第四十三話
翌朝、アラバは再度、事情聴取を執り行われていた。
質疑応答は相変わらず、同じ事の繰り返し。
そして、この回答は何度目になる?と、
オルナは苛立つように前に出るが、ゼジはそれを止めて言う。
「アラバさん、いい加減に話してほしいのです」
「話せ、と言いましても。
この数日、私なりに考えたのですが、やはり二年前の事ですので…。
オルナさんのためにも、曖昧な発言は控えたいのですよ」
「ですが、貴方にとっても、この事件は忘れられない事件なはずです」
「確かに私は、あの時、適した応急処置は出来ませんでしたからね。
はっきり言えば、あれは私のミスです」
「いえ、貴方にとってはジーナさんは別の意味を持っていたのでしょう?」
思わずアラバは、ゼジを見た。
「アラバさん、貴方、あの写真での表情、覚えていますか?」
それに気付かないゼジは自信有りと話すが、その内容は全て、自分とセルフィが話していた内容だったので、『演技』していた自分にとっても思わず呆れてしまった。
それは同時に、常に監視されていた事に確信が持てたからでもあった。
「さすがですね、ゼジさん。
心理学に基づいた、解析というのですか、表情で見破るとは思いませんでしたよ。
確かに私は、ジーナさんと交友関係はありました」
おかげでこの解答は、まるでゼジが突破口を開いたかのように見えるのがとても尺に触ったので。
「ですがゼジさん、貴方は自分で言うほど有能ではないですね。
その程度の事でしたら、妹のセルフィさんでも気付いたと思いますよ?」
一瞬、間があったので『怒ったか?』と思いもしたが、冷静にゼジは言った。
「でも私の分析には、間違いないはずです?」
「今、感じたとおりに話されれば、周囲もそう感じるのは当たり前でしょう。
ですが、ゼジさん」
「なんです?」
「今話したのは、全部、セルフィさんと私が話していた内容そっくりですよね?」
さすがにゼジが睨むが、そこにドアが開いた。
「凡人が奇才ぶると、平凡が目立つというのはホントのようね、クライマー」
「これはセルフィさん、どうしてここに?」
「姉さんに調べておきたい事があるから、代役を頼まれたのよ」
そこに続くように、ガトウやイワトと言った見知ったメンバーが入ってくるのでアラバは思わず目を細めていると、
「みなさんの前で、そのあだ名はやめてください。
私は、事実を述べて…」
「事実を述べているわりには、随分と時間の掛かったみたいね?
まだ、この人に踊らされているというのが、わかってないの?」
ゼジが今度はセルフィを睨む。
それのを見て、
「すいませんね、学業もありますのに」
「ふん、そんな事を気にするほど、私は出席日数は困ってないわよ。
こっちはこっちなりに、その事件を色々調べようとして、姉のわがままで中断したのには勘弁して欲しい程度よ。
アンタが気にする必要は無いわ」
「それで何を調べようとしたのですか?」
「魔法使いを探していたのよ」
セルフィの答えに室内が騒然とした。
「どうせ、事件の事は、姉さんやアンタ達が調べる事でしょうし。
私は、魔法使いに詳しく事情を聞こうとしたのよ」
「馬鹿な、アイツはまともに受けつけなかったじゃないか!!」
「それはアンタが、ぶち壊しにしたからでしょう。
アンタは頭ごなしに犯人にして良いかも知れないけど、あの態度は改めて捜査する必要があると思ったからよ」
「だが、お前も危ない目にあったらどうするんだ!?」
声を荒げるオルナだったが、セルフィは静かにそれを見ていた。
「過保護なモノね。
だからこそ、姉さんは私をここに呼びつけたのでしょうけど」
するとセルフィは、ため息をついて自分を見た。
「アンタも、コレだけの人に心配させているんだから、そろそろ、その重い腰を上げたらどうなのよ。
アンタは逃げるつもりなんて、毛頭も無いでしょう?」
そう言うと静かになり、突然、イワトの携帯が鳴った。
「イワト、こういう時にはマナーモードくらいにはしておきなさいよ」
イワトは大柄な身体であたふたと対応していた。
「確かに今回の件は私にとっても、大事な事件ですからね」
「関与を認めるの?」
「はい、これ以上、引き伸ばして、皆さんにご迷惑を掛けるのは不味いでしょう?」
オルナを一瞥して、ガトウ、サイト、最後にイワトを見て、アラバは大きく深呼吸をして腕を組んで言った。
「ですがセルフィさん、一つ勘違いしていますよ?」
「勘違い?」
「私は、この人達を仲間だとは一度も思った事はありませんよ?」
その態度にさすがにイワトは、前に出た。
「おい、アラバ、どういう事よ?」
「言ったとおりですよ?」
「お前、これだけの人に迷惑を掛けて、ワシらは全員、お前の事を心配してここにやって来たんじゃろうが?
そんな言い方ないじゃろうが!!」
サイトは少しイワトを止めるように肩を手を当てていた。
「ちょっと待ちなさい。
アンタも、その態度はないでしょう?」
セルフィも空気を察して立ち上がった。
次の瞬間だった。
「ぐっ!!」
イワトはアラバの髪を掴み、机に叩き伏せた。
サイトを先頭にイワトを止めに入るが、狭い取調室では、イワトを止めるには不完全だった。
室内が騒然となる。
そんな中、ドアが開き。
「一体、何の騒ぎだ?」
レフィーユが入ってきた。
それが静かにさせる合図だったのか、事情を説明している最中、ようやくイワトはアラバの髪を手放した。
「お前たち、この男を心配するのは良いが大勢で入って来すぎだ。
だから、こういう事態を招く事もあるんだ」
レフィーユは伺い、こうも言った。
「出て行け…」
それはイワト達に向けてではなかった。
「ちょっと待ってくれ、私か?」
「もう、こうなってしまった以上、収拾はつかんだろう?」
ゼジは頷きオルナを促した。
オルナはアラバを睨みはしたが、退出するとレフィーユは言った。
「上手い具合に締め出せたな?」
「はい、その様ですね」
突っ伏せたままのアラバはそう答えると、イワトは笑いを堪えながら。
「すまんのう、ちょっと乱暴だったか?」
「いえ、お構いなく、こうでもしないと、バレてしまいますからね?」
アラバも肩を震えているので、レフィーユは言う。
「腕を組んで、指を叩く。
ブロックサインか、仲の良い事だ」
周囲は笑顔、何も知らないのは、
「ちょっと姉さん、どういう事よ?」
セルフィだった。
「すまんな、何も知らない人間が、場にいた方が確実に騙せると思ったのでな?」
「もしかして、そんな事のために、私を呼んだの?」
「ふっ、天才も悔しがる事もあるのだな?」
「セルフィさん、顔が赤いですよ?」
アラバの指摘に、周囲は明るくなるがイワトは言った。
「さて、外も気付いたようじゃけど…。
どうする、アラバ、ワシらおった方がいいか?」
アラバは少し答え難そうだった。
「まあ、良い話じゃなさそうじゃけの…。
『出て行け』は言えんわな」
「すいませんね…」
そう答えると、イワトはガトウらに頷いて言う。
「ワシらは、オルナが入って来んようにしとくけ。
後は任せるわ、アラバ…」




