表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/65

第四十二話

 ゼジは絶句にも似た、黙り込みを見せて資料を読んでいるレフィーユに聞いた。


 「一体、彼は何者なんですか?」


 その事に彼女の視線は自然に細くなり、それを誤魔化すように答えた。


 「どこにでもいる、学生だが?」


 「ですが、オルナさんから聞きましたが、貴女のいる旅館でも破格の待遇を受けていると聞きました。


 貴女は彼の意見を随分と参考にしているではありませんか、それは今回が初めてではないはずです?」


 「ムカイの事はバイト先で知り合ったからだ。


 そういう待遇を受けるのは、それはあの男が成せる人徳だろう。


 それを見習っているだけだ」


 「レフィーユさんより、あの人を優遇するというのは、それなりの理由が必要でしょう。


 もしかして、どこかの家柄の方とか?」


 「勘ぐりすぎだな。


 あの男は、一般家庭で育った。


 両親を失った事を除けば、どこにでもいるような男だ」


 「では、何のプラスにもならない人に、接待をするなんて聞いた事がありません」


 「それはムカイに失礼だろう」


 このレフィーユの返事には一旦、間があった。


 それはアラバの正体に触れる事が無かったので、安心したからでもあったが、


 「ゼジ、お前はそういう人の付き合い方をしているのか?」


 さすがに呆れもして、睨みつける。 


 「彼に付き合うことがプラスになるとは思えないからこそ、こういう言い方をするしかないのです。


 当然、貴女と釣り合いが取れてない事も」


 「どういう事だ?」


 「応急処置はAクラスとはいえ、その他、学業成績は平均を上下する平凡さ。


 生まれも一般家庭の出で、貴女にはとても不釣り合いです」


 「私が誰を気に入るのかは、私の勝手だろう」


 「ですが将来的にプラスにはならないでしょう」


 「私は相互利益で、人と付き合っているワケではない」


 そして、この目の前にいる男の魂胆が見えるので、さらに呆れながら言った。


 「お前ならプラスをもたらすとでも言いたいのか?」


 するとゼジは、レフィーユに近付きながら言った。


 「私は治安部のリーダーです」


 「だから、どうした?」


 「父は警視庁の長官で、生まれも問題ありません」


 「だから、乗り換える気は無いか、とでも言いたいのか?」


 「私は貴女に釣り合えるように、努力を惜しみませんよ?」


 自信有りげにゼジは言うが、レフィーユは。


 「では何故、ここの地域住人に嫌われる?」


 「レフィーユさん、私の周囲はそんな事を言っていないでしょう?」


 「だが、ムカイは言った事は、この町に住んでいる住人の意見だ。


 純粋な怒りを受け止められないのは嫌われる原因だ」


 明らかにゼジの表情は変わった。 


 「ですが、今まで、そんな事を言われた事がなかったのですよ。


 貴女は大勢の人の言う事より、個人の言う事を信じるというのですか?」


 そして、また『笑顔』を見せるので、レフィーユはムカイの取調べ風景をどうしても思い出してならなかった。


 「私は純粋に怒っている人間に対し、笑顔で接する様な人間は絶対に信用しない」


 その一言で黙らせ、『意味』を込めて言った。


 「出て行け、私は、お前みたいな人間が一番嫌いだ」


 そうして、しばらく静かになったと彼女は思っていると、


 「うわ、一撃や」


 「アイツ、やっぱそういうトコあったからね」


 サイト、双子の片割れキリウが入って来て、残りの二人が入ってきた。


 最後にイワトが入ってくるので、これにはさすがにレフィーユも驚く、


 「お前たち、どうした?」


 「何って、手伝いです」


 「大勢でやった方が早いでしょう?」


 自前のデスクトップを持ち出し、電源を探しながら双子は言った。


 「私はお前たちを裏切るようなマネをしたのだぞ?」


 イワトはレフィーユに言った。


 「ムカイですよ」


 未だに納得できてないのだろうか、ガトウが付け足した。


 「『普段、アラバさんを信じているのなら、レフィーユさんの手伝いをしろ』とね。


 レフィーユさん、これはアンタだって調べておきたい問題かもしれませんがね。


 俺らだって、アラバの事を心配してるんですよ?」


 「それはアンタがどんな思惑があって、あんな対応取ったかは知りませんよ。


 でも、アイツは絶対、悪い事はしとらんのは、確かです」


 「そういう事で手伝わせてくださいよ」


 『そもそもどんな事件だよ』と、全員、何も知らない状態だったが、この『呆れ』は、先の『呆れ』だった。


 「事件は自由研究ではないのだぞ?」


 「でも、俺らはアイツを信じる」


 ガトウは、はっきりと言う。


 「お前たちにムカイの警備を任せたのは、間違いだったようだな?」


 「人材配備の不備は、誰でもやる事でしょう。


 こういう場合、誰も警備に当たらなかった方が、かえって安全だとアラバに教わった事がありましたよ」


 「すまん、頼めるか?」


 そう言うと、ガトウは四人に号令を掛ける。


 「よし、レフィーユさんきっての願いだ。


 やるぞお前ら?」


 人数は頼りないが、やる気の十分な連中を見て、レフィーユは、


 「どこが釣り合いのとれない平凡な男なモノか…」


 アラバを改めて尊敬していた。


 そして、そんな意気の上がる中、資料を整理していると、イワトは取り調べの内容が映ったデスクトップを確認がてら見ていると。


 「あああ!!」


 突然、驚きの声を上げる。


 「どうした、イワト!?」


 レフィーユはそこにはカメラ目線のアラバが、こちらをじっと見ていただけだった。


 その視線の先には、生徒名簿も見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ