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第四話

 「ちょ、ちょっと待ってくれ~」


 体育の授業、3000メートルを走っている自分を、イワトが呼び止めていた。


 「待ってますよ。ほら、一周遅れになりますよ?」


 自分でも先行しようとする気はない。


 『おらおら、一周遅れになれや』と、このとおり自分達の陸上部がふざけながら追い抜いて行くように並走している。


 「ゆったり走ると、余計に疲れるって言いますよ」


 「で、でもの、そう簡単に言うが、聞くのと、やるのと別モンじゃ」


 この時間、治安部は武道の時間と別授業だった。


 この息を切らしているイワトも、本来なら治安部なので武道なのだが、レフィーユの言うことには、


 「イワトは長距離を走るのが苦手なようだな。


 それなら、この機会に克服してみたらどうだ?」


 そう考えた彼女は治安部リーダーの権限を使って、内容変更としたのである。


 「ああ、水ぅ~」


 だが実際、この唸っているイワト、別に体力がないというワケではない。


 「長距離が走れないだけですからね。


 ほら、先に行きますよ…」


 「アラバ…鬼ぃ!!」


 「あと二周ですよ、さっき教えた事を復習がてら、自分で走ってみたらどうですか?」


 そして、ペースアップして引き離されて行くので、


 「アラバ、待て、待…」


 イワトも引き離されまいと、必死に追う、しかし、 


 「何で、お前は、まだそんなに走れるんじゃ!!」


 魔法使いだからという理由が大きい引き離され方をされ、追いかれる事無くゴールしていた。


 「良し、水分補給を忘れるな~」


 顧問が指を差す方向には、先にゴールした生徒達がスポーツドリンクを飲んでいた。


 『自分のいる白鳳学園なら、水道なんだろうな』


 そういう他校の違いを感じるのも、また交流会の醍醐味でもある。


 そして、イワトが何とかゴールを果たし、後は自由になったので、どこかに行く自分の姿が見えたのだろう。


 ドリンクを一気に飲み干して、さっき息切れをしていたのが嘘みたいに自分の肩を叩いて話しかけてきた。


 「アラバ、やっぱ見に行くんか?」


 「そうですが、イワトさんもやっぱりこのまま?」


 「お前は、ワシを殺す気か?


 それだけは勘弁してくれ」


 狼狽したイワトと一緒に、武道場に入ると、目の前でちょうどオルナと目があう。


 「……」


 軽く頭を下げていると、どうやら大きく二つに分かれて、訓練をしているという事がわかった。


 見学目的の自分は良く見える場所へと歩いて行くと、ちょうどレフィーユが木刀片手に組み手に参加しようとしていた。


 しかし、これもいつもの光景で、誰も参加しようとしなかった。


 歩く最中、相手側の雑談が聞こえて来るほど静かになるほどだった。


 「どうする?」


 「だってレフィーユだよ、相手にならないよ」


 「情けねえな、所詮、女だろうが…」


 すると一人の男子生徒が、苛立つように言う。


 「アズ」


 「上手くすれば触り放題だろ?」


 そう言って、一人の男子生徒が名乗りを上げた。


 「アズ・ルウです、よろしくおねがいします!!」


 見るからに、調子の良さそうな男だったが、レフィーユは気にする事無く、軽く素振りをして片手で構えると始まりの合図はなかった。


 「早っ!!」


 イワトがそんな歓声を上げた。


 アズは不意打ちをしたつもりだったのだろう、だが、それに軽々と反応して、脳天に打ち込みを見せる。


 「この…」


 嘲笑が聞こえる中、アズは顔を真っ赤にして、笑みを見せるレフィーユに木刀を振り下ろそうとしたが…。


 彼は奇妙な行動を取って躊躇した。


 「ふん!!」


 目の前の何かがぶつかろうとすれば、人間は自分の身を守ろうとする。


 このアズはその典型、人間ならそれをするのは当然だろうが、ここで何かに気付いた。


 アズは何度も攻撃を仕掛けようとするタイミングを見計らって、レフィーユはそれ以上早く、攻撃をくりだしていた。


 「ふっ、守るだけではないか?」


 大振りのように見えるが、段違いの実力差を見せ付けられアズは、とうとう突っ込むしかなくなっていた。


 「やっぱ強すぎるわ…」


 イワトは凄すぎて呆れを見せて呟き、レフィーユは見事に足を払って…。


 「この通り、下心を見せたまま戦いに挑むと、こういう目に合うぞ?」


 木刀を突きつけ、忠告してはいるがこれ以上は咎める事しない。


 屈辱になるのを理解した上だった。


 そのままアズを黙らせるのだから、周りも一層の歓声があがる。


 「そういえば、サイトさんが、最初、あんな目に合ってましたね」


 「あれは、誰でも経験してるんじゃろうな」


 毎度、毎度の光景である。


 だが、今回は違った。


 「私と戦え」


 一度上がった歓声を打ち消すようにオルナの声が響いた。


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