第五十六話
そうしてセルフィが彼女の携帯に連絡が周るのは時間の掛かる事はなかった。
「そうか、わかった。
警備は厳重にしておこう、セルフィ、オルナを頼む」
そう言うと彼女は、携帯を切った。
姉妹の会話だと言うのに、手早いのには目の前の扉の先に理由があり、そこに入る。
「すまんな、セルフィからの連絡でな」
「それで、何と?」
「アラバとオルナが、意識を取り戻したそうだ。
二人とも、健康面には異常はない」
そこにいたイワト達は安堵を見せるので、レフィーユも少し微笑むが、
「それはよかったです」
一人、空気を冷まさせた。
「お前も、そろそろ観念したらどうだ?」
空気を察したレフィーユに、ゼジは呆れるように言う。
「ですから、私が一体何をしたと言うのです?」
「二年前、ジーナを自殺に追い込んだのは、お前だ」
「ですから、私は何もやってませんと何回言ったらわかってくれるのです?
状況証拠だけで、適当な事を言うのは、レフィーユさん、貴女にとっても別の罪に問われますよ?」
こんな質疑応答が続いていたのだろう、隣で聞いていたサイトが苛立ってしまうのは無理も無く。
「お前…!!」
掴みかかろうとしたのだろう。
しかし…。
「ですから、私が一体、何をしたというのです?」
ゼジは突然、サイトを凝視して聞いて来た。
人の心理を知り尽くした人間の行動だった。
いきり立った感情をどう鎮めてしまえば良いのか、彼は理解していた。
「良いですか、確かに二年前、私はオルナさんとは接点があったのは確かです。
武道大会で、戦ったと言う接点ですね。
そして、ジーナさんとは、インテリの試験で私が落ちて、彼女は受かったというのが大きな動機とされてます。
では、それが『ホントにあったという証拠』はどこにあるというのです?」
鎮圧のある言葉、おかげで苛立ったサイトの動作も止まってしまい冷静になっていた。
「良いですか、私が『何かをした』というのなら、周囲の人間だって見ていたはずです。
では、どうして彼女は自殺なんかしたと言うのですか?」
「それはお前が…」
「付加能力を使ったとでも?
確かに私の付加能力は『記憶の封印』です。
ですが、それは私が直接、振りかざさないといけないのですよ。
どうして周囲の人はそれに気付かないのです?」
「それは彼女が一人の時を狙ったのだろう?」
レフィーユはサイトのそんな様子を見て、そう反論するが、どうやら待ち構えていた事らしい。
「そんな出来すぎた話、誰が信じるというのです?」
「……」
「全部、私が操っていた。
というのが、貴方達の主張です。
ですが、証拠は何処にもありません。
それは何故か、私が無実だからです。
私にしてみれば、従来の主張通り全ての犯行は、魔法使いがやった。
というの方が正しい思うのですがね?」
ゼジの態度に、誰もが思った。
コイツが犯人なんだと…。
笑顔なゼジ、だが、サイトがここにいる人間の代弁をついた。
「別にオレは魔法使い、アイツの心配なんかする気は無いで、でもな、お前なんかに罪を着せられたらたまったモンやないやろな」
そして、ゼジは公然として言う。
「今の意見、もし、私が無実と証明されたら、訴えて査定に掛けてあげますよ」
勝ち誇る態度にも見えた、だが、こちらは明らかに決め手が欠けていた。
取調室にいる、イワト、サイトが自然にレフィーユを見るのは無理も無いが、彼女は笑い出した。
「ふっ、ふふふ…」
「何がおかしいのです?」
「すまんな、お前を馬鹿にしているつもりはないのだが…。
いろんな事がわかった気がするのでな」
「色んな事?」
「そうだ、二年、調書は残っているとはいえ、再び調査をする事は困難だ。
お前の自信はそこから来ている」
彼女の指摘に、ゼジは少し笑みが伺えた。
「二年も経てば、人はいつも同じ場所にもいるわけもなく、同じ記憶を持ってもいない。
物事と言うのは、オルナの言うとおり『薄れ行く』のだろうな。
あの女の焦りがわかった気がしたと同時に…」
彼女は冷静で笑顔でいられたゼジを見て。
「お前はオルナの味方では、なかったのだな?」
レフィーユは呆れていた。
「何を馬鹿な…」
ゼジは一瞬、表情が変わった気がした。
だが微笑んでいたレフィーユは、そこにはいない。
「言うほど、逃げ場はないぞ?
だが、残念ながら私は、そんな役を買う気も無い。
そういう事が出来るのは…」
レフィーユは出入り口を見ると、女の子が立っているのを見た。
「来たか…」
レフィーユは見た事は無いが、ジーナだと悟り。
「入って来たらどうだ?」
と言い、返事を待つ。
誰もいないと思われるくらいの時間が流れた。
「ふっ、これはお前の役目だろう。
お前が、終わらせないと駄目だ」
「……」
……。
「…お前、この展開で出て来ないというのは、人としてどうかと思うぞ?」
ジーナが消え…。
ゆっくりとドアが開く。
「押し出された」
「そうするだろうよ」
そういう意味のわからない話をしているが、周囲は驚きを見せる。
「貴女で追い詰められたと思ったのですが?」
『入院中』の男が目の前に立っていたのだから。
「はて、何の事だ?
私では手には追えない事件だと思ったのだがな?」
レフィーユは優しく笑みを見せ、アラバを見る。
「そして、お前も終わらせなければならないから、ここにいるのだろう?」
そう言って、自然にレフィーユは彼に席を譲っていた。




