第五十一話
オルナは自分の頭を整理しようとして、天を仰ぐ。
「そんなの信じられるか!?」
「ですが、ここに犯人はいなかったのなら、これで説明は付きますよ」
アラバは真剣な様子で説明していた。
だがオルナは笑いながら、叫ぶように言い返した。
「良いか、ジーナはな。
離婚が決定した時、一番、気丈だったんだぞ?
『こんな時だから、私たちが頑張らないといけない』とか言っていた!!
そんな子が!!
どうして自殺なんかしないといけないんだ!?」
アラバは黙り。
それが私の出番を示す。
「その事に関しては、私の方から話そう」
オルナは突っかかろうとしたが、構う事は無かった。
「ふっ、残念ながら、この男は、こうなる寸前までお前を疑っていた。
よって、そこまでは調べていない。
だが、私はアラバが取調べを受けていた時には、犯人ではない事は知っていたから、客観的に調べる事が出来たのだが?」
そんな事を言えば、簡単に止まるので説明を始める。
「当然、私も、お前を疑って掛かった面もあって、経歴を調べさせてもらった。
両親の離婚が決定とする頃、さっきお前の言ったように、『頑張り』が経歴にも現れていた。
やはり人は、想いや経験で、能力は洗練されるのだろう。
武道の大会に至っては、無名から優勝を勝ち取っている。
見事なモノだ」
「何が言いたい?」
「オルナ、そこでの決勝の相手を覚えているか?」
「そんな失礼な真似、出来るわけ無いだろう」
つまり、覚えているわけが無い、それが私にとって『答え』でもあった。
「両親たちが離婚する前、お前たち姉妹は、お前を含めて、この地区の中等部の人間でもあった。
そして、お前が武道の地区大会であった決勝の相手は、その同じ中等部の生徒でもあったのだぞ?
誰だろうが、忘れるわけが無い」
「レフィーユさん、もしかして、その相手?」
「ゼジ・クリフトフ、今、現在、フォード学園で治安部のリーダーだ。
オルナ、お前がよく知っている人物だな?」
「馬鹿な…」
「あいにく、履歴は正確だ。
そして、やはり、お前は『知らなかった』か…」
私の曖昧な指摘に、オルナは疑問に思うだけだが、アラバが気付いた。
「ゼジさんは、東方術者でしたね?」
「そうだ、東方術者には付加能力が付く。
ゼジの付加能力、それは…」
「『記憶の封印』」
アラバが先に言うので、少し気に障るが、
「…正確には、思い出さないようにする『封印』だな」
そんな気になる前に…。
「ふざけるなぁ!!」
オルナの嬌声がこだました。
「記憶の封印?
ただ私が覚えていないだけで、ゼジは一番怪しいだというのか!?」
そして、オルナは笑い出す。
「だったら何だ、私は間抜けにも、そんな男の下でのうのうと、捜査をしていたというのか!?
馬鹿馬鹿しい…」
アラバはオルナを見ているだけだった。
知っているからだ。
そういう馬鹿馬鹿しさが、事件だって起こしてしまう事を。
「元々、アイツには気になる点が、何点があった。
まずは、あの周囲を被害を考えない、あの作戦指揮だ」
私も、そんな事をいうのは、オルナを落ち着かせるためだった。
「あれは自分達の能力が低いから、そんな方法を取っているだけだ」
「だが、お前のパートナーは、あの作戦指揮の中で亡くなっている。
普通、自分の指揮の結果で、そんな事を起きたら反省する。
二度と、先の事を起こさないようにな。
それでも、あの男は『仕方ない』の一言で済ませた。
私にとって、それは、別の意図があったのではないのかと、思えてならんよ」
「別の意図…ですか?」
「アラバ、フォード学園の制圧方法を思い出してみろ。
まず、東方術部隊が先行して、硬直状態に持ち込んだ上での、西方術部隊の砲撃だっただろう?
あの時、お前は何を感じた?」
「車だって爆発する事もありますし、それは『危ないな』と思いましたね」
「ふっ、単純な答えだが、その通りだ。
危ない。
そこが、私がその制圧方法を取れない理由でもある。
『味方にも、被害が及ぶ可能性があるのだからな』」
「味方、まさか…」
アラバはバツの悪い顔をして、オルナを見る。
「ど、どういう事だよ?」
最悪にも、オルナは気づかないでいたので私が答える。
「オルナ、お前をも『制圧』させようとして、あの方法を取っていたかも知れんぞ?」
だが、私の『制圧』という言葉には、オブラートに包んで意味合いがあったが、隠しきれないでいた。




