも見つめてくる。


 「前にレフィーユさんに追いかけられた時、私は、治安部の車両に逃げ込んでましてね。


 そこで、弄っていた携帯と違うじゃないですか?」


 ゼジは勢い良く言う。


 「これは私の携帯です。


 彼は、事件の関係者ですから、冷静な判断が出来てないだけです」


 あまりにも勢い良く言ったのが、彼女の確信だった。


 「サイト、ガトウ、人員を用いても構わん。


 ゼジの住まい、証拠保管室、この学園にある全ての携帯電話を集めて来るんだ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ