第四十六話
「それがお前の答えか?」
言葉の意味は厳しいが、レフィーユの態度は柔らかかった。
気絶したオルナを見ながら、アラバは言った
「意外と隙を見せなかったですからね。
こう手荒な手段を取るしかありませんでした」
「ふっ、手荒なマネをするのは、三下のやる事だと言わなかったか?」
「レフィーユさん、貴女がそんな事を言ったから、しばらく手を出せなかったのもあるのですよ?」
「それは悪かったな?
だが、私が、こういう強引な方法は関心せんのも、お前は知っているだろう?」
その指摘に、さすがにアラバは黙るが…。
「何かしら掴んでいるからこそ、出来る強引さが見て取れる。
お前は最初、オルナを疑っていた。
そして、お前はゆさぶりに掛かった。
自らの『破滅』を盾にしてな」
「私にとっては、正体がバレる事、オルナさんにとっては、ジーナさんを殺害した事、それに掛けて、私は彼女を揺さぶったつもりでしたのですが…」
「だが、計算が狂った…」
「いえ、元々、彼女が『何も知らない』というのが気になっていました。
ですが、オルナさんは協力を求めて来る。
これはどういう事なのか…」
「だからこそ協力を求めてくる、という考えもあったのではないのか?」
するとアラバはオルナを大きな球体で包み込み、もう一つ、同じ様な球体を作り上げながら答えた。
「だからこそ『調べる』必要があったのですよ」
すると遠くが騒がしくなり、ゼジやらイワト達が駆け込んできた。
「うお、魔法使い!?」
「一体、どうやって、入ってきたのです!?」
魔法使いとなった、アラバは声を歪めながら答えた。
「窓からですよ。
監視カメラの多さに、侵入は手間取りましたが…。
この程度の鉄格子なら、ネジを緩ませれば、簡単に外れるように出来ているのですよ」
魔法使いが指を鳴らす。
すると『ガシャン』と、時間を置いて重めの金属が地面にぶつかり。
それが立ちはだかる、みんなに鉄格子だと気付くのには時間が掛からなかった。
「ですが、飛んで火に入る夏の虫です。
西方術部隊!!」
ゼジは仲間を呼び、レフィーユは慌てて答えた。
「待て、あれにはアラバとオルナがいる」
それに答えるように、魔法使いは球体からオルナの顔を出して言う。
「ここには人質もいるというワケですよ。
動くと…」
そのまま闇の球体の中にオルナをだけで、もう片方の球体の中にアラバが入っていると思ったのか、イワトは動きを止めたが。
「構いません…」
ゼジは言った。
「オルナさんは、魔法使いを倒す事が本望なのです」
「人質はどうするのですか?」
「もし、ここで貴方を倒さなかったら、オルナさんは私を責めるはずです。
アラバさんだって…」
「それは貴方の勝手な見解でしょう」
「ですが、正義のためです」
「正義のため…ですか…」
思わず、レフィーユと目が合うが、西方術部隊が整列する時間を与えてしまう。
「やれやれ…」
魔法使いは法衣を翻して、眼前に黒い壁を作り上げると、レフィーユの叫びを聞こえた。
「やめろ!!」
それが発射の合図でもあった。
「ぐおっ!!」
火炎の熱風で、イワトとレフィーユは思わず身を屈める。
そして、目を開ける頃には、魔法使いはいなかった。
「レフィーユさん、どうやら、魔法使いは、ま、窓から逃げたみたいですのう」
「あ、あれだけの熱量を耐えるとは…」
「ゼジ、どういうつもりだ?」
「私は、治安部として責務をまっとうしただけです」
「だが、やるべき事は、他にもあったはずだ?」
「それでも、魔法使いを倒す事は、貴女にとっても利益のある事でしたはずです。
どうして、そこまで咎められるのです?」
思わずレフィーユは黙り込み、ゼジを睨んだが…。
ゆっくりと闇の隔壁が解かれて、がら空きになった窓から少し強めの風が吹いた。




