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第四十五話

 「そして、私は留置場に逆戻り…」


 薄暗い空間の中で、ただ突っ立っているワケにも行かないので、アラバは寝転んで…。


 「今日も、監視カメラは順調に機能しているみたいですね…」


 カメラが起動しているサインであろう赤いランプを見て、聞こえない程度の小声で呟き、瞑想を始めていた。


 状況を整理するためだった。


 まず、自分が監禁された事で、屋上にいた人物のリアクション。


 そして、今も見られている感覚。


 あの事情聴取においても、監視されているのだろうと思えた時、どうしても自分が感じた違和感に対して投じた。


 嘘の証言…。


 「やはり、ここの床は冷たいですね…」


 おそらく、彼女はやって来るだろうと思った。


 「私は、こういう事に突っ込みを入れないといけない、レフィーユに同情するがな?」


 オルナが近付いてくるのは、何となく足音で感じ取れていたので、振り返るなり言う。


 「どうして、言ってくれなかったんだ?」


 「何をですか?」


 あくまで惚けたのは、『監視されているか?』を探るためだった。


 そして、案の定、彼女は答えた。


 「あの取調べ、録画されていた。


 そこで、その映像を見せてもらった」


 初々しくアラバは驚き、


 「聞いていたのですか…?」


 「そんなに気にする事は無いだろう。


 捜査の進行のためだ。


 お前とジーナの関係を聞かせてもらった」


 「…それで?」


 「だからこそじゃないのか、お前はジーナの事が好きだった。


 お前が上を見た時、何も見なかったのも残念だ。


 でも、好きだったのなら…。


 どうして、私に協力しない?」


 「では、貴女は、どうして、そんな態度が取れるのですか?」


 オルナはそこでだろうか、ようやくアラバが何に対して警戒している事に気がついたのかも知れない。


 「どういう事だ?」


 「私が『屋上にいた人物など、見ていない』なんて嘘、レフィーユさんでも、気付いてますよ」


 「どうして、そんな嘘を?」


 「貴女こそ、私が魔法使いなんて見てない事を、うすうす気付いているからでしょう?」


 「じゃあ、お前は何を見た?」


 アラバは黙って。


 「……」


 オルナを見た。


 それが何を指したのか言うまでも無い。


 言うまでも無く、『ふざけてるのか?』という動作をオルナは見せたので、


 「オルナさん、貴女なんですよ?」


 煮えたぎった油に、水を注いだ。


 そんな表現のようにオルナは、鉄格子を殴りつけた。


 手にはカイザーナックル、鉄格子と金属同士がぶつかり合う。


 鉄格子も特別な物質で出来ているので、びくともしない、だが音が響き渡る。


 「ふっ、三下悪党は、すぐに手荒なマネに走る」


 そして、暗闇の中から、レフィーユが現れた。


 「つじつまの合う話だと思わないか、お前たちはこの男が、あの事件の重要な関係者だと挙げた。


 しかし、この男はどうして協力をしないのか?」


 「魔法使いの報復を恐れたからだ」


 「魔法使いか…」


 レフィーユは一瞬、アラバを見て軽く微笑み、サーベルを作り上げて聞く。


 「オルナ、私としては、そもそもお前の妹のジーナは、どうしてあんな場所にいたのかが、カギを握っていると思っている」


 オルナの手にあるカイザーナックルがあったからだろうが、オルナは自分が警戒した事に腹を立てたのか、レフィーユを睨みつける。


 「そんな事、知るわけないだろう?」


 そのままじっとレフィーユを見ていたが、その彼女の視線はアラバをじっと見ていた。


 「アラバ、どの時点でお前は『何もわからなくなっていた?』」


 明らかにアラバは見る態度が変わったので、オルナもそれに気付いた。


 「レフィーユ、どういう事だよ。


 コイツは何もわかってなかったんじゃないのか?」


 「ふっ、物事には順序というモノがある。


 始めから全部、何も知らないのと、


 途中から全部、何もわからなくなったのは、意味も違う。


 だが、さっき観察させてもらったが、アラバ、お前がオルナに対する態度が変わっていない。


 それが何を指すのか私は知らん。


 だが、それは私にとっては『矛盾』だ」


 「矛盾…?」


 「アラバ、お前は知らないのであるならば、もう一度、調べ直すはずだ」


 するとオルナはあざ笑う。


 「コイツは、治安部でもない。


 そんな人間の調査なんて、信用できるか?」


 「だが今回の事件は大切な人が関わった事件だ。


 二年も経てば、普通の人間なら忘れ去られる。


 オルナ、アラバ、特にお前たち二人は違うはずだ」


 一瞬、アラバは睨みつけるように、レフィーユを見るが、黙ったままだったので。


 「そして、お前は様々な手を講じた…」


 オルナも聞くだけになっていた。


 「どこまで狙っていたかはわからん。


 だが、ムカイが取り調べに出る事は、お前が仕向けた事だ」


 辺りは真っ暗になっていた。


 「一体、何のためだったんだよ?」


 交互にオルナは見る。


 それだけしか出来なかったのだろう。


 そんな中、携帯とは違う独特の通信音が鳴ったが、レフィーユは構わず話す。


 「それだけお前は手段を選ばなかったという事だ。


 今も今までも、その事件をお前は、ずっと追い続けている。


 改めて聞こう、お前は『今まで誰を疑っていて、今は誰を疑っている?』」


 しつこいほど通信音が鳴り響くので、一旦、周囲を見回したレフィーユは、


 「言葉を変えよう…」


 オルナに『出ろ』と意味合いを込めて、通信機を手渡し。


 「さきのお前の昔話の登場人物は、何人だ?」


 レフィーユの後ろに、少女が立ち。


 「!?」


 次の瞬間、アラバの目が細まる。


 それは西方術者が、魔力を瞬間的に発動させる合図だった。


 その瞬間、オルナの口と首に布が巻き付く。


 何が起こったのかわからないが、彼女は必死に足掻く、だが、防御本能は目で追うことで効果があるのだ。


 束縛には効果が無い…。


 オルナは足掻くにも身体を引き寄せられ、鉄格子も邪魔をして、あっという間に閉め落とされ、通信機が地面に落ちた。


 「ランプが消えてなければ、気付かなかったぞ?」


 レフィーユはそれを拾いながら、監視カメラがあるであろう位置を見る。


 そこには闇が蠢いていた。


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